血液検査(CBC・血算)とは?白血球・赤血球・血小板の見方を徹底解説

血液検査(CBC・血算)とは?基本的な知識をわかりやすく解説

血液検査は、健康診断や人間ドックで必ず行われる基本的な検査です。その中でも「CBC(Complete Blood Count)」または「血算(血球算定)」と呼ばれる検査は、血液中の細胞成分(白血球、赤血球、血小板)の数や性状を調べる検査です。

この検査により、貧血、感染症、血液疾患、炎症性疾患など、さまざまな病気の兆候を発見できます。

血液は、液体成分である血漿と、細胞成分である血球から成り立っています。血球には、酸素を運ぶ赤血球、病原体と戦う白血球、出血を止める血小板の3種類があります。

これらの細胞は骨髄で作られ、一定の寿命を終えると脾臓や肝臓で分解されます。CBC検査では、これらの血球の数や形、大きさなどを詳しく調べることで、体の異常を早期に発見できます。

赤血球とヘモグロビン:貧血の指標

赤血球は、肺で取り込んだ酸素を全身の組織に運び、二酸化炭素を肺に運ぶ重要な役割を担っています。赤血球の中にはヘモグロビン(血色素)という鉄を含むタンパク質があり、これが酸素を運搬します。

赤血球数とヘモグロビン値の正常範囲

赤血球数(RBC)の正常値は、男性で400~550万/μL、女性で350~500万/μLです。ヘモグロビン値(Hb)の正常値は、男性で13.5~17.5g/dL、女性で11.5~15.5g/dLとされています。

女性の方が正常値が低いのは、月経による定期的な出血があるためです。これらの値が正常範囲を下回ると貧血、上回ると多血症と診断されます。

貧血の種類と原因

貧血には、いくつかのタイプがあります。最も多いのが鉄欠乏性貧血で、鉄分の不足により十分なヘモグロビンが作れない状態です。女性に多く、月経過多、偏った食事、胃腸からの出血などが原因となります。

悪性貧血は、ビタミンB12や葉酸の不足により赤血球が正常に作られない状態です。溶血性貧血は、赤血球が通常より早く壊される状態で、自己免疫疾患や遺伝性疾患が原因となります。

貧血を示すその他の指標

ヘマトクリット値(Ht)は、血液中に占める赤血球の容積の割合を示します。正常値は男性で40~50%、女性で35~45%です。貧血では低下し、多血症では上昇します。

MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)といった指標は、貧血のタイプを分類するために重要です。これらの値により、鉄欠乏性貧血か、ビタミン欠乏性貧血か、その他の貧血かを判別できます。

白血球:感染症と免疫の指標

白血球は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体から体を守る免疫細胞です。白血球には、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球の5種類があり、それぞれ異なる役割を担っています。

白血球数の正常範囲と異常値の意味

白血球数(WBC)の正常値は、3500~9000/μLです。この値が高い(白血球増多)場合、細菌感染、炎症性疾患、ストレス、喫煙、白血病などの可能性があります。

一方、低い(白血球減少)場合は、ウイルス感染、薬剤の副作用、骨髄の機能低下、自己免疫疾患などが考えられます。白血球減少が著しい場合は、感染症にかかりやすくなるため注意が必要です。

白血球分画:5種類の白血球の役割

好中球は白血球の50~70%を占め、細菌感染と戦う主要な細胞です。細菌感染症では好中球が増加します。リンパ球は20~40%を占め、ウイルス感染や免疫反応に関与します。ウイルス感染症ではリンパ球が増加します。

単球は2~8%を占め、マクロファージに分化して異物を貪食します。好酸球は1~5%を占め、アレルギー反応や寄生虫感染で増加します。好塩基球は0~2%と最も少なく、アレルギー反応に関与します。

白血球異常が示す主な疾患

白血球数が著しく増加している場合、白血病(血液のがん)や骨髄増殖性疾患の可能性があります。特に10000/μL以上の高値が続く場合や、未熟な白血球(芽球)が見つかった場合は、速やかに血液内科を受診する必要があります。

慢性的な白血球減少は、骨髄異形成症候群や再生不良性貧血などの骨髄疾患の可能性があります。これらは早期発見と治療が重要です。

血小板:止血機能の指標

血小板は、出血した際に血を止める(止血)役割を担う小さな細胞です。傷口に集まって血栓を作り、出血を防ぎます。血小板の異常は、出血傾向や血栓形成のリスクに関連します。

血小板数の正常範囲と異常値

血小板数(PLT)の正常値は、15万~35万/μLです。10万/μL以下になると血小板減少症と診断され、出血しやすくなります。5万/μL以下では重度の出血傾向があり、1万/μL以下では自然出血のリスクが高まります。

一方、血小板が増加している場合(血小板増多症)は、血栓形成のリスクが高まります。慢性炎症、鉄欠乏性貧血、手術後などで一時的に増加することもありますが、持続的な増加は骨髄増殖性疾患の可能性があります。

血小板減少の原因

血小板減少の原因には、骨髄での産生低下と、末梢での破壊亢進の2つがあります。産生低下は、白血病、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、抗がん剤の副作用などで起こります。

破壊亢進は、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、薬剤性血小板減少、肝硬変による脾腫(脾臓での破壊増加)などが原因となります。血小板減少が見られた場合は、出血傾向の有無を確認し、原因を特定するための精密検査が必要です。

血小板増多の原因と注意点

血小板が45万/μL以上に増加している場合、本態性血小板血症などの骨髄増殖性疾患の可能性があります。これらの疾患では、血栓症(脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症など)のリスクが高まります。

反応性(二次性)の血小板増多は、鉄欠乏性貧血、炎症性疾患、感染症、がん、手術後などで見られます。原因疾患の治療により、血小板数は正常化します。

血液検査の結果の見方と対応

血液検査の結果を正しく理解し、適切に対応することが重要です。異常値が見つかった場合でも、必ずしも重大な病気とは限りません。

軽度の異常値への対応

健康診断で軽度の異常値(基準値をわずかに外れた程度)が見つかった場合、まずは生活習慣の見直しと再検査が推奨されます。一時的な体調不良、脱水、ストレス、喫煙などで値が変動することがあります。

数週間~数ヶ月後に再検査を行い、異常が持続するか、悪化していないかを確認します。軽度の貧血であれば、鉄分を多く含む食品(レバー、赤身肉、ほうれん草、ひじきなど)を積極的に摂取することで改善することがあります。

精密検査が必要なケース

著しい異常値、複数の項目での異常、異常が持続する場合は、必ず精密検査を受けましょう。血液内科や血液専門医を受診し、骨髄検査、血液塗抹検査、凝固検査などの詳しい検査を受ける必要があります。

特に、白血球数が著しく高い・低い、未熟な細胞(芽球)が見られる、血小板数が5万/μL以下、ヘモグロビン値が7g/dL以下などの場合は、速やかな受診が必要です。

健康な血液を保つための生活習慣

バランスの良い食事が基本です。鉄分、ビタミンB12、葉酸、タンパク質を十分に摂取しましょう。適度な運動は造血機能を促進し、血液循環を改善します。

十分な睡眠とストレス管理も重要です。喫煙は血球に悪影響を与えるため、禁煙が推奨されます。定期的な健康診断を受け、早期に異常を発見することが、健康な血液を維持する鍵となります。

まとめ

血液検査(CBC・血算)は、白血球、赤血球、血小板の数や性状を調べる基本的な検査で、貧血、感染症、血液疾患などの早期発見に役立ちます。赤血球数の正常値は男性400~550万/μL、女性350~500万/μLで、低下すると貧血と診断されます。

白血球数の正常値は3500~9000/μLで、増加は感染症や白血病、減少はウイルス感染や骨髄機能低下を示唆します。

血小板数の正常値は15万~35万/μLで、減少すると出血傾向、増加すると血栓リスクが高まります。軽度の異常値は生活習慣の改善と再検査で対応しますが、著しい異常や持続する異常は精密検査が必要です。

バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙を心がけ、定期的な血液検査により健康な血液を維持しましょう。異常が見つかった場合は、医師の指示に従って適切な治療を受けることが大切です。

ABOUTこの記事をかいた人

20代のとき父親が糖尿病の診断を受け、日々の生活習慣からこんなにも深刻な状態になってしまうのかという経験を経て、人間ドックや健康診断を猛勉強。 数々の書籍などからわかりやすく、手軽に病気の予防に活用してほしいとの思いで「からだマガジン」を運営しています。