緑内障とは?初期症状・治療法・失明予防について徹底解説

緑内障とは?基本的な知識をわかりやすく解説

緑内障は、視神経が障害され、視野(見える範囲)が徐々に狭くなっていく眼疾患です。

一度失われた視野は回復しないため、早期発見と継続的な治療が極めて重要です。日本では失明原因の第1位を占めており、40歳以上の約5%(20人に1人)が緑内障を発症していると推定されています。

緑内障の主な原因は眼圧(目の中の圧力)の上昇ですが、正常眼圧緑内障といって、眼圧が正常範囲内でも発症するタイプが日本人には多く見られます。

実際、日本人の緑内障患者の約70%が正常眼圧緑内障であるため、「眼圧が正常だから安心」とは言えません。

緑内障は自覚症状に乏しく、かなり進行するまで気づかないことが多い「沈黙の病気」です。

視野の欠損は周辺部から始まり、もう一方の目で補われるため、日常生活で異常に気づきにくいのです。そのため、定期的な眼科検診が予防の鍵となります。

緑内障の初期症状とタイプ別の特徴

緑内障の症状は、発症のタイプによって大きく異なります。

最も多い慢性緑内障(開放隅角緑内障)では、初期にはほとんど自覚症状がありません。

慢性緑内障(開放隅角緑内障)の症状

慢性緑内障は数年から数十年かけてゆっくり進行するため、初期段階では自分で気づくことが困難です。

視野の周辺部から徐々に見えない部分が広がっていきますが、中心視野は比較的保たれるため、視力低下も遅いのが特徴です。進行すると、階段を踏み外す、人や物にぶつかる、文字の一部が欠けて見えるなどの症状が現れます。

急性緑内障(閉塞隅角緑内障)の症状

急性緑内障は突然発症し、急激な眼圧上昇により激しい症状が現れます。

激しい目の痛み、充血、視力低下、霧がかかったように見える、光の周りに虹が見える(虹視症)、頭痛、吐き気、嘔吐などの症状が特徴です。これは眼科救急であり、数時間以内に治療を開始しないと失明のリスクがあるため、すぐに眼科を受診する必要があります。

正常眼圧緑内障の特徴

日本人に最も多い正常眼圧緑内障は、眼圧が正常範囲(10~21mmHg)にもかかわらず視神経が障害されるタイプです。

視神経が構造的に弱い、血流障害がある、近視が強いなどの要因が関係していると考えられています。症状は慢性緑内障と同様で、自覚症状が乏しく、健康診断や人間ドックで偶然発見されることが多いです。

緑内障の原因とリスク要因

緑内障の発症には、眼圧上昇以外にもさまざまな要因が関係しています。

加齢、遺伝、近視、眼圧、血流障害などが主なリスク要因です。

加齢と眼圧の関係

年齢とともに緑内障の発症リスクは高まります。40歳以上で約5%、60歳以上では約10%、70歳以上では約15%と、加齢とともに有病率が上昇します。

これは、加齢により房水(目の中を循環する液体)の排出機能が低下したり、視神経が加齢変化に弱くなったりするためです。

遺伝的要因

緑内障には遺伝的な要素があり、家族に緑内障の患者がいる場合、発症リスクは約3~4倍高くなります。

両親や兄弟姉妹に緑内障の方がいる場合は、40歳前でも定期的な眼科検診を受けることが推奨されます。

近視と緑内障

特に強度近視(-6D以上)の方は、正常眼圧緑内障のリスクが高いことが知られています。

近視の目は眼球が前後に伸びているため、視神経が引き伸ばされて脆弱になりやすいと考えられています。日本人は近視が多いため、正常眼圧緑内障の頻度が高い一因となっています。

その他のリスク要因

糖尿病、高血圧、低血圧、睡眠時無呼吸症候群、片頭痛などがある方もリスクが高まります。

また、ステロイド薬の長期使用、眼の外傷や手術の既往、角膜が薄い方なども注意が必要です。喫煙や過度の飲酒も視神経への血流を悪化させる可能性があります。

緑内障の検査と診断方法

緑内障の診断には、眼圧測定、視野検査、眼底検査の3つが基本となります。

これらの検査を組み合わせることで、緑内障の有無や進行度を正確に評価します。

眼圧測定

眼圧測定は緑内障診断の基本中の基本です。非接触型(空気を吹き付ける方法)と接触型(測定器を直接眼に当てる方法)があります。

正常眼圧は10~21mmHgとされていますが、個人差があり、正常範囲内でも緑内障が進行することがあるため、他の検査と合わせて総合的に判断します。

視野検査

視野検査は緑内障の診断と進行度の評価に最も重要な検査です。

ハンフリー視野計やゴールドマン視野計を使用し、見える範囲と感度を測定します。中心から30度以内の視野を詳しく調べることで、初期の視野欠損も検出できます。検査には15~20分程度かかり、定期的に実施することで進行の有無を確認します。

眼底検査とOCT検査

眼底検査では、視神経乳頭(視神経の出口)の形状や色、陥凹(へこみ)の程度を観察します。

緑内障では視神経が障害され、陥凹が拡大する特徴的な変化が見られます。また、OCT(光干渉断層計)という最新の機器を使用すると、視神経線維層の厚みを数ミクロン単位で測定でき、ごく初期の変化も検出可能です。

緑内障の治療法:目薬による眼圧管理が基本

緑内障の治療目的は、眼圧を下げて視神経の障害進行を止めることです。

失われた視野を回復させることはできませんが、適切な治療により進行を抑えることは可能です。

点眼薬治療(目薬)

緑内障治療の第一選択は点眼薬です。眼圧を下げる目薬には、房水の産生を抑える薬(β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬など)と、房水の排出を促進する薬(プロスタグランジン関連薬など)があります。

プロスタグランジン関連薬は眼圧下降効果が高く、1日1回の点眼で済むため、現在最もよく使用されています。

点眼薬は毎日決まった時間に正確に点眼することが重要です。

1種類で効果が不十分な場合は、作用機序の異なる薬を複数組み合わせることもあります。副作用として、充血、かゆみ、まつ毛が伸びる、目の周りの色素沈着などが現れることがありますが、多くは軽度です。

レーザー治療

点眼薬で十分な眼圧下降が得られない場合や、急性緑内障の場合には、レーザー治療が行われます。

開放隅角緑内障に対するSLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)や、閉塞隅角緑内障に対するレーザー虹彩切開術などがあります。外来で短時間で実施でき、侵襲が少ない治療法です。

手術治療

点眼薬やレーザー治療でも眼圧コントロールが不十分な場合、または病状が進行している場合には、手術治療が検討されます。

線維柱帯切除術(房水の新しい排出路を作る手術)や、低侵襲緑内障手術(MIGS)などがあります。最近では、チューブシャント手術など、より確実に眼圧を下げられる手術も普及しています。

緑内障の予防と日常生活での注意点

緑内障を完全に予防することは困難ですが、早期発見と適切な治療継続により、失明を防ぐことができます。

日常生活でできる予防と対策を紹介します。

定期的な眼科検診

40歳以上の方は、症状がなくても年に1回は眼科で眼圧測定と眼底検査を受けることが推奨されます。

特に家族歴がある方、強度近視の方、糖尿病や高血圧のある方は、より頻繁な検診が必要です。人間ドックや健康診断のオプションで眼底検査を選択することも有効です。

生活習慣の改善

バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙などの健康的な生活習慣は、視神経の血流を保つために重要です。

緑黄色野菜や魚に含まれる抗酸化物質やオメガ3脂肪酸は、視神経の健康維持に役立つ可能性があります。ただし、特定のサプリメントに緑内障予防効果があるという明確な証拠はまだありません。

治療の継続

緑内障と診断された場合、自覚症状がなくても点眼薬を毎日継続することが極めて重要です。

点眼を中断すると眼圧が上昇し、視野障害が進行してしまいます。定期的に眼科を受診し、視野検査やOCT検査で病状の変化をチェックすることも欠かせません。

まとめ

緑内障は視神経が障害され、視野が徐々に狭くなる疾患で、日本の失明原因第1位を占めています。

40歳以上の約5%が発症し、初期には自覚症状がほとんどないことが特徴です。

日本人に多い正常眼圧緑内障は、眼圧が正常範囲でも発症するため、眼圧だけでなく視野検査や眼底検査が診断に重要です。

加齢、遺伝、近視、血流障害などがリスク要因となります。診断には眼圧測定、視野検査、OCT検査などが用いられます。

治療の基本は点眼薬による眼圧管理で、毎日の正確な点眼継続が進行防止の鍵です。

点眼薬で不十分な場合は、レーザー治療や手術が検討されます。一度失われた視野は回復しないため、早期発見が何よりも重要です。

予防には40歳以上の定期的な眼科検診が最も効果的です。健康的な生活習慣も視神経の健康維持に役立ちます。

気になる症状がある場合や、家族に緑内障の方がいる場合は、早めに眼科を受診しましょう。適切な治療により、生涯にわたり良好な視機能を保つことが可能です。

ABOUTこの記事をかいた人

20代のとき父親が糖尿病の診断を受け、日々の生活習慣からこんなにも深刻な状態になってしまうのかという経験を経て、人間ドックや健康診断を猛勉強。 数々の書籍などからわかりやすく、手軽に病気の予防に活用してほしいとの思いで「からだマガジン」を運営しています。