「いつも疲れている」「体重が増えているのに食事は変えていない」「むくみがひどい」「気分が沈んでやる気が出ない」——これらが数ヶ月続いている場合、甲状腺機能低下症が原因の可能性があります。
甲状腺機能低下症は日本人の約1〜2%(女性に多く男性の5〜10倍)が罹患する病気です。本記事では甲状腺機能低下症の症状・原因・診断・治療まで詳しく解説します。
甲状腺機能低下症とは
甲状腺は首の前部にある蝶形の内分泌腺で、エネルギー代謝・体温調節・心拍数・消化・精神機能など全身のあらゆる機能を調節する甲状腺ホルモン(T3・T4)を分泌しています。
甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの分泌が不足し、全身の代謝機能が低下する状態です。日本では橋本病(慢性甲状腺炎)が原因の大多数を占め、自己免疫によって甲状腺が攻撃されて機能が低下します。
主な症状
全身症状
強い疲労感・倦怠感・体重増加(食欲不振でも太る)・むくみ(特に顔・まぶた・手足)・皮膚の乾燥・毛髪の脱毛・声が低くなる・寒さに敏感(寒がり)などが代表的な症状です。
精神・神経症状
集中力の低下・記憶力の低下・抑うつ気分・無気力・思考の緩慢化が起きます。これらがうつ病と間違われることも多く、「うつ病の治療をしていたが改善せず、甲状腺機能低下症だとわかった」というケースも少なくありません。
循環器・消化器症状
心拍数が低下(徐脈)・血圧が上昇・コレステロール値が上昇・便秘・腸の動きの低下などが起きます。健診で脂質異常症や高血圧を指摘されている方も、甲状腺機能をチェックする価値があります。
女性特有の症状
月経不順・過多月経・不妊・流産のリスク上昇が起きます。妊娠を希望する女性は特に甲状腺機能のチェックを推奨します(妊娠中の甲状腺機能低下は胎児の神経発達に影響する可能性があります)。
橋本病とは
橋本病(慢性甲状腺炎)は自己免疫疾患で、免疫が誤って自分の甲状腺を攻撃し、慢性的な炎症によって甲状腺が傷つき、機能が低下します。血液検査で抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体が陽性になるのが特徴です。
橋本病があっても甲状腺機能が正常な「潜在性甲状腺機能低下症」の段階では無症状のことも多く、定期的なフォローが必要です。
診断:何科でどんな検査をするか
内科・内分泌内科・甲状腺専門クリニックを受診してください。血液検査で以下の値を確認します。
| 検査項目 | 意味 | 低下症の場合 |
|---|---|---|
| TSH(甲状腺刺激ホルモン) | 脳下垂体から分泌・甲状腺を刺激 | 高値↑(甲状腺を頑張って刺激) |
| FT4(遊離サイロキシン) | 甲状腺ホルモンの主要な指標 | 低値↓(分泌不足) |
| FT3 | 活性型甲状腺ホルモン | 低値↓ |
TSHが高く・FT4が低い状態が甲状腺機能低下症の典型的なパターンです。また、甲状腺の超音波検査で橋本病特有の変化を確認できます。
治療:チラーヂンS(レボチロキシン)
甲状腺機能低下症の治療は不足している甲状腺ホルモンを補充する「レボチロキシン(チラーヂンS)」の内服が基本です。毎日同じ時間(食事の30分前が理想)に服用し、TSH値が正常範囲(0.4〜4.0 mIU/L)に安定するよう用量を調整します。
多くの方は服用開始後数週間〜数ヶ月で症状が改善します。治療は基本的に生涯継続が必要ですが、適切な用量の維持が重要で、副作用は少なく安全に使用できます。
まとめ
甲状腺機能低下症は血液検査(TSH・FT4)で簡単に診断でき、治療(チラーヂン)で劇的に改善できる病気です。慢性的な疲れ・体重増加・むくみ・うつ症状が続く場合は「甲状腺の問題かも」と疑って受診することが重要です。
特に30〜50代女性・橋本病の家族歴がある方・妊娠を希望している方は、定期的な甲状腺機能チェックを強くおすすめします。










