「布団に入っても眠れない夜が続いている」「夜中に何度も目が覚めてしまう」——不眠の悩みを抱えている日本人は非常に多く、成人の約30〜40%が何らかの不眠症状を経験するといわれています。
不眠が慢性化すると、日中のパフォーマンス低下・気分の落ち込み・生活習慣病のリスク増加などさまざまな問題につながります。まず自分の不眠のタイプと原因を知り、適切な対策を取ることが改善の第一歩です。
目次
不眠症とは?診断の基準
不眠症とは、眠れない状態が週3日以上かつ3か月以上続き、日中に眠気・倦怠感・集中力低下などの支障をきたしている状態を指します(慢性不眠症の基準)。一時的な不眠とは異なり、慢性的な不眠は適切な治療が必要です。
日本では約15〜20%が慢性不眠症の状態にあるとされており、特に中高年・女性・高齢者に多い傾向があります。
不眠症のタイプ:あなたはどれ?
入眠障害
床に入ってもなかなか寝付けないタイプです。30分〜1時間以上かかっても眠れない状態が続きます。ストレス・不安・スマートフォンの使用・カフェインなどが原因として多く挙げられます。若い世代や不安が強い方に見られやすいタイプです。
中途覚醒
眠れても夜中に何度も目が覚めてしまうタイプです。睡眠が浅く、特に深夜2〜4時頃に覚醒しやすくなります。加齢・アルコール・睡眠時無呼吸症候群・うつ病などが関連することがあります。中高年・高齢者に多いタイプです。
早朝覚醒
予定より2時間以上早く目が覚めてしまい、その後眠れなくなるタイプです。うつ病の特徴的な症状の一つであり、「早朝覚醒が続く+気分の落ち込み・食欲低下」がある場合はうつ病の可能性を考慮して精神科・心療内科への受診が必要です。
熟眠障害
十分な時間眠っているにもかかわらず熟睡感が得られないタイプです。睡眠の質が低下している状態で、睡眠時無呼吸症候群やうつ病・鉄欠乏性貧血などが背景にあることもあります。
不眠症の原因
不眠症の原因は大きく「心理的要因」「身体的要因」「生活習慣・環境要因」の3つに分けられます。
心理的要因としては、仕事や対人関係のストレス・不安・うつ病などが挙げられます。身体的要因としては、慢性疼痛・頻尿・かゆみ・睡眠時無呼吸症候群・甲状腺機能亢進症などが関連します。
生活習慣が不眠に与える影響は大きく、就寝前のスマートフォン・ブルーライト・カフェイン摂取・不規則な睡眠スケジュール・日中の活動不足などが眠りの質を低下させます。
不眠症の治療:薬物療法と非薬物療法
睡眠薬の種類と特徴
不眠症の薬物療法では、以下のような薬が使用されます。オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント・レンボレキサント)は依存性が低く、現在最も推奨されている睡眠薬のカテゴリーです。メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)は自然な眠気を促し、依存性がほとんどないため高齢者にも使いやすい薬です。
従来から使われてきたベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は即効性がありますが、依存性・翌日への眠気の持ち越し・転倒リスク(特に高齢者)といった注意点があります。
不眠症の認知行動療法(CBT-I)
睡眠薬に頼らない最も効果的な治療法が不眠症に対する認知行動療法(CBT-I:Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia)です。睡眠に関する誤った考え方を修正し、健全な睡眠習慣を身につけることで根本的な改善を目指します。
具体的には、睡眠制限療法(就寝時間を一時的に短縮して睡眠圧を高める)・刺激制御法(ベッドは睡眠のためだけに使う)・リラクセーション法などが組み合わされます。長期的な有効性は睡眠薬を上回るとされています。
今日からできる睡眠改善習慣
毎日同じ時刻に起きること・日中に適度な運動をすること・就寝1〜2時間前からスマートフォンを見ないこと・カフェインは午後2時以降避けること・寝室を暗く涼しくすること(18〜20℃が理想)を実践しましょう。
また眠れなくても焦らないことが非常に重要です。「眠らなければ」という焦りが覚醒反応を引き起こし、さらに眠れなくなるという悪循環になります。眠れないときは一度ベッドから出て、リラックスできることをして眠気が来てから再度ベッドに入る「刺激制御法」が効果的です。
まとめ:不眠症は適切な対策で改善できる
不眠症は慢性化する前に対処することが大切です。生活習慣の見直し・認知行動療法・必要に応じた睡眠薬の使用を組み合わせることで、多くの場合で改善が見込めます。
不眠が2週間以上続く場合、または早朝覚醒と気分の落ち込みが同時にある場合は、精神科・心療内科・睡眠専門外来への受診を検討しましょう。良質な睡眠は心身の健康の基盤です。










