急性腎盂腎炎の初期症状とは?高熱や背中の激痛と受診の目安

「数日前から排尿痛や残尿感があったのに、突然ガタガタと震えが止まらない悪寒とともに38度〜39度以上の高熱が出た」「右(または左)の背中や腰がズキズキと激しく痛み、前かがみにならないと歩けない」「背中や脇腹をトントンと軽く叩かれた瞬間、飛び上がるほどの激痛が走る」と耐え難い苦痛に襲われていませんか。

女性に極めて多い「膀胱炎」ですが、排尿時の違和感を「忙しいから」「水分を多めに取れば自然に治るだろう」と市販薬でごまかして放置している方が非常に多く見受けられます。

しかし、膀胱の中で増殖した細菌が、尿管をよじ登って命のフィルターである腎臓の奥深く(腎盂・腎実質)にまで侵入して感染爆発を起こす急性の重症感染症が「急性腎盂腎炎(きゅうせいじんうじんえん)」です。

解剖学的に尿道が短く細菌が侵入しやすい20〜40代の女性や、前立腺肥大症のある高齢男性に多発します。

急性腎盂腎炎は単なる風邪や腰痛とは全く異なり、一刻を争う緊急疾患です。放置すると細菌や毒素が腎臓の毛細血管から全身の血流へと溢れ出し、血圧が急降下して多臓器不全に陥る『尿路性敗血症(Urosepsis)』を引き起こし、数時間から半日で命を落とす重大な命の危機に直面します。

この記事では、急性腎盂腎炎の初期症状、背中を叩くと激痛が走るCVA叩打痛の正体、膀胱炎との決定的な見分け方、そして直ちに病院を受診すべき救急基準について専門医が詳しく解説します。

急性腎盂腎炎とは?細菌が膀胱から腎臓へよじ登る「上行性感染」

健康な尿路(腎臓から尿管、膀胱、尿道)は、尿が上から下へと常に洗い流されているため無菌状態に保たれています。

原因菌の約80%以上は、自分自身の腸内に棲んでいる常在菌である「大腸菌(E. coli)」です。

排便時や性交渉、疲労による免疫力低下、トイレを我慢することなどをきっかけに、肛門周囲の大腸菌が尿道から膀胱へと侵入して膀胱炎を引き起こします。

膀胱炎の段階で適切に抗菌薬で退治されないと、細菌は尿の流れに逆らって細い尿管をグングンと上行し、尿が集まる「腎盂(じんう)」から尿を作る「腎実質」へと到達します。

腎臓は全身の血液の約4分の1が常に流れ込む血管の塊であるため、腎臓の中で細菌が爆発的に増殖して激しい化膿性炎症を起こすと、細菌毒素が一気に血中へ吹き出して38度超の高熱と激しい背部痛が炸裂するのです。

【鑑別比較表】単なる膀胱炎と危険な急性腎盂腎炎の違い一覧

日本感染症学会および日本泌尿器科学会のガイドラインに基づく決定的な鑑別ポイントです。

チェック項目 急性膀胱炎(膀胱だけの浅い感染) 急性腎盂腎炎(腎臓まで達した重症感染)
発熱の有無 発熱は絶対にない(平熱)。微熱すら出ない。 38℃〜39℃以上の高熱、ガタガタ震える悪寒戦慄。
痛む場所 排尿の終わりの下腹部痛、しみるような排尿痛。 背中、腰、側腹部(左右どちらか片側)の激痛。
背中を叩いた時の反応 背中を叩いても全く痛くない(陰性)。 肋骨と背骨の境目を叩くと飛び上がる激痛(CVA叩打痛陽性)。
全身症状 局所の排尿不快感のみ。食欲や元気はある。 激しい全身倦怠感、吐き気、嘔吐、関節痛、食欲不振。
治療の緊急度 外来で内服抗菌薬を3〜5日間服用で完治。 緊急入院が基本。強力な抗菌薬の点滴投与が必須。

自己診断の決定打「肋骨脊柱角叩打痛(CVA叩打痛)」

急性腎盂腎炎を診察する際、医師が必ず行う最も有名な身体診察所見です。

背中の後ろ側、最も下の肋骨(第12肋骨)と背骨が交差する角度(Costovertebral Angle:CVA)の場所に手のひらを当て、その上からもう片方の手の握りこぶしで「トントン」と軽く叩きます。

炎症で腫れ上がった腎臓の被膜が叩かれた振動で瞬間的に引き伸ばされるため、電気が走ったように「ウッ!」と声を上げて飛び上がる激痛が再現されるのが特徴です。

左右どちらかの背中を軽く叩いて激痛が走る場合は、ほぼ100%腎盂腎炎と断定されます。

最も恐ろしい合併症「尿路性敗血症(Urosepsis)」

腎臓に巣食った細菌が血液の中へと雪崩れ込むと、敗血症性ショックを引き起こします。

手足が冷たくなり、血圧が収縮期90mmHg以下に急低下し、呼吸が荒くなり、意識が朦朧としてきます。

特に糖尿病をお持ちの方や高齢者、尿路結石で尿の流れがせき止められている(閉塞性腎盂腎炎)場合は、数時間で敗血症へと急変して命を落とす危険性が跳ね上がります。

疑ったら迷わず「救急外来・泌尿器科」を受診しよう

急性腎盂腎炎は、市販の解熱剤や漢方薬で様子を見て治る病気ではありません。

直ちに医療機関を受診し、尿検査(白血球尿・細菌尿の確認)、血液検査(白血球やCRPの上昇)、血液培養検査、腹部CT検査を受けましょう。

高熱や脱水、嘔気がある場合は即日入院となり、原因菌を叩くための広域抗菌薬(セフェム系やキノロン系)を1日2〜3回、持続点滴で投与します。

「膀胱炎の後に高熱と背中の痛みが出た」と感じたら夜間や休日であっても朝を待たず、迷わず救急医療機関を受診してください。