リウマチ検査とは?RF・抗CCP抗体など関節リウマチの診断を徹底解説

関節リウマチは、関節の痛みや腫れ、変形を引き起こす自己免疫疾患で、早期診断と治療が極めて重要です。リウマチ検査は、関節リウマチや膠原病の診断、病状評価、治療効果の判定に欠かせない検査です。本記事では、リウマチ検査の基礎知識、RF(リウマトイド因子)や抗CCP抗体などの主要な検査項目、診断基準、関節リウマチの症状と治療、そして早期発見の重要性まで詳しく解説します。リウマチ検査を正しく理解して、早期診断と適切な治療につなげましょう。

関節リウマチとは

リウマチ検査を理解するために、まず関節リウマチの基本的な知識を知ることが重要です。

関節リウマチの原因と特徴

関節リウマチ(RA)は、自己免疫の異常により、自分の関節を攻撃してしまう慢性の炎症性疾患です。本来外敵から体を守るはずの免疫系が、誤って自分の関節の滑膜を攻撃し、炎症を引き起こします

関節リウマチは30代から50代の女性に多く発症し、男性の約3から4倍の頻度で見られます。日本には約70万人から100万人の患者がいると推定されています。原因は完全には解明されていませんが、遺伝的素因と環境要因(喫煙、感染症など)が組み合わさって発症すると考えられています。

関節リウマチは全身性の疾患であり、関節だけでなく、肺、心臓、血管、眼など他の臓器にも影響を及ぼすことがあります。早期に適切な治療を開始することで、関節破壊の進行を抑え、生活の質を維持することが可能です。

関節リウマチの主な症状

関節リウマチの典型的な症状は、朝のこわばり、関節の痛みと腫れ、対称性の関節炎です。朝起きた時に手指や足の関節がこわばり、動かしにくくなる症状が30分以上続くことが特徴です。

初期には、手指の第2、第3関節(PIP関節、MCP関節)、手首、足の指の付け根などの小さな関節から始まることが多く、左右対称に症状が現れます。進行すると、肘、肩、膝、足首などの大きな関節にも広がります。

関節の腫れは、関節を包む滑膜の炎症により関節液が増えることで起こります。放置すると、関節の軟骨や骨が破壊され、関節が変形して機能が失われます。全身症状として、微熱、疲労感、食欲不振、体重減少などが現れることもあります。

主要なリウマチ検査項目

関節リウマチの診断には、複数の血液検査項目が用いられます。

RF(リウマトイド因子)検査

RF(Rheumatoid Factor:リウマトイド因子)は、IgG抗体に対する自己抗体で、関節リウマチ患者の約70から80%で陽性となります。RFの基準値は一般的に15IU/mL未満とされ、これを超える場合は陽性と判定されます。

RF値が高いほど、関節リウマチの可能性が高く、また病気の活動性が高い傾向があります。ただし、RF陽性でも関節リウマチでない場合(偽陽性)もあり、健康な高齢者の約5から10%、他の膠原病、慢性感染症、肝疾患などでも陽性となることがあります。

逆に、関節リウマチ患者の約20から30%はRF陰性(血清陰性関節リウマチ)であり、RFが陰性でも関節リウマチを完全に否定することはできません。そのため、RFは関節リウマチの診断の一つの材料ですが、単独では診断できず、他の検査や臨床症状と合わせて総合的に判断します。

抗CCP抗体検査

抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)は、関節リウマチに非常に特異的な自己抗体で、診断精度が高い検査です。関節リウマチ患者の約70から80%で陽性となり、特異度は95%以上と非常に高いため、陽性であれば関節リウマチの可能性が極めて高いと言えます。

抗CCP抗体の基準値は一般的に4.5U/mL未満とされ、これを超える場合は陽性と判定されます。抗CCP抗体は、関節リウマチの発症前から検出されることがあり、将来関節リウマチを発症するリスクの予測にも有用です。

RF陰性でも抗CCP抗体陽性の関節リウマチもあり、両方の検査を組み合わせることで診断精度が向上します。また、抗CCP抗体陽性の患者は、関節破壊が進行しやすい傾向があるため、より積極的な治療が推奨されます。

炎症マーカー(CRP・血沈)

CRP(C反応性蛋白)と血沈(赤血球沈降速度)は、体内の炎症の程度を示す検査です。関節リウマチでは、関節の炎症によりCRPが上昇し、血沈が亢進します。

CRPの基準値は0.3mg/dL以下とされ、これを超える場合は炎症があることを示します。血沈は1時間で赤血球が沈む速度を測定し、男性では10mm/時以下、女性では15mm/時以下が正常範囲とされます。

これらの炎症マーカーは、関節リウマチの診断だけでなく、病気の活動性評価や治療効果の判定にも用いられます。治療により炎症が抑えられると、CRPや血沈は改善します。ただし、炎症マーカーは関節リウマチ特異的ではなく、他の炎症性疾患や感染症でも上昇するため、他の検査と組み合わせた評価が必要です。

その他の検査項目

MMP-3(マトリックスメタロプロテアーゼ3)は、関節の軟骨破壊に関与する酵素で、関節リウマチの早期診断や病勢評価に有用です。基準値は性別・年齢により異なりますが、一般的に121.4ng/mL以下とされます。

抗核抗体(ANA)は、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病で陽性となることが多いですが、関節リウマチでも約30から40%で陽性となります。抗核抗体が陽性の場合、他の膠原病の可能性も考慮して精査が必要です。

血液一般検査では、貧血(慢性炎症による貧血)や血小板増多が見られることがあります。これらの検査を総合的に評価することで、より正確な診断と病状把握が可能になります。

関節リウマチの診断基準

関節リウマチの診断には、国際的に認められた診断基準が用いられます。

ACR/EULAR分類基準(2010年)

現在広く使用されている診断基準は、米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)が2010年に共同で作成した分類基準です。この基準は早期関節リウマチの診断を重視し、点数制で評価します。

評価項目は、(1)関節症状(腫れや圧痛のある関節の数と部位)、(2)血清学的検査(RFと抗CCP抗体の値)、(3)炎症反応(CRPと血沈)、(4)症状の持続期間(6週間以上)の4つです。各項目に点数が割り当てられ、合計6点以上で関節リウマチと診断されます。

この診断基準により、従来よりも早期の段階で関節リウマチを診断でき、早期治療開始が可能になりました。ただし、これはあくまで分類基準であり、実際の診断は、リウマチ専門医が臨床症状、検査結果、画像所見などを総合的に判断して行います。

画像検査の役割

X線検査は、関節の骨びらん(骨の破壊)や関節裂隙の狭小化(軟骨の破壊)を評価するのに用いられます。初期には異常が見られないことも多いですが、進行すると特徴的な変化が現れます。

関節超音波検査やMRI検査は、X線よりも早期に滑膜炎や骨びらんを検出できるため、早期診断に有用です。関節超音波検査では、滑膜の肥厚、関節液の貯留、血流増加(パワードプラ信号)などを観察できます。

これらの画像検査により、関節の状態を詳しく評価し、治療効果の判定や病気の進行度の把握が可能になります。定期的な画像検査により、関節破壊の進行を監視し、必要に応じて治療を調整します。

リウマチ検査が陽性の場合の対処法

リウマチ検査で異常が見つかった場合、適切に対処することが重要です。

リウマチ専門医の受診

RFや抗CCP抗体が陽性の場合、または関節の痛みや腫れが続く場合は、速やかにリウマチ専門医(リウマチ・膠原病科)を受診することが推奨されます。

関節リウマチは、発症後早期(特に2年以内)に適切な治療を開始することで、関節破壊の進行を大幅に抑えることができるため、早期診断・早期治療が極めて重要です。

リウマチ専門医は、詳しい問診、身体診察、血液検査、画像検査を行い、関節リウマチかどうか、また他の膠原病や関節疾患でないかを鑑別診断します。診断が確定したら、病気の活動性や進行度に応じて、最適な治療方針を決定します。

関節リウマチの治療法

関節リウマチの治療は、近年大きく進歩しています。治療の目標は、炎症を抑えて症状を改善し、関節破壊の進行を防ぎ、生活の質を維持することです。

第一選択薬は、メトトレキサート(MTX)という抗リウマチ薬(DMARD)です。メトトレキサートは関節破壊の進行を抑える効果が高く、多くの患者で有効です。週1回の服用で、副作用予防のために葉酸も併用します。

メトトレキサート単独で効果不十分な場合は、生物学的製剤(TNF阻害薬、IL-6阻害薬など)やJAK阻害薬という新しい薬剤を追加または変更します。これらの薬剤は非常に効果が高く、多くの患者で寛解(症状がほぼ消失した状態)を達成できます。

痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイド薬も併用されます。ただし、これらは対症療法であり、関節破壊の進行を止めることはできません。

生活習慣と自己管理

薬物療法に加えて、生活習慣の改善も重要です。適度な運動は、関節の機能維持や筋力強化に有効ですが、炎症が強い時期は無理をせず、症状が落ち着いてから徐々に始めます。

禁煙は極めて重要で、喫煙は関節リウマチの発症リスクを高め、治療効果を低下させることが知られています。バランスの取れた食事、適正体重の維持、十分な休息も大切です。

定期的に通院し、血液検査や画像検査を受けて病状をモニタリングすることが重要です。薬の副作用のチェックも欠かせません。痛みや腫れが悪化した場合、新たな症状が出た場合は、早めに医師に相談しましょう。

膠原病とリウマチ検査

リウマチ検査は、関節リウマチだけでなく、他の膠原病の診断にも用いられます。

膠原病の種類と特徴

膠原病は、自己免疫の異常により全身の結合組織に炎症が起こる疾患の総称です。代表的な膠原病には、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎、シェーグレン症候群、混合性結合組織病などがあります。

これらの疾患では、さまざまな自己抗体が検出され、RFも陽性となることがあります。例えば、シェーグレン症候群では約60から70%でRF陽性となります。全身性エリテマトーデスでは、抗核抗体がほぼ100%陽性で、抗DNA抗体、抗Sm抗体なども陽性となります。

膠原病は、関節症状だけでなく、皮膚、腎臓、肺、心臓、神経など多臓器に症状が現れることが特徴です。診断には、臨床症状と複数の自己抗体検査を組み合わせた総合的な評価が必要です。

関節リウマチと他の膠原病の鑑別

関節リウマチと他の膠原病を鑑別するためには、症状の特徴と自己抗体のパターンを評価します。関節リウマチでは、対称性の多関節炎が主症状で、抗CCP抗体が高い特異度で陽性となります。

全身性エリテマトーデスでは、顔面の蝶形紅斑、光線過敏症、腎炎、抗DNA抗体陽性が特徴的です。全身性強皮症では、手指や顔の皮膚が硬くなり、抗Scl-70抗体や抗セントロメア抗体が陽性となります。

シェーグレン症候群では、口や眼の乾燥が主症状で、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体が陽性となります。これらの疾患は合併することもあり(overlap症候群)、慎重な鑑別診断が必要です。

リウマチ検査の限界と注意点

リウマチ検査には限界があることを理解しておくことが重要です。

偽陽性と偽陰性

RFは関節リウマチ以外の疾患や健康な人でも陽性となることがあり(偽陽性)、特に高齢者では偽陽性率が高くなります。慢性感染症(結核、感染性心内膜炎)、肝疾患(肝硬変、慢性肝炎)、他の膠原病でも陽性となることがあります。

逆に、関節リウマチ患者の約20から30%はRF陰性(偽陰性)であり、特に発症初期は陰性のことが多いです。抗CCP抗体も約20から30%の患者では陰性です。そのため、検査が陰性でも症状が続く場合は、経過観察しながら再検査を行うことが重要です。

検査結果だけでなく、症状の特徴、身体所見、画像所見を総合的に評価することが、正確な診断につながります。

早期診断の重要性

関節リウマチは、発症早期には検査が陰性であったり、症状が軽微であったりすることがあります。しかし、発症後2年以内のウィンドウ期に適切な治療を開始することで、長期予後が大幅に改善することが分かっています。

そのため、関節の痛みや腫れ、朝のこわばりなどの症状がある場合は、検査結果にかかわらず、早めにリウマチ専門医を受診することが推奨されます。早期診断・早期治療により、関節破壊を防ぎ、将来的な障害を最小限に抑えることができます。

家族に関節リウマチや膠原病の方がいる場合、喫煙している場合は、リスクが高いため、特に注意が必要です。定期的な健康診断で異常が指摘された場合も、放置せず精密検査を受けましょう。

まとめ

リウマチ検査は、関節リウマチや膠原病の診断、病状評価に重要な役割を果たします。主要な検査項目には、RF(リウマトイド因子)、抗CCP抗体、炎症マーカー(CRP、血沈)などがあり、これらを組み合わせて総合的に評価します。

関節リウマチは、対称性の多関節炎、朝のこわばりが特徴で、早期診断・早期治療が極めて重要です。RFや抗CCP抗体が陽性の場合、または関節症状が続く場合は、速やかにリウマチ専門医を受診しましょう。

現代の治療法により、多くの患者で症状のコントロールや寛解が達成でき、通常の生活を送ることが可能です。検査結果だけでなく、症状や画像所見を総合的に評価し、適切な治療を早期に開始することが、健康な生活を維持する鍵となります。関節の異常に気づいたら、早めの受診が大切です。

ABOUTこの記事をかいた人

20代のとき父親が糖尿病の診断を受け、日々の生活習慣からこんなにも深刻な状態になってしまうのかという経験を経て、人間ドックや健康診断を猛勉強。 数々の書籍などからわかりやすく、手軽に病気の予防に活用してほしいとの思いで「からだマガジン」を運営しています。