胸部CT検査は、X線を使って肺や心臓、縦隔などの胸部臓器を断層画像として撮影する検査です。
胸部X線検査(レントゲン)では見つけにくい小さな肺がんや、肺気腫、間質性肺炎などの病気を早期に発見することができます。
本記事では、胸部CT検査の種類、特に低線量CTによる肺がん検診の有効性、発見できる病気について詳しく解説します。
目次
胸部CT検査とは
胸部CT検査は、X線を使って胸部の断面画像を撮影する検査です。肺、気管支、心臓、大血管、縦隔(胸の中央部分)、胸膜、胸壁などを詳細に観察できます。
胸部X線検査に比べて、より小さな病変を発見でき、病変の形状や大きさ、位置を正確に把握することができます。CT検査では、心臓や骨の陰に隠れた部分も観察できることが大きなメリットです。
人間ドックのオプション検査として、また胸部X線で異常が指摘された場合の精密検査として広く行われています。
低線量CTと通常CTの違い
胸部CT検査には、低線量CT(LDCT: Low-Dose CT)と通常線量CTがあります。
低線量CTは、被曝量を通常CTの1/4〜1/6程度に抑えた検査です。肺がん検診として使用される場合、被曝量は約1〜2mSv程度で、胸部X線検査(約0.1mSv)の10〜20倍程度ですが、通常CTの約10〜15mSvに比べると大幅に低減されています。
低線量CTは肺がん検診に適しており、スクリーニング目的で広く使用されています。一方、精密検査や造影検査が必要な場合は通常線量CTが選択されます。
肺がん検診における胸部CTの有効性
肺がんは日本人のがん死亡原因の第1位であり、早期発見が非常に重要です。
低線量CTによる肺がん検診は、胸部X線検査に比べて早期肺がんの発見率が高いことが多くの研究で示されています。特に、1cm以下の小さな肺がんの検出に優れています。
アメリカでは、喫煙歴のある55〜80歳の方に対して、年1回の低線量CT検診が推奨されています。日本でも、人間ドックや任意型検診として低線量CTを導入する施設が増えています。
胸部CT検査の流れ
胸部CT検査は、放射線科で行われます。検査時間は5〜10分程度と短時間で終わります。
金属類を外し、検査着に着替えた後、CT装置の寝台に仰向けに寝ます。撮影中は息を止める指示に従い、通常は10〜20秒程度の息止めを1〜2回行います。
肺がん検診の低線量CTでは造影剤は使用しません。精密検査で造影CTを行う場合は、点滴から造影剤を注入しながら撮影します。検査後はすぐに日常生活に戻ることができます。
胸部CT検査で発見できる病気
胸部CT検査では、肺だけでなく胸部全体のさまざまな病気を発見することができます。
肺がん、肺結節、肺気腫、間質性肺炎、肺炎、肺結核、気管支拡張症などの肺の病気のほか、縦隔腫瘍、胸膜疾患、大動脈瘤なども検出されます。
それぞれの病気について、CT画像での特徴的な所見をもとに診断が行われます。
肺結節
肺結節は、肺の中に見られる3cm以下の小さな病変です。胸部CTでは、数mm程度の小さな結節も発見することができます。
肺結節には良性のもの(肉芽腫、過誤腫など)と悪性のもの(肺がん、転移性肺腫瘍など)があります。結節の大きさ、形状、辺縁の性状、石灰化の有無などから良悪性を推測します。
小さな結節の場合は経過観察となることが多く、3〜6ヶ月後にCTを再検査して変化を確認します。増大傾向がある場合は精密検査が必要です。
肺気腫
肺気腫は、肺胞(酸素と二酸化炭素を交換する小さな袋)が壊れて拡大する病気で、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の一種です。
CT検査では、肺に低吸収域(黒く抜けた領域)として描出されます。肺気腫の範囲や重症度を視覚的に評価でき、肺機能検査と合わせて病気の進行度を把握します。
主な原因は喫煙であり、禁煙が最も重要な治療・予防法です。
間質性肺炎
間質性肺炎は、肺の間質(肺胞を支える組織)に炎症や線維化が起こる病気の総称です。
CT検査では、すりガラス影、網状影、蜂巣肺などの特徴的な所見が見られます。病変の分布パターンや進行度を詳細に評価でき、間質性肺炎の種類を推測する手がかりになります。
間質性肺炎には特発性肺線維症、膠原病関連間質性肺炎、薬剤性肺炎などさまざまな種類があり、CT所見は診断と治療方針の決定に重要な役割を果たします。
肺がん
肺がんは、CTで最も重要な発見対象の一つです。早期の肺がんは小さな結節として発見されることが多く、低線量CTによるスクリーニングが有効です。
肺がんには、腺がん、扁平上皮がん、小細胞がんなどの種類があり、CT画像での特徴も異なります。腫瘍の大きさ、周囲への浸潤、リンパ節転移、遠隔転移の有無を評価し、病期(ステージ)を決定します。
肺がんが疑われる場合は、気管支鏡検査やCTガイド下生検で組織を採取し、確定診断を行います。
CT検査の被曝と安全性
CT検査はX線を使用するため、わずかながら被曝があります。
低線量胸部CTの被曝量は約1〜2mSv、通常の胸部CTは約5〜15mSv程度です。この程度の被曝量では、がんの発生リスクがわずかに上昇する可能性がありますが、そのリスクは非常に小さいとされています。
肺がん検診による早期発見のメリットは、被曝のリスクを大きく上回ると考えられています。ただし、妊娠中の方は原則としてCT検査は避けるべきです。
検査を受ける際の注意点
胸部CT検査を受ける際の注意点をご紹介します。
検査前の食事制限は通常不要ですが、造影CTの場合は絶食が必要になることがあります。金属類(アクセサリー、下着の金具など)は外してください。
検査中は息止めの指示がありますので、事前に練習しておくとスムーズです。閉所恐怖症の方は、CT装置のガントリー(トンネル状の部分)に入ることに不安を感じる場合がありますので、事前に相談してください。
妊娠中または妊娠の可能性がある方は、必ず事前に申し出てください。
まとめ
胸部CT検査は、肺がん、肺気腫、間質性肺炎などの胸部疾患の発見に優れた検査です。
特に低線量CTによる肺がん検診は、胸部X線検査よりも早期肺がんの発見率が高く、喫煙歴のある方に推奨されています。被曝量を抑えながら詳細な画像が得られるため、スクリーニング検査として広く普及しています。
人間ドックで胸部CTをオプションで追加することで、より精密な肺の健康チェックが可能です。喫煙歴がある方、家族に肺がん患者がいる方は、定期的な胸部CT検査を検討することをおすすめします。










