HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症は、早期発見・早期治療により、長期にわたって健康な生活を送ることが可能になっています。
しかし、HIVに感染しても初期には自覚症状がないことが多く、検査を受けなければ感染に気づかないケースがほとんどです。
本記事では、HIV検査の種類や受けるタイミング、匿名で検査を受ける方法、そして陽性だった場合の対応について詳しく解説します。
HIVとエイズの違い
HIVはヒト免疫不全ウイルスのことで、エイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)はHIV感染が進行した状態を指します。
HIVに感染すると、免疫システムの中心的な役割を担うCD4陽性Tリンパ球が徐々に破壊されます。治療を受けずに放置すると、免疫力が著しく低下し、通常では発症しない日和見感染症や悪性腫瘍を発症するようになります。この状態がエイズです。
現在は抗HIV薬による治療が進歩しており、早期に治療を開始すれば、エイズの発症を防ぎ、通常の寿命を全うできる可能性が高まっています。
HIV検査の種類
スクリーニング検査
最初に行われるのがスクリーニング検査です。第4世代の抗原抗体同時検査が現在の主流で、HIVの抗体とp24抗原を同時に検出できます。
この検査は感度が高く設計されているため、感染者を見逃さないことを優先しています。そのため、偽陽性(実際には感染していないのに陽性となる)が起こる可能性があります。
確認検査
スクリーニング検査で陽性または判定保留となった場合、確認検査が行われます。ウエスタンブロット法やNAT検査(核酸増幅検査)などが用いられ、より特異性の高い方法でHIV感染の有無を確定します。
確認検査で陽性となった場合に、HIV感染と診断されます。
迅速検査
保健所や一部の医療機関では、15〜30分程度で結果がわかる迅速検査を実施しているところもあります。迅速検査で陽性の場合は、通常の確認検査を受ける必要があります。
HIV検査を受けるタイミング
HIV検査には「ウインドウ期」と呼ばれる、感染しても検査で検出できない期間があります。
第4世代の抗原抗体検査では、感染から約4週間後に検出可能となります。より確実な結果を得るためには、感染の機会から3か月以上経過してから検査を受けることが推奨されています。
ウインドウ期に検査を受けて陰性だった場合でも、3か月後に再検査を受けることで、より正確な結果が得られます。
匿名・無料で受けられるHIV検査
全国の保健所では、匿名・無料でHIV検査を受けることができます。予約制の場合が多いため、事前に最寄りの保健所に確認しましょう。
また、一部の自治体では夜間・休日検査や、郵送検査キットの配布を行っているところもあります。
医療機関で検査を受ける場合は、自費診療となることが多く、費用は3,000〜10,000円程度が目安です。人間ドックのオプション検査として追加できる場合もあります。
HIVの主な感染経路
HIVの感染経路は限られており、日常生活で感染することはありません。主な感染経路は以下の通りです。
性的接触による感染が最も多く、コンドームの使用により感染リスクを大幅に低減できます。
血液を介した感染としては、注射器の共用などが挙げられます。また、母子感染(妊娠・出産・授乳)もありますが、適切な対策により予防可能です。
握手や咳、食器の共用、入浴などでは感染しません。
陽性だった場合の対応
確認検査で陽性と診断された場合は、HIV診療を行っている専門医療機関(エイズ治療拠点病院など)を受診します。
現在のHIV治療は、複数の抗HIV薬を組み合わせて服用する方法が標準です。1日1回の服薬で済む合剤も開発されており、治療の負担は軽減されています。
早期に治療を開始し、ウイルス量を検出限界以下に抑えることで、免疫機能を維持し、他者への感染リスクも大幅に低下させることができます。
まとめ
HIV検査は、スクリーニング検査と確認検査の2段階で行われ、感染の有無を正確に判定します。
ウインドウ期があるため、感染の機会から3か月以上経過してから検査を受けることが推奨されます。保健所では匿名・無料で検査を受けられます。
HIVは早期発見・早期治療により、長期にわたって健康な生活を送ることが可能です。感染リスクのある行為があった場合は、ためらわずに検査を受けましょう。










