前立腺がんとは?症状・原因から診断・治療・予防まで初心者にもわかりやすく解説

前立腺がんは男性特有のがんで、高齢化に伴い患者数が増加しています。しかし、「前立腺」という臓器の働きや、前立腺がんの症状原因治療法について詳しく知らない方も多いでしょう。

当記事では前立腺がんとは何かという基本知識から、主な症状と診断方法、原因となるリスク要因と予防法、最新の医療による治療法、そして日常で気を付けたい予防のための生活習慣までを初心者にもわかりやすく解説します。

前立腺がんに詳しくない方でも、本記事を読めば前立腺がんの全体像と正しい向き合い方が理解できるはずです。

前立腺がんとは?基本的な知識をわかりやすく解説

aerial photography of airliner

前立腺は男性にのみ存在するクルミ大の臓器で、膀胱のすぐ下で尿道を取り囲むように位置しています。精液の一部となる前立腺液を分泌する働きがあり、その中にPSA(前立腺特異抗原)というタンパク質が含まれます。

前立腺がんとは、この前立腺の細胞が異常に増殖してできる悪性腫瘍の一種です。進行は比較的ゆっくりで、早期に発見して適切な治療を行えば治癒も期待できます。

実際、前立腺がんの5年生存率は早期では非常に高く、治療成績の良いがんとして知られています。また一方で、前立腺がんの中には進行が極めてゆっくりで一生涯症状を起こさないようなタイプも存在します。

例えば他の病気で亡くなった方の解剖で偶然見つかるラテントがん(潜在がん)と呼ばれるものがあり、前立腺がんではそうした潜在がんが比較的多いことも知られています。つまり「がん=すぐに命に関わる病気」ではなく、中には共存できるおとなしいものもあるのです。

とはいえ、油断は禁物です。前立腺がんが進行すると精嚢や膀胱、直腸など周囲臓器に広がり、さらに骨や肺、肝臓など遠くの臓器に転移する場合もあります。特に骨転移を起こしやすい性質があり、進行した前立腺がんでは骨の痛みや骨折のリスクも生じます。

前立腺がんは高齢男性に多く、日本では2018年に新たに約92,000人が診断され、男性のがん罹患数で最も多いがんとなりました。日本の高齢化や食生活の欧米化、検査機会の増加により患者数は年々増加傾向にあります。以上が前立腺がんの基本的な概要です。

主な症状と診断方法

black framed Ray-Ban Wayfarer sunglasses on top of book

主な症状

早期の前立腺がんでは自覚症状がほとんどありませんそのため無症状のうちに健康診断のPSA検査などで偶然発見されることも少なくありません。

一方、がんがある程度大きくなると、前立腺が尿道を圧迫するため排尿に関する症状が現れます。具体的には尿が出にくい(尿勢低下、尿線途絶)、排尿回数が多くなる(特に夜間の頻尿)、残尿感(排尿後に尿が残っている感じ)や尿意切迫(強い尿意を感じ我慢できなくなる)などが典型です。

これらの症状は前立腺肥大症(良性の前立腺の肥大)でも起こるため、症状だけで前立腺がんと断定はできません。実際、高齢男性では前立腺肥大症と前立腺がんが併存している場合もありますが、前立腺肥大症自体が前立腺がんに変化することはありません。

進行がんでは症状がさらに多彩になります。尿道や膀胱にがんが広がると血尿や排尿時の痛み、尿失禁が起こることがあります。

また前立腺がんは骨に転移しやすく、骨転移が起こると腰や背中の痛みが出たり、骨が脆くなって骨折しやすくなることがあります。

もしこれらの気になる症状がある場合は、放置せず早めに泌尿器科を受診することが大切です。症状だけでは判断が難しいからこそ、医療機関で適切な検査を受ける必要があります。

診断方法

前立腺がんが疑われる場合に行われる代表的な検査には、PSA検査直腸診、画像検査、そして前立腺生検があります。

まずPSA検査は血液中のPSA値を測定する簡便な検査で、前立腺がんのスクリーニングに広く用いられています。PSAは前立腺で作られるタンパク質で、前立腺がんがあると血中PSA値が上昇しやすくなるため腫瘍マーカーとして利用されます。一般に4ng/mLを超えると高値と判断されますが、年齢によって基準値は多少異なります。

注意すべきは、PSA値が高いからといって直ちにがんと決まったわけではない点です。前立腺肥大症や前立腺炎など良性の病気でもPSAは上昇しうるため、PSA異常が指摘された場合は必ず専門の医師の判断を仰ぐ必要があります。

腫瘍マーカーPSAとは?基準値や数値の目安、上昇の原因と考えられる病気

2024.06.19

PSA検査で基準値を超える異常が見られた場合、次に行われるのが直腸診です。医師が肛門から指を挿入して直接前立腺の硬さやしこりの有無を触診する検査で、前立腺がんがあると石のように硬く触れたり不整な腫瘤が触知されることがあります。

また近年はMRI検査による前立腺の精密評価も取り入れられており、PSAや直腸診でがんが疑われた場合には前立腺MRIで腫瘍の位置や広がりを確認することが推奨されています。

そして確定診断のために行われるのが前立腺生検です。前立腺生検は局所麻酔下で肛門から針を刺し、前立腺の組織を12か所程度採取して顕微鏡でがん細胞の有無を調べる検査です。

生検によって初めて前立腺がんの診断が確定します。生検の結果ではがんの悪性度(グリーソンスコア/グレード)や広がり具合(病期ステージ)も評価され、今後の治療方針の決定に役立ちます。

なお、生検に伴う出血や発熱などの合併症が起こることもありますが、多くは一時的であり事前に抗生物質投与などの対策も行われます。以上のように、血液検査・触診・画像診断・組織検査を組み合わせて総合的に診断することで、前立腺がんの有無と進行度を正確に把握します。

前立腺がんの原因を理解する:リスク要因と予防法

white and pink petaled flowers on metal fence near concrete houses and tower at daytime

前立腺がんの明確な原因は未だ完全には解明されていません。しかし、これまでの研究から発症のリスクを高めるリスク要因はいくつか知られています。

代表的なリスク要因は高齢家族歴(遺伝的要素)です。前立腺がんは加齢に伴い発症率が上がり、特に50代以降の男性で増えていきます。

また父親や兄弟など近親者に前立腺がん患者がいる場合、発症リスクは一般の男性より2倍以上高まることが報告されています。遺伝的な背景が発症に影響することは明らかです。

そのほかの要因としては、食生活や肥満、喫煙習慣などの生活習慣が指摘されています。特に動物性脂肪や乳製品を多く摂る食事、緑黄色野菜や大豆食品の摂取不足は前立腺がんの発生率を高める一因と考えられています。

実際、欧米では前立腺がんが多く、日本でも食事の欧米化に伴い前立腺がんの罹患率・死亡率が年々増加しています。一方で、野菜や魚中心の伝統的な和食は予防に有効とされ、特に大豆に含まれるイソフラボンは女性ホルモン様の作用で前立腺がんを抑制する効果が期待されています。

また、トマトやスイカなど赤い野菜・果物に含まれるリコピン(抗酸化成分)にも前立腺がんの発生リスクを下げる可能性が示唆されています。

このように食生活は前立腺がんのリスクに関与していると考えられますが、肥満や特定の栄養素との関連については研究途上の部分もあり、現時点で「これをすれば絶対に防げる」という特異的な予防法は確立されていません。

したがって、前立腺がんの予防においては、リスク要因をできるだけ減らすライフスタイルを心がけることが重要です。具体的には禁煙お酒を控えめにすること、肉に偏らないバランスの良い食事を摂ること、適度に体を動かし肥満を防ぐことなど、総合的な健康習慣が有効だとされています。

こうした生活習慣の改善は前立腺がんに限らずがん全般の予防に繋がります。年齢や遺伝要因は変えられませんが、日々の心がけ次第でリスクを減らすことは可能です。

治療法を詳しく解説:最新の医療と対策

前立腺がんと診断された場合でも、現在では選択できる治療法が非常に充実しています。

患者さんの状態(がんの進行度や悪性度、年齢や体力など)に応じて最適な治療戦略が立てられます。主な治療選択肢には、すぐに治療せず経過を観察する監視療法、部分的にがんを治療するフォーカルセラピー、根治を目指す手術療法放射線療法、進行例に用いる薬物療法(ホルモン療法・化学療法)などがあります。ここではそれぞれの治療法について詳しく解説します。

監視療法(経過観察)

前立腺がんには命に影響しない「おとなしいがん」も存在するため、がんが低リスクであれば無理に治療をせず経過を見る選択肢があります。

これを監視療法(アクティブサーベイランス)と呼びます。監視療法では定期的にPSA検査や直腸診を行い、必要に応じて画像検査や再度の生検でがんの状態をチェックします。

具体的には、PSA値の上昇具合や生検でのがんの変化を監視し、悪化の兆候があれば速やかに根治的治療に切り替えます。

こうすることで、不必要に治療を受けて副作用に苦しむことを防ぎつつ、安全に様子を見ることができます。監視療法の対象となるのは、腫瘍が前立腺内に留まる限局性で腫瘍の悪性度が低く、PSA値もあまり高くない患者さんです。

医師と相談の上で「すぐには治療せず様子を見る」という選択肢もあることを知っておいてください。定期的なフォローをきちんと受ければ、多くの場合安全に経過観察が可能です。

フォーカルセラピー(部分治療)

監視療法と本格的な治療の中間に位置する新しいアプローチとしてフォーカルセラピーがあります。これは前立腺がんのうち画像検査(MRI)で病変が局在している場合に、その部位だけをピンポイントで治療する方法です。

前立腺全体を摘出・照射するのではなく、がんの部分に限局した治療(例:高強度焦点超音波療法<HIFU>や経皮的凍結療法など)を行うことで、前立腺の正常部分を温存し副作用を軽減することが期待できます。

フォーカルセラピーは比較的新しい治療法で、低~中リスクの前立腺がんで検討されることがあります。長期的な治療成績や再発率については現在も研究が進められており、日本でも限られた医療機関で導入が始まっています。

適応には慎重な判断が必要ですが、「前立腺を全部取るのは抵抗がある」「副作用を可能な限り減らしたい」という場合に主治医と相談してみる価値のある最新治療と言えるでしょう。

手術療法(前立腺全摘除術)

手術による治療は、前立腺がんを患部ごと体から取り除いてしまう根治的治療です。

主に前立腺がんが前立腺内に留まっている限局性の場合に適応となり、がんを完治させる可能性が高い標準治療です。手術の代表は前立腺全摘除術で、前立腺と精嚢を摘出し膀胱と尿道を再びつなぎ直します。手術には大きく分けて開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術の方法があります。

近年は体への負担が少ない低侵襲のロボット支援手術(ダビンチ手術)が広く普及し、早期の患者さんには最新のロボット手術が適用されるケースが増えています。ロボット手術は細かい操作が可能で出血が少なく、術後の回復が早い利点があります。ただし手術には避けられないリスクもあります。

前立腺は排尿や性機能に関わる神経に近接しているため、手術後に尿失禁(尿漏れ)や勃起障害などの後遺症が生じる可能性があります。近年は神経を温存する手術手技の向上により副作用も軽減しつつありますが、手術適応の判断ではこうした点も考慮されます。医師と十分に話し合い、自分にとってベストな治療かどうか検討するとよいでしょう。

早期がんで手術が可能な場合、手術により病変を完全に摘出できればその後追加治療なしで経過観察とすることもできます。根治性の高さが手術療法の大きな利点です。

放射線療法

放射線療法も手術と並ぶ根治的治療の柱です。体の外から高エネルギーの放射線を前立腺に照射する外照射と、放射性物質を前立腺内に埋め込む小線源療法(組織内照射)があります。

限局性の前立腺がんで手術に匹敵する治療成績を持ち、患者さんの状態によっては手術の代わりに放射線療法が選択されます。外照射では近年、強度変調放射線治療(IMRT)など精度の高い照射技術が発達し、副作用を抑えつつ前立腺に十分な線量を当てることが可能になっています。

一方、小線源療法は前立腺内に放射線源を留置して内部から長時間照射する方法で、外照射と併用することで効果を高める試み(トリモダリティ療法)も行われています。

さらに、特殊な放射線を用いる先進的な治療もあります。例えば重粒子線や陽子線といった粒子線治療は、前立腺がんに対して高い集中性で照射できるため、有望な治療として一部の専門施設で実施されています。

放射線療法の利点は手術のような侵襲がなく高齢者や合併症のある方にも行いやすい点です。ただし放射線の照射範囲によっては腸管や膀胱に影響が出ることがあり、放射線性直腸炎(下痢や血便)や放射線性膀胱炎(頻尿や血尿)などの副作用が起こる場合があります。

多くは一時的で投薬で改善しますが、稀に長引くこともありますので治療前に説明を受けておきましょう。限局がんでは放射線単独で根治が期待できますが、高リスク(悪性度が高かったり一部が被膜を越えて広がっているようなケース)ではホルモン療法を併用して効果を高めるのが一般的です。

放射線療法は患者さんの生活スタイルに合わせ通院で少しずつ治療できる点もメリットで、仕事を続けながら治療することも可能です。

ホルモン療法(内分泌療法)

前立腺がんは男性ホルモン(アンドロゲン)によって増殖が促進される性質を持っています。そこで、前立腺がんの進行を抑えるために男性ホルモンを絶つ治療がホルモン療法(内分泌療法)です。

具体的には、精巣から分泌されるテストステロンという男性ホルモンの産生を抑えたり、その作用を妨げる薬剤を用います。ホルモン療法によって前立腺がん細胞の増殖スピードを落とし、腫瘍を縮小させることが期待できます。

手術や放射線で取り切れない場合や、がんが前立腺の外に転移している場合にまず行われる標準治療です。例えば骨に転移があるケースでは、ホルモン療法により高い確率でPSA値が低下し、症状も和らぐことが多く報告されています。ホルモン療法は内服薬や定期的な注射で行い、体への負担が比較的少ない治療ですが、男性ホルモンを抑える影響で更年期障害のような副作用が出ることがあります。

代表的なものにほてり(ホットフラッシュ)、発汗、倦怠感、性欲低下、骨密度低下などがあります。

しかし副作用は薬で緩和できる場合も多く、医師の指導の下で対処しながら治療を継続します。ホルモン療法はがんを根治させる治療ではなく、あくまでがんと付き合っていく治療という位置づけです。

長期間の内分泌療法によりがん細胞がホルモンに耐性を獲得すると、再びPSAが上がって病状が進行する(去勢抵抗性前立腺がん)ことがあります。その場合には薬を変更したり、次の段階の治療へ移行します。

化学療法(抗がん剤治療)

化学療法は抗がん剤(抗腫瘍薬)を用いてがん細胞を攻撃する治療です。前立腺がんでは主にホルモン療法が効かなくなってきた進行例に対して行われます。

代表的な薬剤はドセタキセルやカバジタキセルといったタキサン系の抗がん剤で、これらを点滴投与することでがんの増殖を抑えます。化学療法により延命効果や症状緩和が得られることが臨床試験で確認されています。

副作用としては吐き気、食欲不振、脱毛、骨髄抑制(白血球減少による感染リスクなど)がありますが、近年は副作用対策の薬も進歩し、安全性は向上しています。化学療法はホルモン療法に比べると体への負担が大きいため、患者さんの全身状態を見極めて慎重に適応が判断されます。

なお近年では、新たな内分泌療法薬(いわゆる第二世代ホルモン剤)や分子標的薬、放射性医薬品による治療など、進行前立腺がんに対する薬物療法の選択肢が増えており、治療成績も向上しつつあります。

例えば去勢抵抗性前立腺がんに対してはエンザルタミドやアビラテロンといった新規ホルモン薬が有効性を示しています。また、前立腺がん細胞に集積する放射性同位元素を用いた治療(放射性ラジウム223による骨転移治療など)も承認され、症状の緩和と生存期間の延長に寄与しています。

今後もさらなる新薬や治療法の開発が期待されており、前立腺がんの薬物療法は日進月歩で進化しています。

その他の対策とサポート

前立腺がん治療では緩和ケア(支持療法)の併用も重要です。

がんと診断された時点から、痛みや不安など心身のつらさを和らげるケアを受けることができます。特に骨転移による痛みに対しては鎮痛剤の適切な使用や放射線照射による痛みの軽減策が取られます。

排尿症状に対しては薬物療法や尿道ステント留置などの処置で緩和を図ることも可能です。また、治療法の選択肢が多岐にわたる前立腺がんでは、自分にとって納得のいく治療を選ぶことが大切です。

主治医と十分に相談し、副作用も含めた各治療のメリット・デメリットを理解しましょう。場合によっては他の専門医の意見(セカンドオピニオン)を求めるのも一つの方法です。

前立腺がんは治療後も長期にわたり経過観察が必要な病気です。定期的なフォローアップを怠らず、PSA値のチェックや必要な検査を続けることで再発の早期発見・対処が可能となります。

予防するための生活習慣と注意点

white motor scooter near building

前述のとおり、確実な前立腺がん予防法は確立されていませんが、日常生活でリスクを下げるために心がけたいポイントがあります。ここでは食生活運動習慣禁煙・節酒定期検診という観点から予防のための注意点を紹介します。

食生活のポイント

食事は前立腺がんのリスクに大きく関与します。高脂肪・高カロリーの食事を控え、野菜や魚中心のバランスの良い食事を心がけましょう。

特に和食に多い大豆製品(豆腐、味噌、納豆等)に含まれるイソフラボンは前立腺がん予防に有望な成分で、積極的に摂りたい食品です。

イソフラボンは女性ホルモン様の作用で前立腺がん細胞の増殖を抑える可能性が報告されています。またトマトやスイカなど赤色の野菜・果物に含まれるリコピンにも抗酸化作用があり、前立腺がんの抑制効果が期待されています。ブロッコリーやキャベツなどアブラナ科野菜も予防効果が高いと考えられる食材です。

反対に動物性脂肪や乳製品の摂りすぎには注意が必要です。牛肉やバター、生クリームなど脂肪分の多い食品はできるだけ節制し、肉よりは魚や大豆をタンパク源とすると良いでしょう。

塩分や香辛料の強い食事は直接の発がん要因ではありませんが、刺激物の過剰摂取は泌尿器に負担をかける可能性があるためほどほどにしましょう。総じて「和食を基本に野菜・大豆・魚を多く、肉・乳製品・油脂は控えめ」が前立腺がん予防の食事として推奨されます。栄養バランスの取れた食生活は肥満防止にもつながり、一石二鳥です。

適度な運動と体調管理

運動習慣もがん予防に役立ちます。日頃から適度に体を動かし、筋力や心肺機能を維持することは肥満防止やホルモンバランスの安定につながります。

肥満、特に内臓脂肪の多い状態は前立腺がんリスクを上げる可能性が指摘されています。ウォーキングやジョギング、筋力トレーニングなど無理のない範囲で継続できる運動を週に数回でも取り入れましょう。運動は免疫力を高め、生活習慣病の予防にも有効です。加えて、規則正しい生活リズムを保つことも大切です。

十分な睡眠と休養をとり、ストレスをためないよう心掛けてください。過度の疲労や睡眠不足は免疫機能を低下させ、様々な病気のリスクになります。前立腺がん予防に特化した内容ではありませんが、「栄養・運動・休養」のバランスが取れた健康的な生活は結果的にがんになりにくい身体づくりにつながります。適正体重の維持も含め、日頃の体調管理をしっかり行いましょう。

禁煙と節酒

タバコや過度の飲酒は多くのがんの危険因子です。

禁煙することで前立腺がんを含む全てのがん予防につながります。喫煙者は禁煙外来なども活用してできるだけ早くタバコを断つようにしましょう。また飲酒についても、全く飲まない必要はありませんが適量を守ることが大切です。

厚生労働省の指針では「節度ある適度な飲酒」としてビール中瓶1本程度、日本酒1合程度までが目安とされています。アルコールの摂りすぎは免疫力の低下や生活習慣病につながり、結果的にがんリスクを高める可能性があります。

前立腺がんとの直接的関連は明確ではないものの、健康のためには深酒は控えましょう。特に就寝前の飲酒は夜間頻尿を悪化させ睡眠の質も下げますので注意が必要です。適度な飲酒量を守り、休肝日を設けるなどお酒との付き合い方にも気を配りましょう。

定期的な検診・早期発見

前立腺がんは早期には症状が出にくいものの、早期発見すれば高い確率で治癒が望めるがんです。そのため症状がなくてもリスクのある年代になったら定期的に前立腺がん検診を受けることを検討しましょう。

日本において前立腺がん検診(PSA検査)は国の対策型検診としては指針に含まれておらず、市区町村が実施するがん検診の対象にはなっていません。

しかし、人間ドックや職場の健診でオプションとしてPSA検査を受ける機会は増えています。日本泌尿器科学会は海外の大規模研究結果などを踏まえ、50歳以上の男性(希望すれば40歳代から)に対してPSA検診の受診を推奨しています。

PSA検診を受けることで前立腺がんによる死亡率を大幅に減らせる(約半減できる)ことが示されており、早期発見には有効と考えられます。特に家族歴がある方や食習慣に不安がある方は、40代から定期的にPSA検査を受けておくと安心材料になるでしょう。

加えて、少しでも排尿の異常など症状を感じたら年齢に関わらず速やかに泌尿器科を受診してください。「まだ若いから前立腺がんは関係ない」と自己判断せず、違和感があれば専門医のチェックを受けることが大切です。

早期であればあるほど治療の選択肢も広がり、体への負担も軽い治療で済む可能性が高くなります。定期的な検診と自己チェックで、前立腺がんを「見逃さない」ようにしましょう。

まとめ

前立腺がんは高齢男性を中心に増えている病気ですが、早期発見・早期治療により十分克服が可能ながんです。

この記事では前立腺がんの基本知識から症状、原因、治療、予防まで幅広く解説しました。症状がなくても定期的にPSA検査を受けることで早期発見に繋がり、適切な治療を受ければ多くの患者さんが寛解になったケースもあります。

特に治療法は年々進歩しており、手術や放射線、ホルモン療法など様々な選択肢から自分に合った方法を選べます。一方で日頃の生活を見直し、禁煙節酒やバランスの良い食生活、適度な運動習慣を心掛けることで前立腺がんのリスクを減らすことが期待できます。ぜひ今日からできる予防策に取り組んでみてください。

もし前立腺がんと診断されても過度に恐れる必要はありません。信頼できる医療機関で十分に相談し、納得のいく治療計画を立てていきましょう。

早期発見・早期治療、そして健康的な生活習慣の維持が前立腺がんに向き合う上でのポイントです。あなたやご家族の健康を守るため、本記事の内容をぜひ役立てていただき、疑問があれば遠慮なく専門医に相談してください。できることから一歩ずつ始めましょう。