人間ドックで受診することが出来る腫瘍マーカー。そのなかの一つである、AFP。
今回はそのAFPについて、そもそも腫瘍マーカーのAFPとは何か、AFPの基準値や上昇してしまった場合の理由、再検査となった場合どうすればよいかという点について詳しく解説していきます。
目次
腫瘍マーカーのAFPとは?
腫瘍マーカーのAFP(アルファフェトプロテイン)とは、主に肝細胞癌やその他の特定の癌の診断や治療経過のモニタリングに使用される血液中のタンパク質です。
AFPは胎児の肝臓や卵黄嚢で大量に生成され、胎児の成長と発達に重要な役割を果たしますが、出生後にはその量が急激に減少します。
健康な成人ではAFPの血中濃度は非常に低くなりますが、特定の病状や病気の際に増加することがあります。
AFPの役割
AFPは主に以下のような目的で利用されます:
- 肝細胞癌の診断:AFPは肝細胞癌の診断に重要な役割を果たします。特に肝硬変や慢性肝炎などのリスクが高い患者において、AFPの定期的な測定は早期発見に寄与します。
- 治療経過のモニタリング:肝癌の治療後にAFPの値をモニタリングすることで、治療の効果や再発の早期発見に役立ちます。
- その他の癌の診断:AFPは肝癌以外にも、卵巣や精巣の胚細胞腫瘍などの診断にも使用されることがあります。
AFPの基準値は?
AFPの血中濃度の基準値は、使用される測定方法や機器によって若干異なることがありますが、一般的には以下の範囲が正常とされています:
- 成人男性および非妊娠女性:0~10 ng/mL(ナノグラム・パー・ミリリットル)
これらの基準値は、健康な個人での通常のAFP濃度を反映しており、これを超える値は異常と見なされ、さらなる検査や診断が必要となる場合があります。
基準値の重要性
AFPの基準値は、健康状態の評価や病気の早期発見において非常に重要です。
特に肝疾患のリスクが高い患者にとって、AFPの測定は定期的に行われ、基準値を超える場合には早急な対応が求められます。
AFPが高いときの原因は?
AFPが基準値を超えて高くなる原因はさまざまです。以下に代表的な原因を挙げます:
1. 肝細胞癌
肝細胞癌はAFPの上昇を引き起こす最も一般的な原因の一つです。特に慢性肝炎や肝硬変などの背景を持つ患者では、肝細胞癌のリスクが高まり、AFPの定期的な測定が推奨されます。
2. 慢性肝疾患
慢性肝炎や肝硬変などの慢性肝疾患でもAFPの値が上昇することがあります。これらの疾患では、肝細胞が持続的に損傷を受け、再生が活発になるため、AFPの産生が増加することがあります。
3. 胚細胞腫瘍
卵巣や精巣の胚細胞腫瘍(特に非セミノーマ)でもAFPの値が高くなることがあります。これらの腫瘍は若年層に多く見られ、AFPの測定は診断や治療経過のモニタリングに重要です。
4. 妊娠
妊娠中は、胎児の肝臓や卵黄嚢で大量のAFPが生成され、母体の血中にもAFPが移行するため、正常範囲内での上昇が見られます。特に妊娠中期以降にAFPの値が高くなることが一般的です。
5. その他の疾患
一部の胃癌、膵癌、肺癌などの悪性腫瘍でもAFPが上昇することがあります。また、良性疾患である肝腺腫や甲状腺疾患、腎疾患などでもAFPの値が高くなることがあります。
AFPを正常値に戻すためにできることは?
AFPの値を正常に戻すためには、まずその上昇原因を特定し、適切な治療を行うことが重要です。以下に具体的な対策を示します。
1. 原因疾患の治療
AFPが高くなる原因が肝細胞癌や他の癌である場合、外科的切除、化学療法、放射線療法などの適切な治療が必要です。癌の治療によりAFPの値が減少することが期待されます。
2. 慢性肝疾患の管理
慢性肝炎や肝硬変などの慢性肝疾患が原因でAFPが上昇している場合、以下のような肝機能の保護と改善を目指す対策が有効です:
- 抗ウイルス治療:B型肝炎やC型肝炎の患者には、抗ウイルス薬が使用され、ウイルスの抑制が図られます。
- 生活習慣の改善:アルコールの摂取を控え、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。
- 定期検査:定期的に肝機能検査やAFPの測定を行い、病状の進行をモニタリングします。
3. 健康的な生活習慣
健康的な生活習慣を維持することは、肝機能の維持とAFPの正常化に寄与します:
- 禁酒:アルコールは肝臓に負担をかけるため、摂取を控えることが推奨されます。
- 適度な運動:運動は全身の健康を保つために重要であり、適度な運動を心がけましょう。
- バランスの取れた食事:野菜や果物、全粒穀物を含むバランスの取れた食事が肝臓の健康をサポートします。
4. 定期的な健康チェック
定期的に健康チェックを受けることで、AFPの値やその他の健康状態をモニタリングし、早期に異常を発見することができます。
特に肝疾患のリスクがある人は、定期的な肝機能検査とAFPの測定を行うことが重要です。
5. ストレス管理
ストレスは体全体の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、適切なストレス管理も重要です。
リラクゼーション法や趣味の時間を持つことで、ストレスを軽減することができます。
終わりに
AFP(アルファフェトプロテイン)は、肝細胞癌や他の特定の癌の診断や治療経過のモニタリングにおいて重要な役割を果たす腫瘍マーカーです。
腫瘍マーカーの値が正常範囲内であれば、軽度の変動については心配する必要はありません。
例えば、2.3から2.6への変動は有意なものとは考えられません。肝臓がんなどの再発を疑うには、値が右肩上がりで正常範囲を大幅に超える場合です。
少し高い場合でも、現時点では経過観察で問題なく、再発を示すものではないため安心してください。
AFPの値が基準値を超えて高くなる原因は多岐にわたり、正確な診断と適切な治療が必要です。
AFPの値を正常に保つためには、原因疾患の治療、健康的な生活習慣の維持、定期的な健康チェックが重要です。早期発見と早期治療を心がけ、健康な生活を送りましょう。