乳がんは日本人女性に最も多く見られるがんであり、早期発見が治療の成否を左右します。しかし、初期には目立った自覚症状がないことも多く、見逃しやすい点が問題です。
本記事では、乳がんの代表的な初期症状を詳しく解説し、日常的にできるセルフチェック方法や医療機関を受診すべきタイミングについてまとめています。早期発見の意識を高めることで、あなた自身や大切な人の命を守るきっかけにしてください。
目次
乳がんとは?女性の9人に1人が発症する病気
乳がんは、乳腺(乳管や小葉)に発生する悪性腫瘍で、特に30代後半から発症が増え始め、40代〜50代の女性に多く見られます。近年は若年層の発症も報告されています。
主なリスク要因
- 女性ホルモン(エストロゲン)への長期暴露(初潮が早く閉経が遅い、出産歴がない、授乳経験がない など)
- 遺伝的要因(BRCA1/2遺伝子変異)
- 生活習慣(肥満、飲酒、運動不足)
がん検診の受診率が依然として低い日本においては、セルフチェックの習慣化が早期発見の鍵となります。
初期症状①:乳房の「しこり」は最も典型的なサイン
しこり(腫瘤)は乳がんの初期兆候として最も多く見られます。乳腺外科などでも、しこりを主訴に受診するケースが多数報告されています。
しこりの特徴
- 触ると硬い、ゴリゴリした感触がある
- 皮膚や筋肉に固定されたように動きにくい
- 乳房の外上方(乳頭の斜め上)に発生しやすい
- 痛みはないことが多いが、違和感や圧迫感を伴う場合もある
良性のしこり(線維腺腫など)と区別がつきにくいこともあるため、専門医による検査が重要です。
初期症状②:乳房の見た目の変化に注目
乳がんは、乳腺の奥で増殖するだけでなく、周囲組織や皮膚にも影響を及ぼします。そのため、鏡で確認できる外見の変化が重要な初期サインとなります。
乳房のひきつれ・えくぼ
がん細胞が皮膚や靭帯を引っ張ることで、乳房表面にえくぼ状のくぼみやひきつれが現れます。
乳頭のただれ・陥没
- 乳頭がかさぶた状になったり、ただれが治らない状態
- 乳頭が内側に引っ込む(陥没)
特にパジェット病と呼ばれる乳頭に限定したがんでは、皮膚症状が初発症状となるため要注意です。
皮膚の赤み・腫れ
炎症性乳がんなどの特殊型では、乳房全体が赤く腫れ、熱感を持つ症状が出ることがあります。乳腺炎と間違えやすいため、改善しない場合は要精査です。
初期症状③:乳頭からの異常な分泌物
乳頭からの分泌物のうち、特に血性分泌物は乳がんの可能性を強く示唆します。
注意すべき分泌物の特徴
- 血のような色(赤〜褐色)
- 片側のみの乳頭から分泌
- 自然に出る、あるいは軽く押すだけで出る
透明や乳白色の分泌物は生理的であることもありますが、色やにおい、出るタイミングをチェックすることが重要です。
セルフチェックの方法とタイミング
チェックのタイミング
- 月に1回、生理が終わった1週間後(乳房が柔らかくなる時期)
- 閉経後は毎月日付を決めて行うのが理想
チェック方法
- 鏡の前で両腕を上げて乳房の形を観察(左右差やひきつれ)
- 乳頭にただれ・分泌物がないか確認
- 指の腹で乳房をらせん状に触れてしこりを探す
- わきの下も含めてチェック(リンパ節の腫れ)
異常を感じた場合は、速やかに乳腺外科・婦人科を受診してください。
医療機関での検査方法と確定診断の流れ
マンモグラフィ
X線撮影により、乳腺の石灰化や腫瘤を確認。40代以降の女性に推奨。
超音波(エコー)検査
若年女性に有効。しこりの性状(内部構造)を詳しく観察可能。
細胞診・針生検
細い針でしこりや分泌物から細胞を採取し、悪性かどうかを判定。
MRI・CT・PET検査
診断確定後に転移や広がりの程度を把握するために実施されることがあります。
まとめ:早期発見がカギ。正しい知識と習慣を
乳がんは、正しい知識と定期的なセルフチェックによって早期発見が可能な病気です。特に初期症状は日常の中で気づけるサインが多く含まれており、小さな違和感を見逃さないことが命を守る第一歩となります。
セルフチェックを習慣化し、年1回の検診も忘れずに。異変があれば自己判断せず、医療機関を早めに受診しましょう。