尿沈渣(にょうちんさ)と聞かれてどんな検査で何が分かるのか、と聞かれたらみな??となると思います。
今回は、あまり聞き慣れない尿沈渣の検査について、そもそも尿沈渣とは、尿沈渣の検査でわかることや基準値の一覧、尿検査との違いについて詳しく解説していきます。
目次
尿沈渣とは?
尿沈渣(にょうちんさ)とは、尿を遠心分離して得られる沈殿物を顕微鏡で観察し、細胞、結晶、バクテリアなどの微細な成分を調べる検査のことです。
この検査は、腎臓や尿路の疾患を診断するために非常に重要です。
尿沈渣は、尿一般検査の一部として行われることが多く、特に異常が検出された場合に詳細な分析を行うことで、病気の早期発見や治療に役立ちます。
尿沈渣検査は、以下の手順で行われます:
- 尿の採取:まず、患者から尿を採取します。通常、朝一番の尿が最も濃縮されており、検査に適しています。
- 遠心分離:採取した尿を遠心分離機にかけ、尿の中の成分を沈殿させます。
- 顕微鏡観察:沈殿物を顕微鏡で観察し、細胞や結晶、バクテリアなどの有無や種類を確認します。
尿沈渣の基準値の一覧は?
尿沈渣検査の結果は、以下の成分について評価されます。各成分の基準値は以下の通りです。
- 赤血球(RBC):正常では0〜4個/HPF(高倍視野)
- 白血球(WBC):正常では0〜4個/HPF
- 上皮細胞:正常では少量
- 円柱:
- ヒアルロン酸円柱:正常では少量
- 顆粒円柱、赤血球円柱、白血球円柱など:正常では見られない
- 結晶:種類によって異なる(例:尿酸結晶、シュウ酸カルシウム結晶など)
- バクテリア:正常では見られない
- 酵母:正常では見られない
- トリコモナス:正常では見られない
これらの成分の異常が見られた場合、それぞれの成分に関連する病気の可能性が示唆されます。
尿沈渣のアトラスとは何?
尿沈渣のアトラスとは、尿沈渣検査において観察される様々な細胞、結晶、バクテリアなどの顕微鏡写真やイラストを集めた図鑑のことです。
アトラスは、臨床検査技師や医師が尿沈渣の結果を正確に判読するための参考資料として使用されます。
尿沈渣アトラスには、以下のような情報が含まれています:
- 正常な尿沈渣成分の写真:基準値範囲内の成分の写真やイラスト
- 異常な成分の写真:病的な成分の写真やイラスト、例えば、赤血球円柱やバクテリア
- 成分の特徴:各成分の形態学的特徴や出現する病気の説明
アトラスは、尿沈渣検査の結果を正確に解釈するための重要なツールであり、臨床診断において非常に有用です。
尿沈渣でわかる病気について知りたい
尿沈渣検査を通じて検出される異常は、さまざまな病気の診断に役立ちます。
以下に、尿沈渣検査でわかる主な病気を挙げます。
1. 腎臓疾患
- 急性腎炎:赤血球や赤血球円柱が見られる
- 慢性腎炎:ヒアルロン酸円柱や顆粒円柱が見られる
- 急性腎不全:顆粒円柱や細胞円柱が見られる
- 慢性腎不全:ヒアルロン酸円柱や顆粒円柱が多く見られる
2. 尿路感染症
- 膀胱炎:白血球やバクテリアが見られる
- 腎盂腎炎:白血球、白血球円柱、バクテリアが見られる
3. 尿路結石
- シュウ酸カルシウム結晶や尿酸結晶が見られることが多い
4. 糖尿病
- ケトン体が見られることがあり、糖尿病性ケトアシドーシスの診断に役立つ
5. 膠原病
- 白血球円柱や顆粒円柱が見られることがある
尿沈渣検査は、これらの疾患の早期発見や診断に非常に重要な役割を果たします。
尿沈渣と尿検査の違いは?
尿沈渣検査と尿検査(一般的な尿検査)は、いくつかの重要な点で異なります。
尿検査
- 方法:尿を化学的および物理的に分析
- 目的:尿の色、濁り、比重、pH、タンパク質、糖、ケトン体、血液などを調べる
- 利点:迅速で簡便、広範な情報を提供
尿沈渣検査
- 方法:尿を遠心分離し、沈殿物を顕微鏡で観察
- 目的:尿中の細胞、結晶、バクテリア、円柱などの微細成分を調べる
- 利点:詳細な情報を提供、腎臓や尿路の微細な異常を検出
両者の違いについて
尿検査と尿沈渣検査は、相補的に用いることで、より正確な診断情報を提供します。
一般的な尿検査で異常が見つかった場合、尿沈渣検査を追加して詳細な分析を行うことが一般的です。
これにより、より早期に病気を発見し、適切な治療を行うことが可能になります。
まとめ
尿沈渣検査は、腎臓や尿路の疾患を早期に発見し、適切な治療を行うための重要な検査です。
尿一般検査と併用することで、より詳細な診断情報を得ることができ、患者の健康管理に大いに役立ちます。
定期的な尿検査と必要に応じた尿沈渣検査を行うことで、健康を維持し、病気の早期発見と予防に努めましょう。