聴力検査とは?オージオメーターによる高音・低音難聴と加齢性難聴を徹底解説

聴力検査は、健康診断や人間ドックで実施される基本的な検査であり、聴力の状態を評価し、難聴の早期発見に役立ちます。

加齢や騒音、疾患などにより聴力が低下すると、コミュニケーションに支障をきたし、生活の質が大きく低下します。本記事では、聴力検査の方法、オージオグラムの見方、高音難聴と低音難聴の違い、加齢性難聴の特徴、そして聴力を守るための対策について詳しく解説します。

聴力検査とは?耳の聞こえ方を評価する検査

聴力検査は、異なる音の高さ(周波数)と大きさ(音圧レベル)の音を聞き取る能力を測定する検査です。

一般的には、オージオメーターという専用の機器を使用して行われます。検査を受ける人は、防音室またはヘッドホンを装着し、聞こえた音に対してボタンを押すか手を挙げて合図をします。

聴力検査では、通常、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz、8000Hzといった複数の周波数の音を用いて測定します。

これにより、どの周波数の音がどの程度聞こえているか、または聞こえにくいかを詳しく把握できます。この検査結果は、オージオグラムというグラフで表現されます。

聴力検査の種類

聴力検査にはいくつかの種類があります。

気導聴力検査は、ヘッドホンから出る音を外耳と中耳を通して聞く検査で、最も一般的な方法です。骨導聴力検査は、頭蓋骨の振動を通して音を伝える検査で、伝音性難聴と感音性難聴を区別するために行われます。

会話音域検査は、日常会話で使われる周波数帯域(主に500Hz、1000Hz、2000Hz)での聴力を評価します。

語音聴力検査は、単語や文章を聞き取る能力を測定し、補聴器の適合評価などに使用されます。健康診断では通常、気導聴力検査が実施されます。

オージオグラムの見方

オージオグラムの基本

オージオグラムは、聴力検査の結果を示すグラフです。

横軸は音の高さ(周波数)をヘルツ(Hz)で、縦軸は音の大きさ(聴力レベル)をデシベル(dB)で表します。グラフの上部ほど小さい音が聞こえることを示し、下部ほど大きな音でないと聞こえないことを示します。

正常な聴力の場合、0~25dBの範囲内に測定点がプロットされます

右耳は○印、左耳は×印で表記されるのが一般的です。測定点を結んだ線の形によって、どのような難聴があるかが分かります。全体的に下がっている場合は全周波数で聴力が低下しており、特定の周波数だけが下がっている場合はその周波数の聴力が特に低下しています。

難聴の程度の分類

聴力レベルによって、難聴の程度が分類されます。

正常聴力は25dB以下、軽度難聴は26~40dB、中等度難聴は41~60dB、高度難聴は61~80dB、重度難聴は81dB以上とされています。

軽度難聴では、小さな音や騒がしい場所での会話が聞き取りにくくなります。

中等度難聴では、普通の大きさの会話が聞き取りにくくなり、高度難聴以上になると、大きな声や補聴器なしでは会話が困難になります。早期に発見し、適切な対策を取ることが重要です。

高音難聴と低音難聴

高音難聴の特徴

高音難聴は、4000Hz以上の高い音が聞き取りにくくなる難聴です。

加齢性難聴や騒音性難聴に多く見られるパターンです。オージオグラムでは、右側(高周波数側)が下がった形になります。高音難聴では、子音の聞き分けが難しくなるため、言葉が不明瞭に聞こえます。

たとえば、「さ行」「た行」「か行」などの子音が聞き取りにくくなり、「佐藤さん」と「加藤さん」の区別がつきにくくなります。

また、女性や子どもの声、鳥の鳴き声、電話の呼び出し音などの高い音が聞こえにくくなります。日常生活では、会話は聞こえるが内容がはっきり理解できない、聞き間違いが多くなるといった症状が現れます。

低音難聴の特徴

低音難聴は、500Hz以下の低い音が聞き取りにくくなる難聴です。

メニエール病や低音障害型感音難聴で見られることが多いパターンです。オージオグラムでは、左側(低周波数側)が下がった形になります。

低音難聴では、男性の低い声、雷の音、エンジン音などの低い音が聞こえにくくなります

また、耳閉感(耳が詰まった感じ)や耳鳴り、自分の声が響いて聞こえるといった症状を伴うことがあります。低音難聴は突然発症することが多く、早期治療により回復する可能性が高いため、症状に気づいたらすぐに耳鼻咽喉科を受診することが重要です。

加齢性難聴(老人性難聴)

加齢性難聴とは

加齢性難聴は、加齢に伴って内耳の蝸牛や聴神経の機能が低下することで起こる難聴です。

通常、両耳に徐々に進行し、特に高音域から聴力が低下するのが特徴です。65歳以上の約3分の1、75歳以上の約半数が加齢性難聴を持っているとされています。

加齢性難聴は、誰にでも起こり得る自然な加齢現象ですが、その進行速度には個人差があります。

遺伝的要因、長年の騒音暴露、喫煙、高血圧、糖尿病などが進行を早める要因となります。内耳の有毛細胞は再生しないため、一度失われた聴力は回復しません。

加齢性難聴の症状と影響

加齢性難聴の初期症状として、高い音や子音が聞き取りにくい、騒がしい場所での会話が困難、テレビの音量を大きくする、聞き返しが多くなるなどがあります。

進行すると、日常会話でも聞き取りが困難になり、社会的孤立やうつ、認知機能の低下につながる可能性があります。

近年の研究では、難聴が認知症のリスク因子の一つであることが明らかになっています。

聴力低下により脳への音の刺激が減少し、認知機能の低下を招くと考えられています。また、コミュニケーションの困難さから社会活動が減少し、これも認知機能低下の一因となります。

加齢性難聴への対応

加齢性難聴は治療で治すことはできませんが、補聴器を使用することで聞こえを改善し、生活の質を向上させることができます。

補聴器は早期から使用することで、脳の音の処理能力を維持し、より効果的に活用できます。難聴を自覚したら、早めに耳鼻咽喉科を受診し、適切な補聴器の選択と調整を受けることが重要です。

補聴器に抵抗がある場合でも、聞き取りを助ける工夫があります。

会話時には相手の顔を見る、騒音の少ない静かな環境で話す、ゆっくりはっきり話してもらう、重要な話は紙に書いてもらうなどの対策が有効です。家族や周囲の人の理解と協力も大切です。

聴力低下の原因と予防

主な原因

聴力低下の原因は多岐にわたります。

加齢以外にも、騒音性難聴は長期間の騒音暴露により内耳が損傷されて起こります。突発性難聴は、突然片耳の聴力が低下する疾患で、早期治療が重要です。

メニエール病は、内耳のリンパ液の異常により、めまいと難聴を繰り返す疾患です。

中耳炎や耳垢栓塞などの伝音性難聴、薬剤性難聴、聴神経腫瘍なども聴力低下の原因となります。また、糖尿病や高血圧などの生活習慣病も聴力低下のリスクを高めることが分かっています。

聴力を守るための対策

聴力を守るためには、日常生活での予防が重要です。

大きな音を避ける、または耳栓やイヤーマフを使用することで、騒音から耳を保護します。コンサートや工事現場など、大きな音に長時間さらされる環境では特に注意が必要です。

ヘッドホンやイヤホンで音楽を聴く際は、音量を控えめにし、長時間の連続使用を避けます。

音量の目安は、周囲の人に音が漏れない程度です。また、禁煙、血圧・血糖の管理、バランスの良い食事、適度な運動など、生活習慣病の予防も聴力維持に役立ちます。

聴力検査の結果と受診の目安

健康診断での判定

健康診断での聴力検査では、通常、1000Hzと4000Hzの2つの周波数で測定されます。

30dB以下で聞こえれば正常、30dBを超える場合は異常ありと判定されることが多いです。異常ありと判定された場合は、「要精密検査」となり、耳鼻咽喉科での詳しい検査が推奨されます。

4000Hzのみで異常が出る場合は、初期の加齢性難聴や騒音性難聴の可能性があります。

1000Hzでも異常が出る場合は、すでに日常会話に支障をきたす可能性があるため、早めの受診が必要です。

耳鼻咽喉科を受診すべき症状

以下の症状がある場合は、速やかに耳鼻咽喉科を受診してください。

突然の聴力低下、片耳だけ聞こえにくい、耳鳴りが続く、めまいを伴う聴力低下、耳の痛みや耳だれ、会話の聞き取りが困難になったなどです。

特に、突発性難聴は発症から48時間以内に治療を開始することが回復の鍵となります。

突然の聴力低下に気づいたら、すぐに耳鼻咽喉科を受診してください。また、健康診断で異常を指摘された場合も、放置せず必ず受診することが大切です。

まとめ:聴力検査で耳の健康を守る

聴力検査は、聴力の状態を評価し、難聴を早期に発見するための重要な検査です。

オージオメーターを使用して複数の周波数での聴力を測定し、結果はオージオグラムというグラフで表されます。高音難聴は加齢性難聴や騒音性難聴に多く、低音難聴はメニエール病などで見られます。

加齢性難聴は誰にでも起こり得る加齢現象ですが、進行すると生活の質を大きく低下させ、認知症のリスクも高めます。

補聴器の早期使用により、聞こえを改善し、社会活動を維持することが重要です。

聴力を守るためには、騒音を避ける、大きな音量での音楽再生を控える、生活習慣病を予防するなどの対策が有効です。

健康診断で異常を指摘された場合や、聴力低下を自覚した場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。特に突発性難聴は早期治療が重要です。定期的な聴力検査で耳の健康を守り、豊かなコミュニケーションを維持しましょう。

ABOUTこの記事をかいた人

20代のとき父親が糖尿病の診断を受け、日々の生活習慣からこんなにも深刻な状態になってしまうのかという経験を経て、人間ドックや健康診断を猛勉強。 数々の書籍などからわかりやすく、手軽に病気の予防に活用してほしいとの思いで「からだマガジン」を運営しています。