多発性硬化症(MS: Multiple Sclerosis)は、脳や脊髄の神経を覆うミエリン鞘が免疫系の異常により破壊される自己免疫疾患です。神経の伝達が阻害されることで、運動機能や視力、感覚、平衡感覚などにさまざまな症状が現れます。
若年成人(20~40代)の発症が多く、女性に多い疾患とされ、日本では指定難病に認定されています。発症メカニズムは完全には解明されていませんが、免疫異常・遺伝的要因・環境因子が関与すると考えられています。
本記事では、多発性硬化症の原因・症状・診断・MRI検査・難病認定制度について詳しく解説します。
目次
多発性硬化症とは何か?わかりやすく解説
多発性硬化症の概要
多発性硬化症(MS)は、中枢神経(脳・脊髄)の神経線維を保護するミエリンが損傷することで、神経伝達が妨げられる疾患です。この結果、運動機能や感覚、視力などが障害されることがあります。
特徴
- 寛解(症状が落ち着く)と再発を繰り返すタイプが多い
- 症状が多様で、個人によって異なる
- 発症は20~40代が多く、女性に多い
- 難病指定されており、特定医療費の助成制度がある
多発性硬化症の原因:どのように発症するのか?
多発性硬化症の正確な発症メカニズムは解明されていませんが、免疫異常・遺伝的要因・環境因子の影響が考えられています。
1. 免疫異常
本来は外敵から体を守るはずの免疫系が誤作動を起こし、自身の神経を攻撃してしまうのが多発性硬化症の特徴です。
2. 遺伝的要因
多発性硬化症は、遺伝的素因を持つ人が発症しやすいとされています。ただし、親から直接遺伝する確率は高くなく、環境要因との関係が深いと考えられています。
3. 環境因子
発症リスクを高める要因として、以下が挙げられます。
- ウイルス感染(エプスタイン・バールウイルスなど)
- ビタミンD不足
- 喫煙
- 高緯度地域に住むこと(北米・北欧などで多発)
多発性硬化症の症状一覧:早期発見のために知っておくべき兆候
多発性硬化症の症状は障害される神経によって異なり、個人差が大きいのが特徴です。以下は代表的な症状です。
1. 視覚障害
- 視力低下(片目のみが影響を受けることが多い)
- 目の痛み(視神経炎)
- ぼやけた視界、視界の一部が欠ける
2. 運動機能の障害
- 手足のしびれ、筋力低下
- 歩行困難(足のもつれやつまずき)
- 麻痺(片側または両側)
3. 感覚異常
- 触れた感覚が鈍い
- 熱さや冷たさを感じにくい
- 針で刺されたような痛み(神経痛)
4. 疲労・倦怠感
- 長時間の活動が難しくなる
- 疲れが取れにくい
5. 認知機能・精神症状
- 集中力・記憶力の低下
- 気分の落ち込み(うつ状態)
MRIでわかる多発性硬化症:診断プロセスとその重要性
1. MRI検査の役割
多発性硬化症の診断にはMRI(磁気共鳴画像)が欠かせません。MRIでは、脳や脊髄にできた炎症の病変(脱髄病変)を視覚的に確認できます。
2. MRI検査の特徴
- 活動性のある病変は造影剤(ガドリニウム)を用いると白く映る
- 過去の病変も確認できるため、病気の進行度がわかる
- 診断の決め手になる重要な検査
多発性硬化症の難病認定について:制度とサポートの活用法
多発性硬化症は、日本では指定難病(難病法に基づく対象疾患)に認定されています。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/3806
1. 難病認定を受けるとどうなる?
- 医療費助成(特定医療費助成制度)を受けられる
- 障害者手帳の取得が可能になる場合がある
- 福祉制度(訪問看護、リハビリ支援)を利用しやすくなる
2. 難病認定を受けるための条件
- 厚生労働省の指定する診断基準を満たすこと
- 定期的な診察を受け、主治医の診断書を提出すること
- 病状が継続していることが証明されること
まとめ
多発性硬化症は、自己免疫の異常によって神経が損傷する難病であり、再発と寛解を繰り返しながら進行する特徴があります。
✅ 主な症状は視覚障害、運動障害、感覚異常、倦怠感、認知機能の低下
✅ 原因は免疫異常・遺伝・環境要因(ウイルス感染、ビタミンD不足など)
✅ MRI検査が診断の決め手となる
✅ 難病認定を受けると、医療費助成や福祉制度を活用できる
現在、多発性硬化症の治療法は進化しており、早期発見と適切な治療によって症状の進行を抑えることが可能です。疑わしい症状がある場合は、早めに神経内科を受診し、適切な検査を受けることが重要です。