「会社の健康診断で白血球の数が多すぎる(あるいは少なすぎる)と言われた」「赤血球や血小板の数値に矢印(↑・↓)がついているけれど、血液のガンや白血病ではないかと不安」「血算検査とは具体的に身体の何を調べているのか」と疑問を感じていませんか。
採血検査の中で最も頻繁に行われる「血算(けっさん:全血球計算 / CBC:Complete Blood Count)」は、血液中に浮かぶ3大血球成分である「赤血球」「白血球」「血小板」の数や大きさ、濃度を機械で瞬時にカウントする検査です。
血液は全身を巡る命のライフラインであり、酸素を運ぶ赤血球、病原体と戦う白血球、出血を止める血小板は、すべて骨の中心にある「骨髄(こつずい)」という造血工場で休むことなく製造されています。
血算検査の数値を読み解くことで、貧血や感染症の有無だけでなく、骨髄そのものの機能不全、脱水、慢性炎症、さらには重大な血液疾患のサインを早期にキャッチすることができます。
この記事では、血算の基本3項目の医学的役割、最新の正常基準値一覧、数値が外れた時に疑われる代表的疾患、そして貧血の原因を特定する「赤血球恒数(MCV)」の読み方まで徹底解説します。
目次
血算3大項目の役割と正常基準値一覧
日本臨床検査医学会等の基準に基づく、成人の一般的な基準範囲は以下の通りです。
| 血球成分の名称 | 生体内の主な役割と働き | 男性の基準値 | 女性の基準値 |
|---|---|---|---|
| 白血球数(WBC) | 細菌やウイルスなどの病原体を捕食・攻撃し、身体を感染から守る免疫細胞 | 3,300 〜 8,600 /μL | 3,300 〜 8,600 /μL |
| 赤血球数(RBC) | ヘモグロビンを乗せ、肺で取り込んだ酸素を全身の隅々の細胞へ運ぶ赤血球 | 400万 〜 540万 /μL | 360万 〜 480万 /μL |
| 血色素量(ヘモグロビン:Hb) | 赤血球内部で実際に酸素と結合する鉄タンパク質(貧血診断の絶対基準) | 13.0 〜 17.0 g/dL | 11.5 〜 15.0 g/dL |
| 血小板数(PLT) | 血管が破れた時に真っ先に傷口に集まり、血栓を作って止血する血小板 | 15万 〜 35万 /μL | 15万 〜 35万 /μL |
白血球数(WBC)の異常|高い時と低い時の見分け方
白血球の数は、体内の免疫状態やストレスによって最もダイナミックに変動します。
1. 白血球数が多い(高値:9,000 /μL以上)
最も多い原因は「細菌感染症(扁桃炎・肺炎・尿路感染症など)」です。体内に侵入した細菌と戦うために骨髄から大量に動員されます。
また、タバコを吸う人は気道の慢性炎症により、常時10,000前後の高値を示すことが極めて一般的です。
※感染症や喫煙がないのに白血球が数万〜十万単位で異常増殖している場合は、白血病や骨髄増殖性腫瘍が疑われるため緊急精査が必要です。
2. 白血球数が少ない(低値:3,000 /μL未満)
重いウイルス感染症(インフルエンザや急性肝炎の初期)、抗生物質や解熱鎮痛薬などの薬剤性アレルギー、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデスなど)、骨髄異形成症候群などで見られます。
白血球が極端に減ると抵抗力が落ち、重症感染症(敗血症)にかかりやすくなります。
赤血球とヘモグロビン|「多血症」と「貧血」
酸素を運ぶ赤血球は、多すぎても少なすぎても身体に重大な障害をもたらします。
1. 多血症(赤血球増多症):血液がドロドロになる危険
男性でHb 17.0以上、女性でHb 15.0以上の場合を指します。
脱水によって血液が濃縮されただけの「相対的多血症」、喫煙や睡眠時無呼吸症候群(SAS)による慢性低酸素状態でホルモン(エリスロポエチン)が増える「二次性多血症」、骨髄の遺伝子変異で無制限に赤血球が作られる「真性多血症」があります。
血液がジャムのようにネバネバになり、脳梗塞や心筋梗塞の引き金となるため放置厳禁です。
2. 貧血(ヘモグロビン低下):組織の酸素不足
男性で13.0未満、女性で11.5未満を貧血と診断します。
動悸、息切れ、だるさ、めまいなどの症状が現れます。
貧血の正体を暴く!「赤血球恒数(MCV)」の活用法
貧血と診断された際、医師が真っ先に確認するのが赤血球1個の体積(サイズ)を示す「MCV(平均赤血球容積)」です。
| MCVの数値(fL) | 赤血球の大きさ分類 | 疑われる代表的な貧血の種類と原因 |
|---|---|---|
| 80 未満(小球性) | 小球性低色素性貧血 | 鉄欠乏性貧血(女性の過多月経、胃・大腸がんによる微量出血) |
| 80 〜 100(正球性) | 正球性正色素性貧血 | 腎性貧血(腎不全)、急性出血、骨髄疾患(再生不良性貧血) |
| 100 超(大球性) | 大球性高色素性貧血 | ビタミンB12・葉酸欠乏(悪性貧血)、胃切除後、大量飲酒、肝障害 |
血小板数(PLT)の異常|止血機能のトラブル
血小板が10万未満に低下すると、皮膚に赤黒い点状出血(紫斑)が出たり、青あざができやすくなり、鼻血や歯茎からの出血が止まりにくくなります(特発性血小板減少性紫斑病:ITPや肝硬変が代表的)。
逆に40万〜50万以上に増加している場合は、本態性血小板血症などの骨髄疾患や慢性の炎症が疑われます。
まとめ
血算検査は、体内の造血工場と免疫、止血のバランスを映し出す最も基本的で奥深い検査です。
数値の軽微な異常であっても、脱水や喫煙といった生活習慣の乱れから重大な血液疾患まで多様なサインが隠されています。
健診で血算の異常を指摘された場合は、自己判断で放置せず内科や血液内科を受診し、丁寧な精密検査を受けて安心を手に入れましょう。










