腫瘍マーカー検査とは?検査の種類とその意味・必要性は?

普段、健康診断や人間ドックを受診している方でも、「腫瘍マーカー」と聞くとあまりピンと来る人はいないのではないでしょうか?

体の中の腫瘍を見つけるための検査だよな、とはわかると思いますが、実はその検査方法やどんな種類があるのか?また、自分自身に腫瘍マーカー検査って必要なのか?と疑問に思われる方も多いはず。

今回は、腫瘍マーカーについて詳しく見ていきながら、その検査の意味や必要性、検査の結果によってどのような対応をしていけばよいのかをチェックしていきましょう。

腫瘍マーカー検査とは?

腫瘍マーカーとは、一言で言うと、体の腫瘍のありなしを検査によって確認し、がんの発見に役立てる検査です。

体に腫瘍ができてしまうと、その腫瘍自体が生成する物質や、腫瘍に反応して作り出される物質が血液中に増えてくることがあります。腫瘍マーカー検査とは、その血液中の物質の種類を測定し、さまざまながんのサインを検査するものなのです。

腫瘍マーカーの意味は?何がわかるの?

そんな腫瘍マーカー検査ですが、先ほど紹介したように、血液中の物質を測定する検査になるため、

  • 早期のがんの場合、物質自体がでないため、がんとは分からない場合がある
  • がんでなくても、物質が検出される場合がある

上記の2点が注意すべき点といえます。

そのため、腫瘍マーカー検査は、がんの早期発見にはあまり適していない検査ともいえます。この部分はあまり一般の方は教えてもらえない部分でもありますので、受診を検討している方でがんの早期発見効果を期待している方は、一度詳しくきいてみると良いでしょう。

また、そのような役割の検査のため、腫瘍マーカー検査は意味ないんじゃないか?と思われる方も非常におおくいらっしゃるのも事実です。

ただ、腫瘍マーカーはがんの早期発見に有効な、X線検査・CT・エコーなどの画像診断や内視鏡検査・細胞診などの検査の補助として使われることも多いため、一口に意味のない検診とはいえません。

また、腫瘍マーカー検査から期待できる効果としては、

  • がんの進行状況の検査に役立つ
  • がんへの治療効果の判定に役立つ
  • 再発や転移の早期発見に役立つ

という意味もありますので、状況に応じて腫瘍マーカーを利用することが重要になります。ぜひ覚えておいてください。

腫瘍マーカーの種類は?

ここまで腫瘍マーカーとは何か、その意味や検査から得られる効果について見てきました。ここからは腫瘍マーカーの種類とその詳細について紹介していきます。

AFP(アルファ・フェト・プロテイン)= 「肝臓がん」の腫瘍マーカー

AFP(アルファ・フェト・プロテイン)といわれる物質は、胎児のころの血液に非常に多く含まれる物資ですが、生後一ヶ月ほどでほとんどなくなってしまう物質です。

通常の健康な状態であればほとんど検知できない数値ですが、肝臓がんになってしまうと多くの場合、AFPの値が上昇すると言われています。

そのため、肝臓がんのスクリーニング検査の際に腫瘍マーカーとして利用される物質で、特に肝臓がんはB型・C型肝炎などウイルス性肝炎のひとが多くなってしまうため、該当患者へのスクリーニング検査に利用されることが多いものです。

【AFP(アルファ・フェト・プロテイン)の基礎情報】

  • 基準値: 10.0ng/ml 以下
  • 異常値の場合: 肝臓がん、肝硬変、慢性肝炎、急性肝炎などの可能性

CEA(がん胎児性抗原)=「大腸がん(肺がん、膵臓がん、胆道がん)」の腫瘍マーカー

CEA(がん胎児性抗原)は、胎児の大腸に多く含まれるたんぱく質の一種です。出産後この数値はほとんどなくなるのですが、大腸がんになると血液中にCEA(がん胎児性抗原)が増加するといわれています。

また、その他にも、肺がん、膵臓がん、胆道がんなどになると数値が上昇すると言われており、そのような種類のがんの現状を知るために利用されたり、がん治療の進行状況や転移状況を見るために利用される腫瘍マーカーです。

【CEA(がん胎児性抗原)の基礎情報】

  • 基準値: 5.0ng/ml 以下
  • 異常値の場合: 悪性腫瘍、転移性肝がん、大腸がん、膵臓がん、胆道がん、肺がん、甲状腺機能低下症などの可能性

CA19-9 = 「膵臓がん」の腫瘍マーカー

CA19-9と耳慣れない名前ですが、通常消化管などにごく僅かに存在している物質です。特に、膵臓がんになるとCA19-9の数値が上昇すると言われており、その他にも、胆管がん、胆のうがんなどの場合でも顕著に上昇します。

他の腫瘍マーカーと同様、初期のがんでは数値に異常が現れづらく、がんの早期発見には向かないため、 治療の状況や転移状況などを調べる検査として活用されます。また、他の腫瘍マーカーの検査と組み合わせることも多いため、補助的な数値として使用されることもあるものです。

【CA19-9 の基礎情報】

  • 基準値: 37.0U/ml 以下
  • 異常値の場合: 膵臓がん、胆のうがん、胆管がん、胃がん、大腸がんなどの可能性

PIVKA-II(ピブカツー) = 「肝臓がん」の腫瘍マーカー

PIVKA-II(ピブカツー)とよばれるこの物質は、ビタミンKと密接に関わっている物質で、特に肝臓がんになるとPIVKA-II(ピブカツー)は異常値を示すことが多く、腫瘍マーカーとして活用されています。

また、肝臓に関わる病気の疑いを発見できるほか、がんの転移状況などを測るために利用されています。

【PIVKA-II(ピブカツー)の基礎情報】

  • 基準値: 40mAU/ml 未満
  • 異常値の場合: 肝細胞がん、転移性肝がん、ビタミンK欠乏症などの可能性

CA125 = 「卵巣がん」の腫瘍マーカー

CA125は、正常な子宮内膜などに存在する糖タンパク質の一種です。そのため、卵巣がんになるとCA125が大量に生成されるため、卵巣がんの腫瘍マーカーとして利用されています。

【CA125の基礎情報】

  • 基準値: 35.0U/ml 以下
  • 異常値の場合: 卵巣がん、子宮がん、子宮内膜症などの可能性

SLX(シアリルLex-i抗原)= 「肺がん、卵巣がんなど」の腫瘍マーカー

SLX(シアリルLex-i抗原)は、がん細胞から生じる物質で、がん細胞の血行性転移(=血液の流れにのってがんが転移すること)と関連性が高い物質です。そのため、SLX(シアリルLex-i抗原)は、特に肺がん、卵巣がんなどに腫瘍マーカーとして利用されています。

【SLX(シアリルLex-i抗原)の基礎情報】

  • 基準値: 38U/ml 以下
  • 異常値の場合: 肺がん、卵巣がん、膵臓がんなどの可能性

SCC(扁平上皮がん関連抗原) = 「食道がん、子宮頸がんなど」の腫瘍マーカー

SCC(扁平上皮がん関連抗原)は、口腔、肺、肛門、子宮などの器官などに生じる物資です。そのため、SCC(扁平上皮がん関連抗原)は、特に食道がん・子宮頸がんなどに腫瘍マーカーとして利用されています。

【SCC(扁平上皮がん関連抗原)の基礎情報】

  • 基準値: 1.5ng/ml 以下
  • 異常の場合: 子宮頸がん、肺がん、食道がんなどの可能性

PSA(前立腺特異抗原) = 「前立腺がん」の腫瘍マーカー

PSA(前立腺特異抗原)は、精液中に含まれるタンパク質の一種で、前立腺に異常があると血液中に増加する物質です。そのため、PSA(前立腺特異抗原)は、特に前立腺がんの腫瘍マーカーとして利用されます。

ただ、あくまで前立腺がんの疑いの場合に陽性になるため、直腸内診断や超音波検査などの結果とあわせて診断されます。

【PSA(前立腺特異抗原)の基礎情報】

  • 基準値: 4.00ng/ml 以下
  • 異常値の場合: 前立腺がん、前立腺肥大、前立腺炎などの可能性

シフラ(CYFRA) = 「肺がんなど」の腫瘍マーカー

シフラ(CYFRA)は、主に非小細胞肺がんの場合陽性を示す物質です。そのため、シフラ(CYFRA)は主に肺がんの腫瘍マーカーとして活用されています。

また、喫煙習慣が多い場合は、特に肺がんのリスクが高くなるため、シフラ(CYFRA)を用いた検査の必要性が高くなります。その他、卵巣がん、乳がんなどにも陽性を示すため、覚えておきましょう。

【シフラ(CYFRA)の基礎情報】

  • 基準値: 3.5ng/ml 以下
  • 異常値の場合: 肺がん、卵巣がん、乳がんなど

神経特異エノラーゼ(NSE) = 「肺がん」の腫瘍マーカー

神経特異エノラーゼ(NSE)は、小細胞がんの腫瘍マーカーとして知られており、特に肺がん(そのうち小細胞がん)の腫瘍マーカーとして活用されています。

早期発見が大切な小細胞がんは進行が早く、神経特異エノラーゼ(NSE)などの小細胞がんの腫瘍マーカーはその発見のためにとても重要な指標になります。

【神経特異エノラーゼ(NSE)の基礎情報】

  • 基準値: 16.3ng/ml 以下
  • 異常値の場合: 肺がんのうち小細胞がん、神経芽細胞腫、褐色細胞腫などの可能性

BCA225 = 「乳がん」の腫瘍マーカー(主に、原発性乳がん・再発乳がんなど)

BCA225は、後述するCA15-3と同様、乳がんの再発への腫瘍マーカーとして利用されてきましたが、昨今原発性乳がんへの陽性率が高い腫瘍マーカーといわれています。

【BCA225の基礎情報】

  • 基準値: 160U/ml 以下
  • 異常値の場合: 乳がんの可能性

CA15-3 = 「乳がん」の腫瘍マーカー(主に再発乳がん)

CA15-3は、乳腺以外のがんには反応しないため、特に乳がんの腫瘍マーカーとして活用されています。

ただし、CA15-3は、初期の乳がんには反応せず、再発や転移性乳がんへの陽性率が高くなるため、治療の経過や治療の効果の判定に使われることが多い腫瘍マーカーです。

【CA15-3の基礎情報】

  • 基準値: 25.0U/ml 以下
  • 異常値の場合: 乳がん、卵巣がんなどの可能性

SPan-1(エスパン1) = 「膵臓がん、肝臓がんなど」の腫瘍マーカー

SPan-1(エスパン1)は、膵臓がんや肝臓がんに陽性を示すため、それらの腫瘍マーカーとして活用されています。

また、膵臓がんと膵炎 の鑑別や、それぞれのがんの治療の経過などに利用されることが多いものです。

【SPan-1(エスパン1)の基礎情報】

  • 基準値: 30U/ml 以下
  • 異常値の場合: 膵臓がん、肝臓がん、胆道がんなどの可能性

ProGRP(ガストリン放出ペプチド前駆体) = 「肺がん」の腫瘍マーカー

ProGRP(ガストリン放出ペプチド前駆体)は、肺小細胞がんの検出に利用される腫瘍マーカーです。初期の段階でも陽性を示すことも多いため、確定診断や治療効果の測定、再発の判定などに活用されることの多い指標です。

【ProGRP(ガストリン放出ペプチド前駆体)の基礎情報】

  • 基準値: 81pg/ml 未満
  • 異常値の場合: 肺小細胞がん、甲状腺髄様がんの可能性

CA72-4 = 「胃がん・大腸がん・卵巣がん・乳がんなど」の腫瘍マーカー

CA72-4は、特に胃がんに陽性を示す事が多いですが、その他に大腸がん、卵巣がん、乳がんなどの腫瘍マーカーとして活用されています。治療の経過の測定や、再発の早期発見などに活用されることの多い指標です。

【CA72-4の基礎情報】

  • 基準値: 10,0U/ml 以下
  • 異常値の場合: 胃がん、大腸がん、卵巣がん、乳がんなどの可能性

 

まとめ

さて、腫瘍マーカーの種類について色々と解説してきましたがいかがでしょうか?まず、腫瘍マーカーの種類の多さにびっくりした方も多いと思いますが、血液検査によって様々ながんの測定ができる腫瘍マーカーは非常に大切な測定基準のひとつとなっています。

冒頭にも記しましたが、腫瘍マーカー自体は、あまりがんの早期発見には向いていない性質があります。しかし、その他のがん検査と組み合わせることで非常に大きな意味を持つ検査であることは間違いありません。

専門用語なので少々とっつきにくいと思いますが、もし耳にしたり気になることがあれば、この記事を参考に詳しく調べてみてください。