乳がんは日本人女性がかかるがんの中で最も多い疾患であり、早期発見・早期治療が非常に重要です。
乳房検査にはマンモグラフィ、乳腺エコー(超音波検査)、触診などさまざまな方法があり、それぞれに特徴や得意とする分野があります。
本記事では、各検査の違いや選び方、高濃度乳房への対応について詳しく解説し、自分に合った乳がん検診を選ぶための知識をお伝えします。
目次
乳房検査の種類と基本的な特徴
乳房検査は、乳がんの早期発見を目的として行われる検査です。主な検査方法として、マンモグラフィ、乳腺エコー(超音波検査)、視触診の3種類があります。
自治体が実施する乳がん検診では、40歳以上の女性を対象にマンモグラフィが推奨されていますが、人間ドックや任意検診では複数の検査を組み合わせることも可能です。
それぞれの検査には特徴があり、年齢や乳房の状態によって適した検査方法が異なります。乳がんの早期発見率を高めるためには、自分の状態に合った検査を選択することが大切です。
マンモグラフィの特徴と検査方法
マンモグラフィは、乳房を専用の装置で圧迫しながらX線撮影を行う検査です。乳房内の石灰化や腫瘤(しこり)を発見することに優れており、特に微細な石灰化の検出に高い精度を持っています。
検査時には乳房を上下・左右から圧迫して撮影するため、痛みを感じる方もいますが、圧迫することで鮮明な画像が得られ、被曝量も軽減できます。
撮影時間は両側の乳房で10〜15分程度です。検査結果は「カテゴリー1〜5」で判定され、カテゴリー3以上は精密検査が必要となります。
マンモグラフィのメリット
マンモグラフィの最大のメリットは、触診では発見できない早期の乳がんを検出できる点です。
特に非浸潤性乳管がん(乳管内にとどまっている初期のがん)に特徴的な微細石灰化を発見することに優れています。
また、過去の検査画像と比較することで、わずかな変化も捉えることができます。検査の標準化が進んでおり、施設間での精度差が比較的小さいことも利点です。
マンモグラフィのデメリット
デメリットとしては、乳房を圧迫する際の痛みや不快感があげられます。
また、高濃度乳房(デンスブレスト)の方では乳腺組織が白く映るため、同じく白く映る腫瘤が見えにくくなることがあります。
若年層では乳腺が発達しているため、検出精度が低下する傾向があります。X線を使用するため、わずかながら被曝があることも考慮が必要です。
乳腺エコー検査の特徴と検査方法
乳腺エコー(乳腺超音波検査)は、超音波を使用して乳房内部を観察する検査です。しこり(腫瘤)の発見に優れており、高濃度乳房の方でも精度が落ちにくいという特徴があります。
検査は仰向けの状態で、乳房にジェルを塗り、プローブ(探触子)を当てて行います。痛みはほとんどなく、被曝もありません。
検査時間は両側の乳房で15〜20分程度です。リアルタイムで画像を確認できるため、気になる部分を詳しく観察することも可能です。
乳腺エコーのメリット
乳腺エコーは放射線を使用しないため、妊娠中の方でも安心して受けられます。
また、40歳未満の若年層や高濃度乳房の方では、マンモグラフィよりも腫瘤の検出率が高いとされています。
乳腺と腫瘤のコントラストがはっきりと描出されるため、しこりの形状や内部の性状を詳細に観察できることも大きな利点です。痛みがほとんどないため、検査への抵抗感が少ないこともメリットといえます。
乳腺エコーのデメリット
乳腺エコーのデメリットは、微細な石灰化の検出がマンモグラフィに比べて劣る点です。
非浸潤性乳管がんの一部は石灰化として発見されることが多いため、これらを見逃す可能性があります。
また、検査者の技術や経験によって精度に差が出やすく、施設間でのばらつきが生じることがあります。検査の標準化が難しいことも課題として挙げられています。
視触診の役割と限界
視触診は、医師が目で見て触って乳房の異常を確認する検査です。乳房の形や皮膚の変化、しこりの有無などを確認します。
以前は乳がん検診の中心的な検査でしたが、現在では視触診単独での検診は推奨されておらず、マンモグラフィや超音波検査と組み合わせて実施されることが一般的です。
ただし、乳房の外観や皮膚の変化、乳頭からの分泌物など、画像検査では捉えにくい所見を確認できるため、補助的な検査として重要な役割を果たしています。
高濃度乳房(デンスブレスト)への対応
高濃度乳房とは、乳房内の乳腺組織の割合が多い状態を指します。日本人女性の約4割が高濃度乳房に該当するとされています。
マンモグラフィでは乳腺組織が白く映るため、同じく白く映る腫瘤が背景に紛れて見えにくくなることがあります。これを「マスキング効果」と呼びます。
高濃度乳房の方は、マンモグラフィに加えて乳腺エコー検査を併用することで、乳がんの発見率を高めることができます。自身が高濃度乳房かどうかは、マンモグラフィ検査の際に確認できますので、医療機関に相談してみてください。
年齢別の乳房検査の選び方
乳房検査は年齢や乳房の状態によって適した方法が異なります。
40歳未満の方は乳腺が発達しているため、乳腺エコー検査が適しています。マンモグラフィは乳腺の影響で精度が低下する可能性があるためです。
40歳以上の方は、自治体の乳がん検診ではマンモグラフィが推奨されています。ただし、高濃度乳房の方は乳腺エコーの併用を検討することをおすすめします。
50歳以上の方は、乳腺が脂肪に置き換わっていることが多く、マンモグラフィの精度が高くなります。定期的なマンモグラフィ検査を継続することが重要です。
検査の組み合わせと検診頻度
乳がんの早期発見率を高めるためには、マンモグラフィと乳腺エコーを組み合わせることが効果的とされています。
それぞれの検査が得意とする領域が異なるため、併用することで見逃しを減らすことができます。人間ドックや任意検診では、両方の検査を受けることを検討してみてください。
検診頻度は、40歳以上の方は2年に1回のマンモグラフィ検査が推奨されています。乳がんの家族歴がある方や、過去に乳房の異常を指摘されたことがある方は、より頻繁な検診や精密検査が必要になる場合があります。
まとめ
乳房検査には、マンモグラフィ、乳腺エコー、視触診などがあり、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。
マンモグラフィは微細石灰化の検出に優れ、乳腺エコーはしこりの発見や高濃度乳房の方に適しています。両者を組み合わせることで、より精度の高い検診が可能です。
乳がんは早期発見により高い治療効果が期待できる疾患です。自分の年齢や乳房の状態に合った検査を選び、定期的な検診を継続することで、乳がんの早期発見につなげましょう。不安な点がある場合は、医療機関で相談することをおすすめします。










