「プール熱」という呼び名でも知られる咽頭結膜熱は、夏場に流行しやすい感染症です。主に子どもに多い病気として知られていますが、大人も感染することがあり、特に免疫力が落ちているときには症状が重くなる傾向があります。大人が発症すると仕事や家庭生活に支障をきたすことも多く、社会的にも注意が必要です。
この記事では、咽頭結膜熱の基本的な特徴、大人の症状や原因、潜伏期間、そして予防のためにできることを詳しく解説します。感染拡大を防ぐための生活上の工夫についても触れています。
目次
咽頭結膜熱とは?
咽頭結膜熱は、アデノウイルスによって起こる感染症の一つで、発熱、咽頭炎、結膜炎を特徴とします。特に夏場にプールでの感染が多いため「プール熱」と呼ばれていますが、必ずしもプールだけが原因ではなく、飛沫や接触を通じても感染します。
子どもと大人の違い
子どもでは比較的軽症で済むことが多いのに対し、大人は免疫反応が強く出ることで高熱や全身の倦怠感が強くなる傾向があります。さらに、大人の場合は仕事や家事など日常生活に直結するため、社会的な影響が大きい点も見逃せません。
咽頭結膜熱の症状
典型的な三大症状は発熱・咽頭痛・結膜炎です。ですが、実際にはそれ以外の症状も現れることがあり、体全体に強い影響を与えることがあります。
大人に見られる症状の特徴
大人では38℃以上の高熱が3〜5日間続くことが多く、頭痛や関節痛、全身の強い倦怠感が加わります。また、結膜炎の症状は目の充血、かゆみ、涙や膿性の目やにが典型的で、視界がかすむこともあります。症状が重い場合は、パソコン作業や車の運転が困難になることもあります。
症状の経過と合併症
初期にはのどの痛みや発熱から始まり、その後目の症状が出ることが多いです。全身症状は1週間ほどで改善しますが、眼症状は長引き、結膜炎が慢性化したり、角膜炎を併発することがあります。まれに中耳炎や気管支炎などを合併する例も報告されています。
咽頭結膜熱の原因
原因となるのはアデノウイルス3型、4型、7型などです。アデノウイルスは非常に感染力が強く、環境中でも長く生存するため、一度流行が始まると短期間に多くの人に広がる傾向があります。
感染経路
- 飛沫感染:咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことで感染
- 接触感染:ドアノブやタオルなどを介してウイルスが手に付き、目や口から侵入
- 水を介した感染:不適切に消毒されたプールや浴場での感染
大人では、家庭内で子どもから感染するケースが多く見られます。また、職場などの集団生活の場でも集団感染を引き起こす可能性があります。
咽頭結膜熱の潜伏期間
潜伏期間は5〜7日程度とされています。この間は症状がなくても体内ではウイルスが増えており、発症前から周囲に感染を広げてしまうこともあります。大人が感染すると、発症後に長期の療養が必要となるケースが多く、職場や家庭に与える影響も大きいため、潜伏期間から感染を疑うことが大切です。
大人が感染した場合の注意点
大人が咽頭結膜熱にかかると症状が重く、治癒までの時間がかかることがあります。特に眼症状は長引きやすく、視力への影響も懸念されるため注意が必要です。
医療機関を受診すべき目安
- 38℃以上の発熱が3日以上続く
- のどの痛みで食事や水分がとれない
- 目の充血や痛みが強く、視界に影響が出ている
- 強い倦怠感で日常生活に支障をきたしている
治療と回復のポイント
咽頭結膜熱には特効薬がないため、治療は解熱剤や鎮痛剤、点眼薬などの対症療法が中心です。十分な休養と水分補給が回復の鍵になります。加えて、感染力が強いため、発症後は学校や職場を休み、周囲への感染拡大を防ぐことが大切です。
予防策と家庭内での工夫
咽頭結膜熱は感染力が強い一方で、日常生活の工夫である程度予防することができます。
感染予防の基本
- こまめな手洗いとアルコール消毒を習慣化する
- タオルや洗面用具を家族と共用しない
- プールや浴場では衛生管理が行き届いた施設を利用する
家庭内感染を防ぐ工夫
家庭内で子どもが発症した場合、看病する大人がマスクや手袋を着用する、使用した食器やタオルを分ける、部屋をよく換気するなどの工夫が効果的です。免疫力が落ちている大人は特に注意が必要です。
まとめ
咽頭結膜熱は子どもに多い病気として知られていますが、大人が感染すると症状が強く長引くことが少なくありません。原因はアデノウイルスで、潜伏期間は5〜7日。発症すると高熱や眼症状に悩まされ、仕事や生活に大きな影響を及ぼします。
- 発熱・咽頭痛・結膜炎がそろったら早めに受診すること
- 潜伏期間中も感染力があるため、周囲への配慮が必要
- 手洗いやタオルの使い分けなど日常生活の工夫で予防が可能
「ただの夏風邪」と見過ごさず、正しい知識をもとに行動することで、自分や周囲を守ることができます。