ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に住み着く細菌で、胃がんや胃潰瘍の主要な原因として知られています。
日本人の約50%がピロリ菌に感染しているとされ、特に50歳以上の世代では感染率が高くなっています。
ピロリ菌検査で感染が確認された場合は、除菌治療を行うことで胃がんのリスクを大幅に低下させることができます。
本記事では、ピロリ菌検査の種類と方法、除菌治療について詳しく解説します。
目次
ピロリ菌とは?胃に住み着く細菌の正体
ピロリ菌の正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ」といい、らせん形をした細菌です。
強酸性の胃の中でも生存できる唯一の細菌として知られ、胃の粘膜層に住み着いて長期間にわたり感染を続けます。
ピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を産生し、胃の中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解します。
このアンモニアによって周囲の胃酸を中和し、自らを守りながら生存しています。
感染は主に幼児期に起こり、家族間(特に母親から子供へ)で感染が広がることが多いとされています。
一度感染すると、除菌治療を行わない限り自然に消えることはほとんどありません。
ピロリ菌感染による病気と胃がんリスク
ピロリ菌に感染すると、さまざまな胃の病気を引き起こすリスクが高まります。
胃がんの約99%はピロリ菌感染が関与していると報告されており、感染の有無を知ることは非常に重要です。
慢性胃炎・萎縮性胃炎
ピロリ菌感染により、胃粘膜に慢性的な炎症が起こります。
長期間の感染が続くと、胃粘膜が薄くなる萎縮性胃炎へと進行します。
萎縮性胃炎は胃がんの前段階とされ、定期的な経過観察が必要です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
ピロリ菌感染者は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発症するリスクが高くなります。
除菌治療を行うことで、潰瘍の再発率を大幅に低下させることができます。
胃がん
ピロリ菌感染は、胃がん発症の最大のリスク因子です。
感染していない人と比較して、胃がんの発症リスクは約5〜10倍高くなります。
ただし、感染者全員が胃がんになるわけではなく、除菌治療によりリスクを低減できます。
胃MALTリンパ腫
まれな疾患ですが、胃の粘膜に発生するMALTリンパ腫もピロリ菌感染と関連しています。
初期のMALTリンパ腫は、除菌治療だけで寛解することがあります。
ピロリ菌検査の種類と特徴
ピロリ菌検査には、内視鏡を使う方法と使わない方法があります。
検査の目的や状況に応じて最適な方法が選択されます。
尿素呼気試験(UBT)
尿素呼気試験は、最も精度が高く広く行われている検査方法です。
検査薬(13C標識尿素)を服用し、その後の呼気を採取して分析します。
ピロリ菌が存在すると、検査薬が分解されて呼気中の二酸化炭素濃度が上昇します。
痛みがなく、約20分程度で検査が完了するため、負担の少ない検査です。
便中ピロリ菌抗原検査
便の中に含まれるピロリ菌の抗原を検出する検査です。
自宅で採便できるため、来院回数を減らすことができます。
尿素呼気試験と同様に高い精度を持ち、現在の感染状態を正確に反映します。
血中抗体検査(血清抗体法)
血液中のピロリ菌に対する抗体を測定する検査です。
健康診断や人間ドックでよく行われる方法で、採血だけで検査できます。
ただし、除菌後も抗体が残存するため、現在の感染状態を判断するには注意が必要です。
過去の感染歴を含めたスクリーニングに適しています。
尿中抗体検査
尿中に排泄されるピロリ菌抗体を検出する検査です。
採血の必要がなく、簡便に行えるスクリーニング検査として利用されます。
内視鏡検査を用いた方法
胃カメラ検査時に胃粘膜の一部を採取し、ピロリ菌の有無を調べる方法もあります。
迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法などがあり、胃カメラ検査と同時に行えます。
胃粘膜の状態も直接確認できるため、萎縮の程度や病変の有無も評価できます。
ピロリ菌検査の流れと注意事項
ピロリ菌検査を正確に行うためには、検査前の準備と注意事項を守ることが重要です。
検査前の注意点
尿素呼気試験を受ける場合は、検査当日の朝食を抜いて空腹状態で臨みます。
また、プロトンポンプ阻害薬(PPI)などの胃酸分泌抑制薬を服用していると、結果に影響を与える可能性があります。
検査の2週間前から服用を中止するよう指示されることがあるため、事前に医師に相談してください。
検査結果の判定
検査結果は「陽性」または「陰性」で判定されます。
陽性の場合はピロリ菌に感染していることを示し、除菌治療の対象となります。
陰性の場合は現在感染していないことを示しますが、過去に除菌治療を受けた方は別の検査で確認することがあります。
ピロリ菌除菌治療の方法と流れ
ピロリ菌感染が確認された場合は、抗菌薬と胃酸分泌抑制薬を組み合わせた除菌治療を行います。
保険適用で治療を受けることができます。
一次除菌療法
一次除菌では、3種類の薬を1週間服用します。
プロトンポンプ阻害薬(PPI)またはカリウムイオン競合型酸分泌抑制薬(P-CAB)、アモキシシリン(抗菌薬)、クラリスロマイシン(抗菌薬)の組み合わせが標準的です。
一次除菌の成功率は約70〜80%とされています。
二次除菌療法
一次除菌で除菌できなかった場合は、二次除菌を行います。
クラリスロマイシンの代わりにメトロニダゾールを使用し、同様に1週間服用します。
二次除菌までの成功率は約95%以上に達します。
除菌治療の注意点
除菌治療中は、処方された薬をすべて飲み切ることが重要です。
途中で服用を中止すると、除菌に失敗するだけでなく、耐性菌が出現するリスクがあります。
副作用として、下痢、軟便、味覚異常、発疹などが現れることがありますが、多くは軽度で治療終了後に改善します。
除菌判定
除菌治療終了後、4週間以上経過してから除菌判定検査を行います。
尿素呼気試験または便中抗原検査で、除菌が成功したかどうかを確認します。
除菌後の経過観察と胃がん検診
ピロリ菌の除菌に成功しても、定期的な胃がん検診を続けることが重要です。
除菌により胃がんリスクは低下しますが、完全にゼロになるわけではありません。
特に、除菌前に萎縮性胃炎が進行していた方は、除菌後も胃がんの発症リスクが残ります。
年に1回程度の胃カメラ検査を継続し、胃の状態を定期的に確認することが推奨されます。
除菌治療を早期に行うほど、胃がん予防効果が高いとされているため、検査でピロリ菌感染が分かったら早めに除菌治療を受けることをおすすめします。
まとめ
ピロリ菌検査は、胃がんや胃潰瘍の原因となるピロリ菌感染を発見するための重要な検査です。
尿素呼気試験や便中抗原検査は精度が高く、痛みなく検査を受けることができます。
血中抗体検査は健康診断でのスクリーニングに適しています。
ピロリ菌に感染していた場合は、抗菌薬と胃酸分泌抑制薬による除菌治療を行います。
除菌治療により胃がんのリスクを大幅に低下させることができますが、除菌後も定期的な胃がん検診を継続することが大切です。
特に50歳以上の方や、胃がんの家族歴がある方は、一度ピロリ菌検査を受けることをおすすめします。
感染が分かったら早めに除菌治療を受け、胃の健康を守りましょう。










