人間ドックにいくと必ず行われる腹部超音波検査。ジェルを塗って機械を押し当てていく検査です。ただ、結局のところどんな検査でどんなことがわかるのか疑問ですよね。
今回は腹部超音波検査について、腹部超音波検査でわかること、腹部エコーとの違いはあるのかなどについて詳しく解説していきます。
目次
腹部超音波検査とは?
腹部超音波検査は、超音波を使用して腹部内の臓器を可視化する非侵襲的な診断方法です。
超音波は音波の一種であり、人体に無害であるため、放射線を使用する検査とは異なり、妊婦や子供でも安全に受けることができます。
この検査は、内臓の構造をリアルタイムで観察することができるため、異常の早期発見や診断に非常に有用です。
検査の仕組み
腹部超音波検査では、トランスデューサと呼ばれる装置を使用します。
このトランスデューサから発せられる超音波が体内に入り、臓器や組織に反射して戻ってくる音波をキャッチします。
これにより、コンピューターが画像を生成し、モニターに映し出します。医師はこの画像を見ながら、臓器の形状やサイズ、内部の異常を確認します。
検査の手順
検査を受ける際は、腹部にジェルを塗布します。
ジェルはトランスデューサと皮膚の間の空気を排除し、超音波の伝達を良くするためのものです。
その後、トランスデューサを腹部に当てて動かしながら、必要な部位をスキャンします。検査自体は痛みを伴わず、通常は20〜30分程度で終了します。
腹部超音波検査でわかることは?
腹部超音波検査は、腹部内の多くの臓器や構造を詳細に観察することができます。
検査内容としては、肝臓疾患(肝腫瘍、脂肪肝)、胆嚢・胆管疾患(胆石、胆嚢癌)、腎臓疾患(腎癌、尿管結石)、腹部血管の病気(腹部動脈瘤)、男性の前立腺(前立腺肥大)などが得意分野です。
以下は、この検査で確認できる主な臓器と検出できる異常の例です。
肝臓
肝臓は腹部の右上に位置し、超音波検査で簡単に観察できます。肝臓の大きさや形状、内部の結節や腫瘍、肝硬変の兆候などを確認します。また、脂肪肝や肝炎の診断にも役立ちます。
胆嚢
胆嚢は肝臓の下に位置し、胆汁を貯蔵する役割を持ちます。超音波検査では、胆嚢の石(胆石)や炎症(胆嚢炎)を検出することができます。
膵臓
膵臓は胃の後ろに位置し、超音波検査で確認が難しいこともありますが、腫瘍や膵炎などの異常を検出することができます。
腎臓
腎臓は背中の左右に位置し、尿を生成する重要な臓器です。超音波検査では、腎臓の大きさや形状、結石、腫瘍、水腎症などを確認します。
脾臓
脾臓は腹部の左上に位置し、血液のろ過や免疫反応に関与します。脾臓の拡大や内部の異常を確認します。
その他の臓器
超音波検査では、腹部の大血管やリンパ節、消化管なども観察することができます。異常な拡大や腫瘍、炎症の兆候を確認します。
腹部超音波検査と腹部エコーの違いは?
「腹部超音波検査」と「腹部エコー」は、実際には同じ検査を指します。
日本では「腹部エコー」という表現が一般的に使用されることが多いですが、どちらも超音波を利用して腹部内の臓器を観察する検査です。したがって、両者に技術的な違いはありません。
表現の違い
「超音波検査」は、医学的な用語としてより正式な表現です。一方、「エコー」は一般的な呼び方として広く知られています。
病院やクリニックの案内や説明書においては、どちらの表現も見かけることがありますが、内容は同じです。
膵臓描出不良や膵尾部描出不良の意味は?
腹部超音波検査でよく聞かれる「膵臓描出不良」や「膵尾部描出不良」という表現は、検査中に膵臓の一部または全体が明瞭に観察できない状態を指します。
これにはいくつかの理由が考えられます。
膵臓描出不良の原因
- 体位や姿勢:膵臓は胃や腸などの臓器の背後に位置しているため、体位や姿勢によっては超音波がうまく届かず、描出が困難になることがあります。
- 体脂肪:肥満体型の人では、皮下脂肪や内臓脂肪が多いため、超音波が十分に臓器に届かず、描出が難しくなることがあります。
- 消化管内のガス:胃や腸にガスが多く含まれている場合、超音波がガスに反射されてしまい、膵臓を正確に描出することができません。
- 臓器の位置:膵臓自体が他の臓器に隠れている場合や、解剖学的な変異により位置が異なる場合も描出不良の原因となります。
膵尾部描出不良の意味
膵臓は頭部、体部、尾部の三つの部分に分かれます。膵尾部は脾臓に近く、腹部の左上に位置しています。膵尾部が描出不良となる場合、特に以下の要因が影響します。
- 脾臓の影響:脾臓が膵尾部を覆う位置にあるため、脾臓の影響で超音波が届きにくくなることがあります。
- 消化管のガス:胃や腸のガスが膵尾部の観察を妨げることがあります。
- 体位の影響:膵尾部は特定の体位で観察しにくいことがあり、描出不良となる場合があります。
描出不良の対策
描出不良が疑われる場合、以下のような対策を取ることがあります。
- 体位の変更:患者の体位を変えることで、より良い角度から臓器を観察することができます。
- 空腹時の検査:消化管内のガスを減少させるために、空腹時に検査を行うことがあります。
- 追加の検査:描出不良が続く場合、CTやMRIなどの他の画像診断方法を用いることで、詳細な観察が可能となります。
まとめ
腹部超音波検査は、安全で非侵襲的な方法で腹部内の臓器を観察するために広く利用されています。
この検査では、肝臓や胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓などの臓器の異常を確認することができます。
腹部超音波検査と腹部エコーは同じ検査を指しており、表現の違いによる技術的な差はありません。
膵臓描出不良や膵尾部描出不良は、超音波が膵臓の一部または全体を明瞭に観察できない状態を指し、体位や姿勢、体脂肪、消化管内のガスなどが原因となります。
描出不良が発生した場合、体位の変更や空腹時の検査、追加の画像診断を行うことで対策を取ることが可能です。腫瘍マーカーの値や症状に基づいて、適切な検査と診断を受けることが重要です。