腹部CT検査とは?造影CT・単純CTの違いと発見できる病気を解説

腹部CT検査は、X線を使ってお腹の中の臓器を断層画像として撮影する検査です。

肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、胆嚢、腸管などの状態を詳細に観察でき、がんや結石、炎症などさまざまな疾患の発見に役立ちます。

本記事では、腹部CT検査の種類(造影CT・単純CT)、発見できる病気、検査の流れ、被曝量について詳しく解説します。

腹部CT検査とは

CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)検査は、X線を使って体の断面を撮影する画像診断法です。腹部CT検査では、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、胆嚢、副腎、腸管、腹部大動脈など、お腹の中の多くの臓器を一度に観察できます。

超音波検査(エコー)では見えにくい部位や、より詳細な情報が必要な場合に実施されます。また、臓器の大きさ、形、内部の性状、周囲の組織との関係を立体的に把握することができます。

人間ドックのオプション検査として、またはエコー検査で異常が見つかった場合の精密検査として行われることが多い検査です。

単純CTと造影CTの違い

腹部CT検査には、造影剤を使用しない「単純CT」と、造影剤を使用する「造影CT」の2種類があります。

単純CTは造影剤を使用しないため、アレルギーの心配がなく、腎機能が低下している方でも受けられます。結石の検出や出血の確認、臓器の大まかな評価に適しています。

造影CTは、造影剤を静脈から注入しながら撮影します。造影剤によって血管や臓器のコントラストが強調されるため、腫瘍の検出や血管の評価、炎症の範囲の特定などに優れています。より詳細な診断が必要な場合は造影CTが選択されます。

腹部CT検査の流れ

腹部CT検査は、放射線科で行われます。検査時間は単純CTで5〜10分、造影CTで15〜20分程度です。

まず、金属類(アクセサリー、ベルトなど)を外し、検査着に着替えます。CT装置の寝台に仰向けに寝て、息を止める指示に従いながら撮影を行います。

造影CTの場合は、検査前に点滴のルートを確保し、撮影時に造影剤を注入します。造影剤注入時に体が熱くなる感覚がありますが、これは正常な反応で数分で治まります。検査後は造影剤を排泄するために、水分を多めに摂ることが推奨されます。

腹部CT検査でわかる病気

腹部CT検査では、腹部の多くの臓器の異常を検出することができます。

肝臓がん、腎臓がん、膵臓がん、胆嚢がん、大腸がんなどの悪性腫瘍のほか、肝嚢胞、腎嚢胞、胆石、腎結石、尿管結石、膵炎、大動脈瘤、腹水なども発見できます。

CT検査は、がんの早期発見だけでなく、がんの進行度(ステージ)の評価や、治療効果の判定にも重要な役割を果たしています。

肝臓の病気

CT検査では、肝臓がん(肝細胞がん)、転移性肝がん、肝嚢胞、肝血管腫などを検出できます。

造影CTでは、肝臓がんに特徴的な造影パターン(早期相で造影され、後期相で造影が抜ける)を確認することで、診断精度が向上します。

脂肪肝や肝硬変の程度も評価でき、慢性肝疾患の経過観察にも活用されます。

腎臓の病気

腎臓がん、腎嚢胞、腎結石、水腎症、腎梗塞などがCT検査で発見されます。

腎臓がんは初期には症状が出にくいため、CT検査で偶然発見されることも多い疾患です。造影CTでは腫瘍の血流や周囲への広がりを詳細に評価できます。

腎結石はCTで非常によく描出され、結石の大きさや位置、尿管への影響を正確に把握できます。

膵臓の病気

膵臓がん、膵嚢胞、膵炎、膵管拡張などがCT検査で評価できます。

膵臓がんは早期発見が難しいがんの一つですが、造影CTは膵臓がんの検出に最も有用な画像検査とされています。腫瘍の大きさ、周囲血管への浸潤、リンパ節転移の有無などを評価し、手術可能性の判断に役立てます。

膵臓は後腹膜に位置するため超音波検査では観察しにくいことがあり、CT検査の重要性が高い臓器です。

その他の臓器

腹部CT検査では、胆嚢(胆石、胆嚢炎、胆嚢がん)、脾臓(脾腫、脾梗塞)、副腎(副腎腫瘍)、腹部大動脈(大動脈瘤、大動脈解離)なども評価できます。

また、大腸がんや虫垂炎、腸閉塞などの消化管の病気も発見されることがあります。腹部全体を一度に評価できることがCT検査の大きなメリットです。

被曝量について

CT検査はX線を使用するため、わずかながら被曝があります。腹部CT1回あたりの被曝量は約10〜20ミリシーベルト(mSv)程度とされています。

これは、日本人が1年間に自然界から受ける放射線量(約2.1mSv)の5〜10倍程度に相当します。ただし、この程度の被曝量で健康への悪影響が生じる可能性は極めて低いとされています。

検査による被曝のリスクよりも、病気を早期に発見することのメリットの方が大きいと考えられる場合に検査が行われます。被曝量が気になる方は、医師に相談してください。

造影剤の注意点

造影CTで使用するヨード造影剤には、いくつかの注意点があります。

ヨードアレルギーがある方、重度の腎機能障害がある方、甲状腺機能亢進症の方は、造影剤が使用できないことがあります。また、過去に造影剤で副作用が出たことがある方も注意が必要です。

造影剤の副作用として、吐き気、かゆみ、じんましん、まれにアナフィラキシーショックなどが起こることがあります。検査前に問診で確認し、リスクがある場合は単純CTに変更するか、十分な対策を講じたうえで検査を行います。

検査前の準備と注意事項

腹部CT検査を受ける際は、いくつかの準備が必要です。

検査前4〜6時間は絶食が必要です。水やお茶などの透明な飲み物は摂取可能な場合が多いですが、医療機関の指示に従ってください。

造影CTの場合は、問診票で既往歴やアレルギーの有無を確認します。糖尿病の薬(特にメトホルミン)を服用している方は、検査前後に服用を中止する必要がある場合があります。妊娠中または妊娠の可能性がある方は、必ず事前に申し出てください。

まとめ

腹部CT検査は、単純CTと造影CTの2種類があり、肝臓、腎臓、膵臓などの腹部臓器を詳細に観察できる検査です。

がんや結石、炎症などさまざまな疾患の発見に役立ち、特に膵臓がんなど超音波では見えにくい部位の検査に優れています。被曝や造影剤の副作用というリスクはありますが、病気の早期発見によるメリットが上回る場合に実施されます。

人間ドックで腹部CT検査をオプションで追加することで、より詳細な健康チェックが可能です。気になる症状がある方や、精密検査が必要と言われた方は、医療機関で相談することをおすすめします。