男性更年期(LOH症候群)の症状と治療|テストステロン低下・倦怠感・ED・検査と対策を解説

「最近、やる気が出ない」「疲れが取れない」「ED(勃起不全)が気になる」「なぜかイライラする」——これらの症状が40〜60代の男性に現れている場合、男性更年期障害(LOH症候群:加齢男性性腺機能低下症)の可能性があります。女性の更年期とは異なり、男性のホルモン低下は緩やかに進むため気づきにくく、「単なる老化」「うつ病」と見過ごされることが少なくありません。この記事では、男性更年期の症状・原因・検査・治療法を詳しく解説します。

男性更年期(LOH症候群)とは

LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症)は、加齢とともに男性ホルモン(テストステロン)が低下することで、身体的・精神的・性的な症状が現れる状態です。

テストステロンは精巣(睾丸)で産生され、筋肉・骨格の維持、性機能、気力・集中力、代謝など多岐にわたる機能に関わります。女性の閉経のような明確な時期はなく、一般的に30代後半から年間1〜2%ずつ緩やかに低下します。個人差が非常に大きく、70〜80代でも高いテストステロン値を保つ男性もいます。

日本のLOH症候群の推計患者数は600万人以上とされますが、受診・診断されている患者は一部にとどまっています。

男性更年期の症状チェック(AMS尺度)

男性更年期の症状は「身体症状」「心理症状」「性機能症状」の3分野にわたります。国際的に使われるAMS(Aging Males’ Symptoms)スケールの質問項目をもとに、自分の状態を確認してみましょう。

身体的症状

体力・筋力の低下(以前できた運動が辛くなった)、関節・筋肉の痛み・こわばり、睡眠の質の低下(眠れない・疲れが取れない)、発汗・ほてり(女性更年期ほど顕著ではないが起こることがある)、疲れやすさ・倦怠感などが代表的な身体症状です。

心理的症状

気力・意欲の低下(仕事・趣味への興味がわかない)、集中力・記憶力の低下、抑うつ気分・悲観的な考え方、イライラ・短気になる、不安感などが現れます。うつ病と症状が重なるため、精神科・心療内科で「うつ病」と診断されてもテストステロン低下が背景にある場合があります。

性機能症状

ED(勃起不全)・性欲低下は男性更年期の最も訴えられる症状です。朝勃ち(夜間・早朝勃起)の消失も、テストステロン低下の重要なサインとして知られています。

テストステロン低下を招く生活習慣リスク

加齢以外にも、以下の生活習慣がテストステロン低下を加速させます。

主なリスク因子

肥満(特に内臓脂肪型)は、脂肪細胞がテストステロンを女性ホルモン(エストロゲン)に変換する酵素(アロマターゼ)を産生するため、テストステロンを低下させる大きな要因です。腹囲が増えるほどテストステロンが下がり、テストステロンが下がるほど脂肪がつきやすくなるという悪循環が生じます。

慢性的なストレス・睡眠不足はコルチゾール(ストレスホルモン)を増加させ、テストステロン産生を抑制します。過度の飲酒、喫煙、運動不足も低下を促進します。逆に言えば、生活習慣の改善がテストステロンの維持・回復につながります。

診断——どんな検査が行われるか

男性更年期の診断には、症状評価と血液検査を組み合わせます。

血中テストステロン測定

血液検査で総テストステロン値を測定します。測定は午前中(テストステロン値は朝が最も高く夕方に低い日内変動がある)に行います。日本泌尿器科学会ガイドラインでは、総テストステロンが250ng/dL未満(施設により基準値は異なる)でLOH症候群の可能性が高いとされ、治療の検討が勧められます。

遊離テストステロン(生物活性のある部分)の測定が実態をより正確に反映する場合があります。また、うつ病・甲状腺疾患・高プロラクチン血症との鑑別のため、甲状腺ホルモン・プロラクチン・血糖・脂質などの検査も行われます。

受診科目

男性更年期は泌尿器科・メンズヘルス外来・男性更年期外来が専門的な診療を行っています。精神症状が前面に出ている場合は精神科・心療内科との連携が有用です。かかりつけの内科医に相談してから紹介してもらうことも一つの方法です。

男性更年期の治療

LOH症候群の治療はテストステロンの補充と生活習慣改善の2本柱です。

テストステロン補充療法(TRT)

テストステロン補充療法(TRT)は、不足しているテストステロンを補充することで症状を改善する治療です。日本では主に筋肉注射(エナント酸テストステロン、2〜4週ごとに投与)が用いられます。欧米では経皮ゲル剤(毎日塗布)も広く使われています。

TRTの効果として、性欲・勃起機能の改善、気力・集中力の回復、筋力・骨密度の維持・回復、体脂肪の減少、抑うつ症状の改善などが期待されます。効果は数週間〜数か月で現れることが多いです。

TRTには注意点もあります。前立腺がんの増悪リスクがあるため、治療前にPSA検査(前立腺がん腫瘍マーカー)と直腸診を行い、前立腺がんを除外することが必須です。治療中も定期的な前立腺モニタリングが必要です。また、赤血球増多・睡眠時無呼吸の悪化・精子形成の抑制(妊娠を望む場合は禁忌)などのリスクも説明を受けたうえで治療を開始します。

生活習慣改善でテストステロンを上げる

TRTを行わなくても、生活習慣の改善でテストステロンを高める効果が期待できます。

筋力トレーニング(スクワット・デッドリフトなどの複合関節運動)は最もエビデンスのあるテストステロン上昇法です。週2〜3回、大筋群を使う運動を継続することで効果が出やすくなります。十分な睡眠(7〜8時間)の確保、適正体重の維持(内臓脂肪の減少)、適度なストレス解消法の習慣化も重要です。

亜鉛は精巣でのテストステロン産生に必要なミネラルです。牡蠣・赤身肉・ナッツ類などの亜鉛を多く含む食品を積極的に取り入れましょう。

うつ病との見分け方

男性更年期の精神症状はうつ病と非常に似ており、鑑別が重要です。

うつ病では「気分の落ち込み・悲しみ」が中心症状で、脳内のセロトニン系の機能低下が関与します。LOH症候群では「意欲・活力の低下」「ED・性欲低下」「身体症状(筋力・体力低下)」が前景に立つことが多いです。血中テストステロン測定と精神科的評価を組み合わせて診断します。

LOH症候群のうつ症状には抗うつ薬よりテストステロン補充療法が有効な場合があり、テストステロン低下を見逃したままうつ病治療をしても改善しないケースがあります。

まとめ

男性更年期(LOH症候群)は「男性には関係ない話」ではなく、40〜60代の多くの男性が経験しうる医学的疾患です。倦怠感・意欲低下・ED・不眠・うつ気分が続いている場合は、泌尿器科・男性更年期外来を受診してテストステロン値を測定してみましょう。生活習慣の改善(筋トレ・睡眠・適正体重)と、必要に応じてのTRTにより、多くの方が症状の改善を実感しています。