エムポックス重症型とは?重症化の特徴・リスク・日本での初確認情報を解説

エムポックス(旧称「サル痘」)は、通常は自然に治ることが多い感染症です。しかし、特定のタイプ(クレードI型など)は重症化することがあり、症状が深刻になるケースも少なくありません。2025年9月には、日本国内でこの”重症型エムポックス”の感染者が初めて確認され、大きな注目を集めました。

この記事では、「重症型って何?」「軽症型とどう違うの?」「感染するとどうなるの?」といった疑問を持つ方に向けて、エムポックス重症型の特徴や重症化リスク、日本で確認された最新事例、そして予防と対応策までをわかりやすくまとめています。

エムポックス重症型とは?軽症型との違い

エムポックスは天然痘に近いウイルス感染症として知られており、発熱や皮膚の発疹を主な症状とする感染症です。その中でも「重症型」とされるのが、ウイルスの系統分類であるクレードI型による感染です。ウイルスの系統には大きく分けてクレードIとクレードIIがあり、それぞれに特徴があります。

クレードの分類(系統)

クレードI型は、アフリカの一部地域で古くから報告されており、死亡率が高く、重い合併症を起こすことがある株です。一方、クレードII型は、比較的症状が軽く、近年欧米や日本などで確認されている多くの症例はこのタイプに属します。

重症型(クレードI)は、感染後に高熱が続いたり、全身の倦怠感が強く現れたりすることが多く、通常型とは明らかに異なる経過をたどるケースがあります。また、皮膚にできる水疱や膿疱の数も多く、進行が速い傾向があるのも特徴です。

重症型の特徴

重症型では、免疫力の弱い人が感染した場合に、合併症のリスクが急激に高まることが分かっています。たとえば、皮膚からの細菌感染による敗血症や、肺への感染による気管支肺炎、さらには脳炎などを引き起こすケースもあります。このような症例では、入院管理が必要となることも少なくありません。

重症化するリスク要因

重症型エムポックスにかかるリスクは、年齢や基礎疾患の有無、免疫状態などと密接に関連しています。

主な重症化リスク

特にリスクが高いとされるのは以下のような方々です。

まず、小児、特に乳幼児は免疫システムが未成熟であるため、重症化しやすいとされています。加えて、妊婦も注意が必要で、胎児への影響を含め、感染によるリスクは大きくなります。

また、HIV感染者やがん治療中などで免疫が低下している方、免疫抑制剤を使用している方は、エムポックスの感染で通常よりも強い症状が現れることがあります。さらに、糖尿病や心疾患など慢性的な疾患を持っている人は、感染後の経過が長引いたり、重症化しやすくなる傾向があります。

このような背景を持つ方は、特に流行地域への渡航や感染リスクの高い行動には十分注意が必要です。

日本国内での初確認・報じられた重症型の事例

初確認の概要

2025年9月、日本国内で初めて重症型エムポックス(クレードI)が確認された事例が報じられました。この患者は20代の女性で、渡航先はアフリカ地域とされており、帰国後に発症したとされています。

報道によると、女性は渡航中に現地で感染し、帰国後しばらくして発疹や発熱などの症状が出現。その後、医療機関を受診し、検査の結果、重症型である可能性が高いことが判明しました。現在は容体が安定しており、濃厚接触者への聞き取りやPCR検査などが進められています。

警戒すべき点について

この確認は、日本国内で重症型エムポックスが初めて確認されたケースであり、これまでに確認されてきた軽症型(クレードII)とは異なるリスクがあることを示しています。

重症型の持ち込み例が出たことで、今後は医療機関での診断精度の向上や、渡航歴のある患者に対する疫学的な調査の重要性が高まると考えられています。加えて、空港や港湾での検疫強化、感染者との接触を減らすための広報活動も急務です。

対応・治療・予防策

診断と医療機関での対応

エムポックスの診断には、発疹や膿疱などから採取した検体を用いたPCR検査が行われます。特に重症型が疑われる場合には、症状や感染歴、検査結果を総合的に判断する必要があります。

重症型と診断された場合、抗ウイルス薬「テコビリマット(tecovirimat)」が治療に使われることがあります。この薬剤は日本国内では限定的に使用が認められており、重症化の抑制に効果が期待されています。

治療では、抗ウイルス薬に加え、症状の緩和や合併症の予防も重要になります。高熱や脱水に対する対応、かゆみや痛みの緩和、皮膚の二次感染を防ぐための消毒・ケアなどが含まれます。

予防策

予防の第一歩は、感染リスクのある地域への渡航を控える、または渡航時・渡航後に十分な注意を払うことです。特に発疹のある人との接触は避けることが大切です。

また、手洗いやアルコール消毒など、基本的な感染症対策を徹底することが求められます。天然痘ワクチンにはエムポックスに対する一定の予防効果があることが知られており、過去にワクチン接種を受けていたかどうかの確認も予防の一環となります。

現時点でエムポックスの専用ワクチンは限られた施設での使用にとどまっていますが、重症型の報告を受けて、今後対象者の拡大や備蓄体制の見直しも検討される可能性があります。

まとめ

エムポックス重症型は、通常のエムポックスとは異なる特徴を持つウイルスによって引き起こされ、症状が強く、合併症のリスクも高くなります。日本での初確認をきっかけに、国内でも今後さらに対策強化が求められると予想されます。

感染症としての性質は決して恐れるべきものではありませんが、正しい知識と行動が感染拡大を防ぐ鍵になります。

  • 発疹や発熱が見られた場合には、早めの受診を心がける
  • 渡航歴がある場合は、体調の変化に注意し、必要に応じて医療機関へ相談する
  • 公的機関からの信頼できる情報を確認し、不確かな情報に流されない

こうした一つひとつの意識と行動が、社会全体の感染リスクを下げ、重症化を防ぐ大きな力となるのです

ABOUTこの記事をかいた人

20代のとき父親が糖尿病の診断を受け、日々の生活習慣からこんなにも深刻な状態になってしまうのかという経験を経て、人間ドックや健康診断を猛勉強。 数々の書籍などからわかりやすく、手軽に病気の予防に活用してほしいとの思いで「からだマガジン」を運営しています。