心不全は心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送れなくなる状態です。
初期には自覚症状が乏しいことも多く、気づかないうちに進行していることがあります。
本記事では、心不全のリスクを血液検査で評価できる「NT-proBNP検査」について、仕組みや基準値、結果の見方を詳しく解説します。
目次
NT-proBNPとは
NT-proBNP(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)は、心臓から分泌されるホルモンの一種です。
心臓に負担がかかると、心室の壁が引き伸ばされ、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の前駆体であるproBNPが分泌されます。proBNPは血中でBNPとNT-proBNPに分解されます。
NT-proBNPはBNPよりも血中での半減期が長く、安定して測定できるため、心不全の診断や経過観察に広く用いられています。
NT-proBNP検査でわかること
心不全の早期発見
NT-proBNP値が高い場合、心臓に何らかの負担がかかっている可能性があります。
自覚症状がない段階でも心不全のリスクを把握できるため、早期発見・早期対応につながります。息切れやむくみなどの症状がある場合は、心不全の診断に役立ちます。
心不全の重症度評価
NT-proBNP値は心不全の重症度と相関するため、治療効果の判定や経過観察にも使用されます。治療により心臓の負担が軽減されると、NT-proBNP値も低下する傾向があります。
心疾患リスクの評価
心不全だけでなく、心房細動や心筋症、弁膜症などの心疾患でもNT-proBNP値が上昇することがあります。心臓ドックなどで心疾患のスクリーニングとして活用されています。
NT-proBNP検査の基準値
| 年齢 | 基準値(pg/mL) |
|---|---|
| 50歳未満 | 450未満 |
| 50〜75歳 | 900未満 |
| 75歳以上 | 1,800未満 |
基準値は年齢によって異なり、加齢とともに上昇する傾向があります。また、腎機能が低下している場合は、排泄が遅れてNT-proBNP値が高くなることがあります。
基準値を超えた場合は心不全の可能性があり、精密検査が推奨されます。ただし、基準値内でも症状がある場合は医師に相談しましょう。
BNPとNT-proBNPの違い
BNPとNT-proBNPはどちらも心不全マーカーとして使用されますが、いくつかの違いがあります。
BNPは血中での半減期が約20分と短く、採血後速やかに測定する必要があります。一方、NT-proBNPは半減期が約120分と長く、検体の安定性が高いのが特徴です。
基準値も異なるため、検査結果を見る際は、どちらの検査を受けたかを確認することが大切です。
NT-proBNP検査を受けるべき人
以下に該当する方は、NT-proBNP検査を検討してみてください。
息切れ、動悸、むくみなどの症状がある方は、心不全の可能性を評価するために検査が有用です。
高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がある方は、心臓への負担が増加しやすいため、定期的なチェックが推奨されます。
また、心疾患の家族歴がある方や、心臓ドックを受けたい方にも適しています。
値が高かった場合の対応
NT-proBNP値が基準値を超えていた場合は、循環器内科を受診しましょう。心エコー検査(心臓超音波検査)などで心臓の状態を詳しく調べます。
心不全と診断された場合は、原因に応じた治療が行われます。高血圧や不整脈が原因であれば、その治療が心不全の改善につながります。
生活面では、塩分制限、適度な運動、禁煙、体重管理などが重要です。
まとめ
NT-proBNP検査は、心臓に負担がかかっているかどうかを血液検査で評価できる検査です。
心不全の早期発見や重症度評価、治療効果の判定に役立ちます。基準値は年齢によって異なり、腎機能の影響も受けるため、結果の解釈には注意が必要です。
息切れやむくみなどの症状がある方、生活習慣病がある方は、NT-proBNP検査を活用して心臓の健康をチェックしてみてください。










