肺がん検診では、胸部X線検査とともに「喀痰細胞診」が行われることがあります。
喀痰細胞診は、痰の中に含まれる細胞を顕微鏡で調べ、がん細胞の有無を確認する検査です。
本記事では、喀痰細胞診の仕組みや検査方法、結果の見方、対象となる方について詳しく解説します。
喀痰細胞診とは
喀痰細胞診は、痰(喀痰)に含まれる細胞を顕微鏡で観察し、がん細胞や異型細胞の有無を調べる検査です。
肺の気管支に発生するがん(特に扁平上皮がん)は、がん細胞が痰に混じって排出されることがあります。この特性を利用して、痰を採取して細胞を調べることで、肺がんの早期発見を目指します。
胸部X線検査では見つけにくい中心型肺がん(太い気管支に発生するがん)の発見に有効とされています。
喀痰細胞診の対象者
喀痰細胞診は、すべての人に推奨されるわけではありません。
50歳以上で喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の方が主な対象となります。例えば、1日20本を30年間吸っている場合、喫煙指数は600となります。
過去に喫煙していた方(禁煙後も一定期間)も対象に含まれることがあります。喫煙歴がない方や喫煙指数が低い方は、胸部X線検査のみで肺がん検診を受けることが一般的です。
喀痰細胞診の検査方法
喀痰細胞診は、自宅で痰を採取して提出する方法が一般的です。
採取は通常、3日間連続で行います。朝起きてすぐ、うがいをした後に深く咳をして痰を出し、専用の容器に入れます。
唾液ではなく、肺の奥から出る痰を採取することが重要です。痰が出にくい場合は、深呼吸を繰り返したり、水分を多めに摂ったりすると出やすくなることがあります。
採取した痰は、指定された方法で保存し、検査機関に提出します。
喀痰細胞診の結果の見方(クラス分類)
喀痰細胞診の結果は、以下のようなクラス分類で示されます。
| クラス | 判定 | 対応 |
|---|---|---|
| クラスI | 正常 | 異常なし |
| クラスII | 異型細胞はあるが良性 | 炎症などによる変化、経過観察 |
| クラスIII | 異型細胞あり(悪性の疑い) | 要精密検査 |
| クラスIV | 悪性の疑いが強い | 要精密検査 |
| クラスV | 悪性(がん細胞あり) | 要精密検査・治療 |
クラスIII以上の場合は、気管支鏡検査やCT検査などの精密検査が必要です。クラスIIでも、医師の判断により経過観察や再検査が行われることがあります。
喀痰細胞診の精度と限界
検出できるがん
喀痰細胞診は、太い気管支に発生する中心型肺がん(扁平上皮がんなど)の検出に有効です。喫煙者に多いタイプのがんであり、喫煙指数が高い方に検査が推奨される理由です。
限界
肺の末梢(肺野部)に発生する腺がんなどは、痰に細胞が混じりにくいため、喀痰細胞診では検出しにくいです。
また、痰の採取が不十分だと正確な結果が得られないことがあります。胸部CT検査と組み合わせることで、より広範囲の肺がんを発見できる可能性が高まります。
喀痰細胞診を受ける際の注意点
正確な結果を得るために、以下の点に注意しましょう。
朝起きてすぐの痰を採取することが推奨されます。夜間に気管支に溜まった痰には、細胞が多く含まれている可能性があります。
採取前にうがいをして口腔内の細菌や食べかすを除去し、深く咳をして肺の奥から痰を出しましょう。
3日間連続で採取することで、がん細胞を検出できる確率が高まります。
まとめ
喀痰細胞診は、痰に含まれる細胞を調べて肺がんの早期発見を目指す検査です。
50歳以上で喫煙指数600以上の方が主な対象であり、中心型肺がんの検出に有効です。結果はクラス分類で示され、クラスIII以上は精密検査が必要です。
喫煙歴のある方は、胸部X線検査とともに喀痰細胞診を活用し、肺がんの早期発見に努めましょう。










