不整脈は「脈が乱れる」状態の総称で、脈が飛ぶ・ドクンとする・速くなる・遅くなるといった形で現れます。不整脈の中には生命に危険のないものから、突然死につながる重篤なものまで多様な種類があります。日本では心房細動だけで推計100万人以上が罹患しているとされており、加齢とともに有病率が増加する疾患です。本記事では、不整脈の主な種類・症状・原因・検査・治療法をわかりやすく解説します。
目次
不整脈の種類|頻脈・徐脈・期外収縮・心房細動
不整脈は発生部位(心房性・心室性)と脈のリズムパターン(速い・遅い・不規則)によって分類されます。
期外収縮(脈が飛ぶ・ドクンとする)
最も頻度の高い不整脈で、本来の拍動の前に心臓が「余分な収縮」をします。直後に一時停止が生じ、「ドクン」「ドキッ」「脈が飛んだ」という感覚として自覚されます。心室性期外収縮(PVC)は健常者でも1日数百〜数千回みられることがあり、基礎心疾患がなく、1日5,000回以下の単発の場合は経過観察でよいとされます。ただし連続して起こる・運動中に増える・基礎心疾患がある場合は精査が必要です。
心房細動(AF)
心房が毎分350〜600回と細かく震える(細動)ことで、脈が不規則かつ速くなります。脳梗塞の最大のリスク因子であり、心房内に血栓が形成されやすく、これが脳血管に飛ぶと脳塞栓を引き起こします。心房細動患者の脳梗塞リスクは非AF者の5倍とされ、抗凝固薬による予防が必須です。動悸・息切れ・疲れやすさが主な症状ですが、無症状で健康診断の心電図で偶然発見されることもあります。
発作性上室性頻拍(SVT)
突然始まって突然止まる急速な脈拍(150〜200回/分)が特徴です。WPW症候群(副伝導路による頻拍)やAVNRT(房室結節回帰頻拍)が代表的です。動悸・めまい・失神を伴うことがあり、頸動脈洞マッサージや息をこらえる迷走神経刺激法で停止することがあります。根治にはカテーテルアブレーションが有効です。
心室頻拍・心室細動(生命に危険)
心室頻拍(VT)・心室細動(VF)は緊急を要する不整脈です。心臓が正常に血液を送り出せなくなるため、意識消失・心停止に至ります。電気的除細動(AED)による早急な治療が必要で、発見から5分以内の除細動が生存率を大幅に高めます。基礎心疾患(陳旧性心筋梗塞・肥大型心筋症・ブルガダ症候群など)を持つ方に多く発生します。
徐脈(脈が遅い)
洞不全症候群・房室ブロックなどにより脈拍が1分間50回未満まで低下すると、倦怠感・めまい・失神・息切れが現れます。薬物(β遮断薬・カルシウム拮抗薬)が原因となることもあります。重症な徐脈にはペースメーカーの植え込みが必要です。
不整脈の主な原因
不整脈の原因は多岐にわたります。加齢による心臓電気系統の変化・高血圧・虚血性心疾患・心筋症・弁膜症などの基礎心疾患が最も多い原因です。
生活習慣面ではカフェイン過剰摂取・過度の飲酒・喫煙・睡眠不足・過度のストレス・電解質異常(低カリウム血症など)が不整脈を誘発・悪化させることが知られています。甲状腺機能亢進症(バセドウ病)が頻脈性不整脈の原因となることもあります。
不整脈の検査方法
安静時心電図
健康診断や外来で行う標準的な検査ですが、検査中に不整脈が出ていなければ異常を捉えられません。
ホルター心電図(24〜72時間心電図)
小型の心電図記録器を装着したまま日常生活を送り、長時間の心電図を記録します。一過性・発作性の不整脈の検出に最も有用な検査で、期外収縮の頻度・心房細動の有無・夜間の徐脈などが評価できます。
心臓電気生理学的検査(EPS)
カテーテルを心臓内に挿入して電気刺激を加え、不整脈を意図的に誘発して発生機序を調べる精密検査です。アブレーション治療の計画に用いられます。
不整脈の治療法
薬物療法
心房細動の心拍数コントロールにはβ遮断薬・カルシウム拮抗薬が、リズムコントロールには抗不整脈薬(フレカイニド・アミオダロンなど)が用いられます。脳梗塞予防にはDOAC(直接経口抗凝固薬:アピキサバン・リバーロキサバン・エドキサバン等)が推奨されています。
カテーテルアブレーション(根治治療)
カテーテルを用いて不整脈の原因となる心筋組織を焼灼(アブレーション)する根治的治療法です。心房細動の肺静脈隔離術・WPW症候群の副伝導路焼灼・SVTの根治に高い成功率を誇ります。手術時間は2〜4時間で、多くの施設で日帰りまたは数日の入院で対応しています。
ペースメーカー・ICD
徐脈性不整脈にはペースメーカーが、致死的不整脈(VT・VF)のリスクが高い患者には植込み型除細動器(ICD)が用いられます。ICDは致死的不整脈を感知すると自動的に電気ショックを与えて正常リズムを回復させます。
アルコール・カフェインと不整脈の関係
飲酒は心房細動のリスクを高めることが多くの研究で示されており、大量飲酒後に心房細動が発症する「ホリデーハート症候群」は有名な概念です。コーヒー・エナジードリンクのカフェインについては、適量(1日3〜4杯程度)では不整脈リスクを増加させないとする研究が多いですが、大量摂取・敏感な体質の方は注意が必要です。
まとめ
不整脈には「経過観察でよいもの」から「治療が必要なもの」まで幅広い種類があります。「脈が飛ぶ」「ドキドキする」などの症状が続く・失神・急激な息切れを伴う場合は、内科・循環器内科を受診してホルター心電図などの検査を受けてください。心房細動は無症状でも脳梗塞リスクが高いため、健康診断で指摘された場合は必ず循環器専門医に相談しましょう。










