骨密度検査は、骨の強さを評価し、骨粗鬆症のリスクを判定するための検査です。骨粗鬆症は、骨がもろくなり骨折しやすくなる疾患で、特に高齢者に多く見られます。骨折により寝たきりになるリスクが高まるため、早期発見と予防が非常に重要です。
骨密度測定にはいくつかの方法がありますが、最も精度が高く、国際的に標準とされているのがDXA法(デキサ法)です。DXA法は、2種類のX線を使って骨の密度を正確に測定する方法で、主に腰椎と大腿骨の骨密度を測定します。
本記事では、骨密度検査の基本知識、DXA法の特徴と測定方法、YAM値とTスコアの意味と見方、骨粗鬆症の診断基準、検査を受けるべき人、そして骨密度を維持するための生活習慣まで、わかりやすく解説していきます。
目次
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症は、骨の量が減少し、骨の質が劣化することで、骨がもろく折れやすくなる疾患です。骨は見た目には変わりませんが、内部がスカスカになり、わずかな衝撃でも骨折しやすくなります。
日本には約1,280万人の骨粗鬆症患者がいると推定されており、そのうち約80%が女性です。女性は閉経後、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少することで、骨量が急速に低下します。男性も加齢に伴い骨量は減少しますが、女性ほど急激ではありません。
骨粗鬆症の最も深刻な問題は、骨折のリスクが高まることです。特に、脊椎(背骨)、大腿骨近位部(足の付け根)、橈骨遠位端(手首)、上腕骨近位端(肩)などが骨折しやすい部位です。大腿骨近位部骨折は、寝たきりや要介護状態の原因となることが多く、生活の質を大きく低下させます。
骨の代謝と骨量の変化
骨は一度作られたら固定されたものではなく、常に新しい骨が作られ、古い骨が壊されるという代謝(リモデリング)を繰り返しています。骨を壊す細胞(破骨細胞)と骨を作る細胞(骨芽細胞)のバランスにより、骨の量と質が維持されます。
若いころは、骨を作る働きが骨を壊す働きを上回り、骨量は増加します。骨量は20~30代でピークに達し、その後は徐々に減少していきます。女性では、閉経後にこのバランスが崩れ、骨を壊す働きが骨を作る働きを大きく上回るため、急速に骨量が減少します。
骨粗鬆症は、この骨代謝のバランスが崩れ、骨量が過度に減少した状態です。遺伝的要因、生活習慣、栄養状態、運動習慣、疾患、薬剤など、さまざまな要因が骨密度に影響を与えます。
DXA法(DEXA法)とは
DXA法は、「Dual-energy X-ray Absorptiometry」の略で、日本語では二重エネルギーX線吸収測定法と呼ばれます。2種類の異なるエネルギーのX線を照射し、骨と軟部組織(筋肉や脂肪)によるX線の吸収率の違いを利用して、骨の密度を正確に測定する方法です。
DXA法は、骨密度測定の国際的なゴールドスタンダード(標準的な方法)とされています。精度が高く、再現性に優れており、わずかな骨密度の変化も検出できるため、骨粗鬆症の診断だけでなく、治療効果の判定にも適しています。
測定部位は、主に腰椎(第1~第4腰椎)と大腿骨近位部(股関節の付け根)です。これらの部位は、骨粗鬆症による骨折が起こりやすく、また測定精度も高いため、標準的な測定部位とされています。
DXA法の検査方法
DXA法による骨密度検査は、検査台に仰向けに横になり、測定部位にX線を照射するだけの簡単な検査です。痛みは全くなく、検査時間は10~20分程度です。
腰椎の測定では、膝の下にクッションを置いて膝を曲げた姿勢で横になります。大腿骨近位部の測定では、脚を内側に回転させた状態で測定します。測定中は動かずにじっとしている必要がありますが、特に苦痛はありません。
被曝量は非常に少なく、胸部X線撮影の約10分の1程度です。妊娠している可能性がある方以外は、安全に検査を受けることができます。特別な前処置や準備は不要ですが、金属製のボタンやファスナーがない衣服を着用するか、検査着に着替えることが推奨されます。
測定部位:腰椎と大腿骨
腰椎(第1~第4腰椎)は、海綿骨(スポンジ状の骨)が豊富で、骨の代謝が活発な部位です。骨粗鬆症による骨量の変化を早期に検出できるため、スクリーニングや治療効果の判定に適しています。
ただし、腰椎は加齢に伴う変形性変化(骨棘形成、椎間板の石灰化など)の影響を受けやすく、高齢者では骨密度が実際よりも高く測定される可能性があります。また、腰椎の手術歴がある方や、圧迫骨折がある方では、正確な測定が難しい場合があります。
大腿骨近位部(股関節の付け根)の測定は、加齢による変形の影響を受けにくく、高齢者でも正確に測定できます。また、大腿骨近位部骨折は重大な合併症をもたらすため、この部位の骨密度測定は骨折リスクの評価に非常に重要です。
理想的には、腰椎と大腿骨近位部の両方を測定し、より低い方の値を診断に用いることが推奨されています。
YAM値とTスコア:骨密度の評価方法
骨密度検査の結果は、YAM値とTスコアという2つの指標で評価されます。それぞれの意味を理解することで、自分の骨の状態を正しく把握できます。
YAM値(若年成人平均値比)
YAM値は、「Young Adult Mean」の略で、若年成人(20~44歳)の平均骨密度を100%としたときの比率です。自分の骨密度が若い人の平均と比べてどの程度なのかを示す指標です。
日本骨代謝学会による骨粗鬆症の診断基準では、YAM値を用いて以下のように分類されます。YAM値が80%以上であれば正常、70~80%が骨量減少(骨減少症)、70%未満が骨粗鬆症と診断されます。
ただし、これは脆弱性骨折(軽微な外力による骨折)がない場合の基準です。脆弱性骨折がある場合は、YAM値が70%以上でも骨粗鬆症と診断されることがあります。
Tスコア
Tスコアは、若年成人の平均骨密度からの標準偏差を示す指標です。国際的にはこちらが主に使用されています。計算方法は、(測定値-若年成人の平均値)÷若年成人の標準偏差で求められます。
世界保健機関(WHO)の基準では、Tスコアが-1.0以上であれば正常、-1.0~-2.5が骨量減少、-2.5以下が骨粗鬆症と分類されます。Tスコアが-2.5以下で、かつ脆弱性骨折がある場合は、重度骨粗鬆症と診断されます。
Tスコアが-1.0低下するごとに、骨折リスクは約1.5~2倍に増加すると言われています。例えば、Tスコアが-3.0の人は、正常な人と比べて骨折リスクが約3~4倍高くなります。
Zスコア
Zスコアは、同年齢・同性の平均骨密度からの標準偏差を示します。自分の骨密度が、同じ年齢の人と比べてどうなのかを評価する指標です。
Zスコアが-2.0以下の場合、同年齢の平均よりも著しく骨密度が低いことを示し、二次性骨粗鬆症(他の疾患や薬剤が原因で起こる骨粗鬆症)の可能性を考慮する必要があります。
若年者(50歳未満)では、TスコアよりもZスコアを用いて評価することが推奨されます。
骨粗鬆症の診断基準
日本における骨粗鬆症の診断基準は、骨密度と脆弱性骨折の有無によって決定されます。
原発性骨粗鬆症の診断基準
脆弱性骨折がある場合、それだけで骨粗鬆症と診断されます。脆弱性骨折とは、立った高さからの転倒、またはそれ以下の軽微な外力によって起こる骨折のことです。椎体骨折(背骨の骨折)、大腿骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折などが該当します。
脆弱性骨折がない場合は、骨密度によって判定されます。DXA法による腰椎または大腿骨近位部の骨密度がYAM値の70%未満、またはTスコアが-2.5以下の場合、骨粗鬆症と診断されます。
YAM値が70~80%(Tスコア-1.0~-2.5)の場合は、骨量減少(骨減少症)と診断されます。この段階では骨粗鬆症とは診断されませんが、将来的に骨粗鬆症に進行するリスクが高いため、生活習慣の改善や予防的な対策が推奨されます。
二次性骨粗鬆症
二次性骨粗鬆症は、他の疾患や薬剤が原因で起こる骨粗鬆症です。原因疾患としては、副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症、クッシング症候群などの内分泌疾患、関節リウマチなどの膠原病、慢性腎臓病、消化器疾患などがあります。
薬剤では、ステロイド薬の長期使用が最も重要な原因です。その他、抗けいれん薬、抗がん剤、免疫抑制薬なども骨密度低下の原因となります。
若年者で骨密度が著しく低い場合(Zスコア-2.0以下)や、骨折リスクが年齢に比べて高い場合は、二次性骨粗鬆症の可能性を検討し、原因疾患の検索が必要です。
骨密度検査を受けるべき人
以下のような方は、骨密度検査を受けることが推奨されます。まず、65歳以上の女性と70歳以上の男性は、全員が骨密度検査の対象となります。加齢により骨密度が低下し、骨折リスクが高まるためです。
閉経後の女性は、エストロゲンの減少により骨量が急速に低下するため、閉経後は定期的な骨密度検査が推奨されます。特に、早期閉経(45歳未満)の方はリスクが高くなります。
既に脆弱性骨折(特に椎体骨折や大腿骨近位部骨折)を起こしたことがある方、骨粗鬆症の家族歴がある方、低体重(BMI 19未満)の方、喫煙者、過度の飲酒習慣がある方なども、若い年齢から骨密度検査を受けることが推奨されます。
骨粗鬆症のリスク要因
ステロイド薬を長期間使用している方は、ステロイド性骨粗鬆症のリスクが高いため、定期的な骨密度検査が必須です。その他、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、関節リウマチ、慢性腎臓病などの疾患がある方も、骨密度検査が推奨されます。
生活習慣では、カルシウムやビタミンDの摂取不足、運動不足、日光浴不足なども骨密度低下のリスク要因です。また、若い女性の過度のダイエットによる無月経も、骨密度低下の原因となります。
これらのリスク要因を持つ方は、年齢に関係なく骨密度検査を受けることを検討してください。
骨密度を維持・改善する方法
骨密度を維持し、骨粗鬆症を予防するためには、生活習慣の改善が重要です。
栄養:カルシウムとビタミンD
カルシウムは骨の主要な成分であり、1日あたり700~800mgの摂取が推奨されます。牛乳・乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜などに多く含まれています。
ビタミンDは、カルシウムの吸収を促進し、骨の形成に重要な役割を果たします。1日あたり400~800IU(10~20μg)の摂取が推奨されます。魚類(サケ、サンマ、イワシなど)、きのこ類に多く含まれています。
また、ビタミンDは日光を浴びることで皮膚でも合成されます。1日15~30分程度、手足を日光に当てることで、必要なビタミンDの一部を体内で作ることができます。ビタミンKも骨の形成に重要で、納豆や緑黄色野菜に多く含まれています。
運動:骨に刺激を与える
運動は骨に刺激を与え、骨形成を促進します。特に、ウォーキング、ジョギング、階段昇降などの体重を支える運動(荷重運動)が効果的です。週に3~5回、1回30分程度の運動が推奨されます。
筋力トレーニングも、骨に刺激を与えるとともに、転倒予防にもつながります。バランス訓練や柔軟性を高める運動も、転倒リスクを減らすために重要です。
ただし、既に骨粗鬆症と診断されている方や、骨折のリスクが高い方は、無理な運動は避け、医師や理学療法士の指導の下で適切な運動を行うことが大切です。
生活習慣の改善
禁煙と節酒も重要です。喫煙は骨密度を低下させ、骨折リスクを高めます。過度の飲酒も骨の健康に悪影響を与えます。
転倒予防も骨粗鬆症対策として重要です。自宅の段差をなくす、照明を明るくする、滑りにくい靴を履くなど、生活環境を整えることで、転倒リスクを減らすことができます。
骨密度が低いと診断された場合や、骨折リスクが高いと判断された場合は、薬物療法も検討されます。骨粗鬆症治療薬には、骨吸収を抑制する薬(ビスホスホネート製剤、SERM、デノスマブなど)や、骨形成を促進する薬(テリパラチドなど)があります。医師と相談して、適切な治療を受けましょう。
まとめ
骨密度検査のDXA法は、2種類のX線を使って骨の密度を正確に測定する検査で、骨粗鬆症の診断の国際標準とされています。主に腰椎と大腿骨近位部を測定し、YAM値やTスコアによって骨の状態を評価します。YAM値70%未満(Tスコア-2.5以下)で骨粗鬆症と診断されます。
骨粗鬆症は、骨がもろくなり骨折しやすくなる疾患で、特に閉経後の女性や高齢者に多く見られます。大腿骨近位部骨折は寝たきりの原因となるため、早期発見と予防が重要です。65歳以上の女性、70歳以上の男性、閉経後の女性、骨折の既往がある方などは、定期的な骨密度検査が推奨されます。
骨密度を維持するには、カルシウムとビタミンDの十分な摂取、適度な運動、禁煙、節酒などの生活習慣改善が重要です。骨密度が低いと診断された場合は、必要に応じて薬物療法も検討されます。定期的な検査と適切な対策により、骨の健康を守りましょう。










