CRP検査は、体内の炎症の程度を測定する血液検査で、感染症や自己免疫疾患などの診断や経過観察に広く用いられています。CRPはC反応性蛋白(C-Reactive Protein)の略称で、炎症が起こると肝臓で産生され、血液中に増加する特徴があります。
この検査は人間ドックや健康診断でも実施されることが多く、体内で何らかの炎症が起きているかどうかを早期に発見できる重要な指標です。CRP値が高い場合、その原因を特定するために追加の検査が必要になることもあります。
本記事では、CRP検査の基本的な知識から、基準値、高値になる原因、関連する疾患、そして検査結果への対応まで、わかりやすく解説していきます。
目次
CRP検査とは?C反応性蛋白の基本的な知識
CRP(C反応性蛋白)は、体内で炎症や組織の損傷が起こった際に、肝臓で合成されて血液中に放出されるタンパク質です。CRPという名称は、肺炎球菌のC多糖体と反応することから名付けられました。
炎症が起こると、体内の免疫系が活性化し、炎症性サイトカインと呼ばれる物質が分泌されます。これらのサイトカインが肝臓を刺激することで、CRPの産生が促進され、炎症発生から6~12時間後には血中濃度が上昇し始めます。
炎症のピーク時には、CRP値は正常時の数百倍にまで増加することがあり、炎症の程度を反映する優れた指標となっています。また、炎症が治まると速やかに低下するため、治療効果の判定にも有用です。
CRP検査の目的と意義
CRP検査は、主に以下のような目的で実施されます。まず、感染症や炎症性疾患の早期発見とスクリーニングが挙げられます。発熱や倦怠感などの症状がある場合、CRP検査によって体内での炎症の有無を確認できます。
次に、疾患の重症度評価です。CRP値の高さは炎症の程度を反映するため、病状の重さを判断する材料になります。さらに、治療効果のモニタリングにも活用されます。抗生物質などの治療を開始した後、CRP値が低下していれば治療が有効であることを示します。
また、術後管理においても重要です。手術後の感染症や合併症の早期発見に役立ち、適切な対応を可能にします。このように、CRP検査は診断から治療管理まで幅広い場面で活用される重要な検査です。
CRP検査の基準値と結果の見方
CRP検査の基準値は、一般的に0.3mg/dL以下とされています。多くの健康な人では、CRP値は0.1mg/dL未満の非常に低い値を示します。検査方法によって基準値が若干異なる場合がありますが、おおむね0.3mg/dL以下であれば正常範囲と判断されます。
CRP値が0.3~1.0mg/dLの場合は軽度の上昇とされ、軽い炎症や感染症の初期段階、あるいは慢性的な軽度の炎症を示唆します。1.0~10.0mg/dLの中等度上昇では、細菌感染症や自己免疫疾患、組織損傷などが考えられます。
10.0mg/dL以上の高度上昇は、重症の細菌感染症、敗血症、重度の組織損傷などを示唆する重要な所見です。場合によっては20mg/dLを超えることもあり、緊急の医療介入が必要になることがあります。
高感度CRP検査との違い
通常のCRP検査とは別に、高感度CRP(hs-CRP)検査という、より微量のCRPを測定できる検査も存在します。高感度CRP検査は、0.1mg/dL以下の低濃度のCRPを正確に測定できるため、心血管疾患のリスク評価に特に有用です。
慢性的な軽度の炎症は、動脈硬化の進行と関連していることが知られています。高感度CRP値が1mg/L(0.1mg/dL)未満であれば心血管疾患のリスクは低く、1~3mg/Lで中等度リスク、3mg/L以上で高リスクと評価されます。
ただし、高感度CRP検査は急性の感染症や炎症の診断には適していません。心血管リスクの評価という特定の目的で使用される検査であることを理解しておくことが重要です。
CRP値が高くなる原因と関連疾患
CRP値が上昇する原因は多岐にわたります。最も一般的な原因は細菌感染症です。肺炎、尿路感染症、皮膚感染症、髄膜炎などの細菌性感染症では、CRP値が著しく上昇します。細菌感染症では通常、10mg/dL以上の高値を示すことが多く、重症例では50mg/dLを超えることもあります。
一方、ウイルス感染症では、CRP値の上昇は比較的軽度であることが多く、多くの場合5mg/dL以下に留まります。インフルエンザや風邪などのウイルス性疾患では、CRPはあまり上昇しないか、軽度の上昇にとどまる傾向があります。
このため、CRP値の測定は細菌感染症とウイルス感染症を鑑別する一つの手がかりとなります。ただし、CRP値だけで確定診断はできないため、他の検査所見や症状と合わせて総合的に判断する必要があります。
自己免疫疾患とCRP値
自己免疫疾患においても、CRP値は重要な指標となります。関節リウマチでは、関節の炎症に伴ってCRP値が上昇し、疾患の活動性を評価する重要なマーカーとして使用されます。治療によって炎症が抑えられると、CRP値も低下していきます。
全身性エリテマトーデス(SLE)では、疾患の活動期にCRP値が上昇することがあります。ただし、SLEでは他の炎症マーカーと比較してCRPの上昇が軽度であることも特徴の一つです。
炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)でも、腸管の炎症に伴ってCRP値が上昇します。これらの疾患では、CRP値をモニタリングすることで、疾患の活動性や治療効果を評価することができます。
その他のCRP上昇をきたす状態
感染症や自己免疫疾患以外にも、CRP値が上昇する状態は数多く存在します。悪性腫瘍(がん)では、腫瘍による組織の炎症や壊死により、CRP値が持続的に上昇することがあります。
心筋梗塞や脳梗塞などの組織損傷を伴う疾患でも、CRP値は上昇します。心筋梗塞では発症後24~48時間でピークに達し、その後徐々に低下していきます。外傷や手術後の組織損傷でも、同様にCRP値が上昇します。
また、肥満や喫煙、ストレスなども慢性的な軽度の炎症を引き起こし、CRP値をわずかに上昇させる要因となります。妊娠中や、経口避妊薬の使用によってもCRP値が上昇することがあります。
CRP検査の方法と注意点
CRP検査は、一般的な血液検査と同様の方法で行われます。腕の静脈から数ミリリットルの血液を採取し、その血清または血漿中のCRP濃度を測定します。特別な前処置は不要で、食事の影響も受けないため、空腹時でなくても検査が可能です。
測定方法には、ラテックス凝集法、免疫比濁法、免疫比ろう法などがあり、多くの医療機関では自動分析装置を用いて迅速に結果が得られます。通常、数時間から当日中には結果が判明します。
検査前の注意点として、激しい運動や外傷の直後は、それによる一時的な炎症反応でCRP値が上昇することがあります。また、現在服用している薬剤については、医師に伝えておくことが重要です。ステロイド薬や免疫抑制剤などは、CRP値に影響を与える可能性があります。
CRP検査の限界と補完的な検査
CRP検査は非常に有用な検査ですが、いくつかの限界もあります。まず、CRP値の上昇は炎症があることを示しますが、その原因や部位を特定することはできません。CRP値が高い場合は、追加の検査によって原因を究明する必要があります。
また、炎症の程度とCRP値の上昇度合いは必ずしも正確に相関しないことがあります。特定の疾患では、重症であってもCRP値があまり上昇しない場合もあります。
そのため、CRP検査の結果は、白血球数や血沈(赤血球沈降速度)などの他の炎症マーカー、画像検査、培養検査などと組み合わせて総合的に評価することが重要です。症状や身体所見、他の検査結果を総合して、正確な診断を行います。
CRP値が高いと言われたときの対応
健康診断や人間ドックでCRP値が高いと指摘された場合、まず落ち着いて原因を探ることが大切です。一時的な感染症や炎症によって上昇している可能性もあるため、すぐに重大な病気を意味するわけではありません。
CRP値が軽度上昇(0.3~1.0mg/dL)の場合は、数週間後に再検査を行い、持続的な上昇かどうかを確認することが一般的です。一時的な風邪などの軽い感染症であれば、時間とともに正常化します。
中等度以上の上昇(1.0mg/dL以上)や、軽度上昇でも持続する場合は、原因を特定するための精密検査が必要です。医療機関を受診し、詳しい問診、身体診察、追加の血液検査、画像検査などを受けることをお勧めします。
CRP値を正常に保つための生活習慣
慢性的な軽度の炎症を抑え、CRP値を正常範囲に保つためには、日常生活での健康管理が重要です。まず、バランスの取れた食事を心がけましょう。抗酸化物質を多く含む野菜や果物、オメガ3脂肪酸を含む魚類などは、炎症を抑える効果があります。
適度な運動も炎症を抑制する効果があります。週に3~5回、30分程度のウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動がお勧めです。ただし、過度な運動は逆効果になることもあるので、自分の体力に合った運動を選びましょう。
十分な睡眠時間の確保も重要です。睡眠不足は炎症反応を高める要因となるため、毎日7~8時間の質の良い睡眠を心がけてください。禁煙、適正体重の維持、ストレス管理なども、慢性炎症を抑えるために効果的です。
まとめ
CRP検査は、体内の炎症の程度を評価する重要な血液検査です。基準値は0.3mg/dL以下とされ、この値を超える場合は何らかの炎症や感染症が疑われます。細菌感染症、自己免疫疾患、組織損傷、悪性腫瘍など、さまざまな原因でCRP値は上昇します。
CRP値の上昇は、疾患の早期発見や重症度評価、治療効果の判定に役立つ一方で、原因の特定には追加の検査が必要です。健康診断でCRP値が高いと指摘された場合は、医療機関を受診して原因を明らかにし、適切な治療を受けることが大切です。
日常生活では、バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙などの健康的な生活習慣を実践することで、慢性的な炎症を抑え、CRP値を正常範囲に保つことができます。定期的な健康診断でCRP値をチェックし、自分の健康状態を把握しておくことも重要です。










