機能性ディスペプシアの症状と治療|胃もたれ・胃痛・ストレスとの関係を解説

胃カメラで調べても何も異常が見つからないのに、食後の胃もたれ・みぞおちの痛み・膨満感・吐き気が続く――この症状の多くは機能性ディスペプシア(FD: Functional Dyspepsia)と診断されます。かつては「神経性胃炎」や「ストレス性胃炎」と呼ばれていましたが、2013年に正式な診断名として認定された疾患です。日本では人口の10〜20%が経験するとされており、決して珍しくありません。この記事では機能性ディスペプシアの症状・原因・治療法・生活習慣改善のポイントを詳しく解説します。

機能性ディスペプシアとはどんな病気か

機能性ディスペプシアは、胃・十二指腸に潰瘍や腫瘍・ピロリ菌感染などの器質的異常がないにもかかわらず、胃の不快症状が慢性的に続く疾患です。

国際的な診断基準(ローマⅣ基準)では、「食後の膨満感」「すぐお腹が一杯になる早期満腹感」「みぞおちの痛み(心窩部痛)」「みぞおちの焼ける感覚(心窩部灼熱感)」のいずれか1つ以上が6か月以上続き、直近3か月間は週に数日以上症状があることが診断の目安です。

機能性ディスペプシアの2つのサブタイプ

機能性ディスペプシアは症状のパターンによって2つに分類されます。

食後愁訴症候群(PDS)

食事後に誘発される胃もたれ・早期満腹感が中心の症状です。「少し食べただけで満腹になる」「食後に胃がもたれて動けない」というタイプで、胃の運動機能の低下(胃排出遅延)が関与していると考えられています。

心窩部痛症候群(EPS)

食事とは関係なく、みぞおち部分の痛みや灼熱感が現れるタイプです。胃酸過多・胃の知覚過敏が関与しており、逆流性食道炎との区別が必要です。

機能性ディスペプシアの原因とメカニズム

機能性ディスペプシアの原因は一つではなく、複数のメカニズムが絡み合っています。胃の運動機能の低下(食べたものが胃から小腸へ排出される速度が遅くなる)、胃の拡張反応の障害(食後に胃が十分に広がらないことによる早期満腹感)、胃の知覚過敏(通常では痛みを感じない程度の刺激でも不快感を感じる)、十二指腸の過敏性・炎症、脳腸相関の乱れ(ストレスが腸管神経系に影響する仕組み)などが主な原因として挙げられます。

ストレス・睡眠不足・過労・不規則な食生活が症状を悪化させることが多く、過去のピロリ菌感染(除菌後も症状が残ることがある)も関与するとされています。

機能性ディスペプシアの治療法

治療は症状のタイプに合わせた薬物療法と生活習慣改善の組み合わせが基本です。

消化管運動機能改善薬

食後愁訴症候群(胃もたれ・早期満腹感)に対しては、アコチアミド(アコファイド)が日本で初めて機能性ディスペプシアの適応を取得した薬です。胃の収縮運動を促進し、食後の胃排出を改善します。また、ドンペリドン(ナウゼリン)・メトクロプラミド(プリンペラン)・モサプリド(ガスモチン)などの既存の消化管運動改善薬も使用されます。

胃酸分泌抑制薬

心窩部痛症候群(みぞおちの痛み・灼熱感)に対しては、プロトンポンプ阻害薬(オメプラゾール・ランソプラゾール・タケキャブなど)やH2ブロッカー(ガスター)が有効です。

漢方薬

六君子湯(りっくんしとう)は機能性ディスペプシアに対するエビデンスが蓄積されており、胃腸の運動を改善し、食欲不振・胃もたれに効果があります。体質的に胃腸が弱い方、痩せ型の方に適しています。

抗うつ薬・抗不安薬

上記治療で改善しない難治性の場合、低用量の抗うつ薬(三環系・SSRI)や抗不安薬が使われることがあります。これは精神疾患の治療ではなく、脳腸相関を介した胃の知覚過敏を和らげる目的です。

生活習慣改善のポイント

薬物療法と並行して、生活習慣の改善が症状の軽減に重要です。規則正しい食事時間を守り、食べ過ぎ・早食いを避ける、脂っこい食事・甘い菓子・炭酸飲料・アルコール・コーヒーを控える、適度な有酸素運動(ウォーキング30分程度)を習慣化する、十分な睡眠とストレス管理(マインドフルネス・リラクゼーション)を心がけることが効果的です。

逆流性食道炎との違い

胸焼け・酸逆流が主な症状で、特に食後や横になったときに悪化するなら逆流性食道炎が疑われます。機能性ディスペプシアと逆流性食道炎は合併することもあるため、内視鏡検査での正確な診断が重要です。胃カメラで粘膜の状態を確認することで鑑別できます。

まとめ

機能性ディスペプシアは胃の検査で異常がないにもかかわらず続く胃の不快症状で、ストレス・自律神経の乱れ・胃の機能異常が主な原因です。症状タイプに応じてアコファイド・胃酸抑制薬・六君子湯などを使い分けた薬物療法と、食生活の見直しを組み合わせることで多くの患者さんが改善できます。症状が長引く場合は消化器内科を受診し、胃カメラで器質的疾患を除外した上で治療を進めることが重要です。

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20代のとき父親が糖尿病の診断を受け、日々の生活習慣からこんなにも深刻な状態になってしまうのかという経験を経て、人間ドックや健康診断を猛勉強。 数々の書籍などからわかりやすく、手軽に病気の予防に活用してほしいとの思いで「からだマガジン」を運営しています。