「腰に重だるさがある」「長時間立っていると痛む」—こうした腰の違和感、もしかすると“すべり症”が原因かもしれません。
腰痛の原因はさまざまですが、その中でも比較的多いとされるのが「すべり症」です。特に中高年の女性に多く見られ、放っておくと慢性的な痛みや日常生活への支障につながる可能性があります。
本記事では、すべり症の特徴、症状、原因、診断方法、対処法、予防策までを包括的に解説します。正しい知識を得て、腰痛の改善と予防に役立てましょう。
目次
すべり症とは?
すべり症とは、背骨(脊椎)の一部が正常な位置からずれ、前方に滑り出してしまう状態です。特に「腰椎すべり症」が一般的で、第五腰椎と仙椎の間でよく発生します。
すべり症には主に以下の2種類があります:
腰椎分離すべり症
背骨の関節部分にヒビ(分離)が入り、その結果、骨が前方に滑ってしまう状態。若年層やスポーツをしている人に多く見られます。発症後も自覚症状が少ない場合がありますが、進行すると痛みや機能障害が顕著になります。
変性すべり症
加齢や椎間板の変性によって発症。特に中高年の女性に多く、骨や靱帯が弱くなることで生じます。ホルモンバランスの変化や骨粗しょう症などもリスク因子となります。
主な症状
すべり症の症状は進行具合や個人差がありますが、以下のような特徴があります。
腰痛
慢性的な腰の痛みが代表的な症状です。立ちっぱなしや長時間の歩行で悪化する傾向があります。天候や気圧の変化に伴い痛みが増すケースもあります。
坐骨神経痛
腰からお尻、脚にかけてのしびれや痛みが現れることがあります。神経が圧迫されることによって引き起こされます。痛みは片側に集中することが多く、しびれや感覚異常を伴います。
足の脱力感・歩行障害
重症化すると、足がもつれる・力が入りにくいといった症状も出現する可能性があります。特に階段の昇降や坂道の歩行に支障をきたすことが報告されています。
すべり症の原因
すべり症の発症にはさまざまな要因が関与しています。
加齢による変性
椎間板や関節、靱帯が年齢とともに弱くなり、骨が滑りやすくなります。骨粗しょう症や椎間板ヘルニアなどの既往歴があると発症リスクが高まります。
過度なスポーツや労働
腰に負担がかかるスポーツや重労働を続けることで、骨へのストレスが蓄積しやすくなります。特に反復動作や中腰姿勢を伴う職業は注意が必要です。
姿勢の悪さ
猫背や反り腰など、長年の姿勢の乱れが背骨に負担をかけ、すべり症の一因となることもあります。デスクワークやスマートフォン使用による姿勢不良が悪化要因になることもあります。
診断と治療法
診断方法
整形外科での問診やX線、MRI、CTスキャンなどの画像検査により診断されます。これにより骨のずれの程度や神経の圧迫状況を把握することが可能です。
保存療法
- コルセット装着:腰への負担を軽減し、姿勢をサポート
- 理学療法(リハビリ):腰回りの筋肉強化や姿勢改善を目的とした運動指導
- 鎮痛薬・湿布薬:痛みを軽減する対症療法
- 神経ブロック注射:神経痛が強い場合に行われることがあります
手術療法
保存療法で改善しない重度のケースでは、脊椎固定術や除圧術などの手術が検討されます。手術の可否は年齢や全身状態、生活への影響度によって判断されます。
日常生活での対策・予防法
正しい姿勢の維持
長時間同じ姿勢を避け、正しい立ち方・座り方を意識することが重要です。姿勢矯正用クッションやスタンディングデスクの活用も効果的です。
腰回りの筋力強化
腹筋・背筋をバランスよく鍛えることで、腰への負担を軽減できます。体幹トレーニングやピラティスなども予防に役立ちます。
適度な運動
ストレッチやウォーキングなどの軽い運動は血流を改善し、腰痛予防に役立ちます。日々の生活の中でこまめに体を動かす習慣を持つことが大切です。
体重管理
体重の増加は腰に大きな負担をかけます。適正体重の維持はすべり症の予防にもつながります。
腰の不調は早めの対応がカギ
すべり症は放置すると症状が悪化する可能性がある腰の疾患です。早期に気づき、正しい診断と治療を受けることが、快適な日常生活への第一歩です。
本記事で紹介した内容を参考に、日常の姿勢や運動習慣を見直すことで、腰痛の予防・軽減につなげていきましょう。