風邪や発熱など、体調を崩したときに血糖値が乱れることをご存知ですか?
糖尿病の人にとって、風邪や胃腸炎、インフルエンザなどで体調が悪い日は、「シックデイ(Sick Day)」と呼ばれます。このとき、通常通りの血糖コントロールが難しくなり、高血糖やケトアシドーシスなどの重大な合併症を招くおそれがあります。
この記事では、シックデイとは何か、そのリスク、正しい対応方法や予防策、医療機関を受診すべきタイミングなどをわかりやすく解説します。
目次
シックデイとは?糖尿病患者にとっての特別な日
シックデイとは、糖尿病患者が発熱、嘔吐、下痢などの体調不良を起こしている状態を指します。
このような状態では、以下のような問題が起こりやすくなります:
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ストレスホルモンの分泌増加により血糖値が上昇
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食事が摂れず、低血糖のリスクが増大
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脱水により、血糖値がさらに不安定になる
シックデイを正しく管理しないと、糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群(HHS)といった重篤な状態に陥ることがあります。
シックデイで起こりうる主な症状と変化
血糖値の乱高下
発熱や感染によるストレスで血糖が急上昇することがありますが、食事が取れずインスリンが効きすぎることで低血糖になるケースもあるため、血糖値が不安定になります。
脱水症状
嘔吐や下痢、発汗などによって体から水分が失われると、血糖値が上昇しやすくなり、尿中への糖の排出でさらに脱水が進行します。
ケトアシドーシス
特に1型糖尿病の人では、インスリンが不足すると脂肪が分解され、ケトン体が生成されることで、命に関わる状態に進行することがあります。尿や呼気に独特な甘い臭いが出ることもあります。
シックデイ時の基本対応:シックデイルールを覚えておこう
体調不良時には、普段とは異なる対応が必要です。これを「シックデイルール」として覚えておくことが重要です。
1. インスリンや薬を自己判断で止めない
「食べられないから薬を飲まなくていい」と考えるのは危険です。血糖値は食事をしなくても上昇することがあります。必ず医師の指示を確認しましょう。
2. 血糖値とケトン体の頻回チェック
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血糖値は4〜6時間ごとに確認
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可能であれば尿ケトン検査も行いましょう(特に1型糖尿病)
3. 水分をしっかり補給する
脱水予防のために、1時間あたり100〜200mlの水分補給を目安にします。食事が取れない場合でも、水分に少量の糖分と塩分を含ませると吸収が良くなります。
4. 食事が摂れないときの対応
無理に固形物を摂らず、お粥、スポーツドリンク、りんごジュース、経口補水液などを活用し、エネルギーを確保します。炭水化物15g=血糖値1回分の目安とされています。
医療機関を受診すべきサイン
次のような症状がある場合は、早急に医療機関を受診する必要があります。
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持続する嘔吐や下痢で食事・水分が取れない
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血糖値が300mg/dL以上または70mg/dL以下が続く
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呼吸が速く、尿や息が甘酸っぱい臭い
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尿ケトン体陽性
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発熱が38.5℃以上で改善しない
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意識がもうろうとしている
シックデイに備えるために:準備と日常管理のポイント
日頃からの準備
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シックデイ用の食事・飲料(スポーツドリンク、ゼリー、経口補水液など)を常備
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尿ケトン検査紙を用意しておく
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医師に事前に相談し、シックデイ時の薬の調整について確認しておく
家族や周囲への共有
急な体調不良に備えて、家族や周囲にも「糖尿病であること」「シックデイ時の対応」を伝えておくと、安心です。
シックデイは「知っていれば防げるリスク」
糖尿病の管理は日々の生活が基本ですが、体調不良時には特別な対応=シックデイルールが必要になります。
「シックデイ=ただの風邪」ではなく、命に関わる血糖変動のリスクがある重要なタイミングだという認識を持ちましょう。
普段から備えと知識を持っておくことで、万一の際にも冷静に対応できます。糖尿病と向き合う日々の中で、シックデイ対策も大切な一歩です。