2026年、国内ではしか(麻しん)の感染報告が急速に増加しています。2026年第1〜14週(4月8日現在)の累積報告数は236例にのぼり、前年同期を大幅に上回る状況です。
「はしかって子どもの病気では?」と思っている方も多いかもしれませんが、免疫のない大人も同様に感染します。感染力はインフルエンザの約10倍ともいわれるほど強く、適切な対処が遅れると重篤な合併症に至るリスクもあります。
本記事では、はしかの症状・感染経路・潜伏期間を丁寧に解説し、発症した際の受診のポイントや学校・職場での対応まで網羅的にお伝えします。正しい知識を持つことが、自分と周囲を守る第一歩です。
目次
はしか(麻しん)とはどんな病気か
はしか(麻しん)は、麻しんウイルスによって引き起こされる急性のウイルス性感染症です。古くから知られた病気でありながら、感染力は現在でも際立って強く、免疫を持たない人が感染者に接触した場合、ほぼ確実に感染が成立するといわれています。
ワクチン接種が普及した日本では患者数は大きく減少しましたが、接種歴が1回のみの世代や、ワクチン未接種の人を中心に、現在も散発的な流行が繰り返されています。2026年はその傾向が特に顕著で、国立感染症研究所も注意喚起を行っています。
はしかの感染経路:空気感染・飛沫感染・接触感染
はしかが非常に感染力の強い理由のひとつに、3つの感染経路を持つことが挙げられます。それぞれの特徴を理解することが、日常生活での感染予防につながります。
空気感染
感染者が咳やくしゃみをした際に飛び散った飛沫核(ウイルスを含む微粒子)が空気中に漂い、それを吸い込むことで感染します。空気感染は3つの経路のなかで最も感染リスクが高く、換気が不十分な室内では感染者が立ち去った後もウイルスが一定時間漂い続けます。同じ空間にいるだけで感染する可能性があるため、集団感染が起こりやすい理由のひとつです。
飛沫感染
感染者の咳・くしゃみ・会話によって放出された飛沫(水分を含む大きめの粒子)が、直接周囲の人の粘膜(口・鼻・目)に付着することで感染します。至近距離での接触で起こりやすく、マスクの着用や適切な換気が予防に役立ちます。
接触感染
ウイルスが付着した手や物体(ドアノブ・手すりなど)に触れた後、口・鼻・目に触れることで感染します。手洗いと手指消毒の徹底が接触感染の予防において有効です。
はしかの潜伏期間と感染が広がりやすい理由
はしかウイルスに感染すると、通常10〜12日間の潜伏期間を経て発症します。この期間は自覚症状がほとんどなく、感染したことに気づかないまま日常生活を送ることになります。
注意が必要なのは、発症の約2日前(潜伏期間後半)からすでに周囲への感染力が生じている点です。自覚症状がない状態で人に感染させてしまう可能性があるため、はしかが疑われる接触歴がある場合は早めに医療機関に相談することが大切です。
はしかの症状と経過:3つのステージ
はしかの症状は段階的に進行します。それぞれの時期によって症状の特徴と感染力が異なるため、病期を理解しておくことが適切な対応につながります。
カタル期(発症から3〜4日間)
発症初期は38〜39℃程度の発熱、咳、鼻水、結膜炎(目の充血・目やに)など、風邪によく似た症状が現れます。この時期、口の中の粘膜(頬の内側)に「コプリック斑」と呼ばれる白い小さな斑点が現れることがあり、はしか早期診断の重要な手がかりとなります。
カタル期は感染力が最も高い時期であり、「ただの風邪」と思っているうちに周囲への感染を広げてしまうリスクがあります。
発しん期(カタル期後3〜4日間)
カタル期が終わると一度熱が下がりますが、すぐに39〜40℃以上の高熱が再び出始めます。それと同時に、耳の後ろや額から赤い発しん(皮疹)が出現し、頭部から体幹・四肢へと全身に広がっていきます。
発しんは徐々に融合して大きな赤い斑状になることもあり、見た目でも感染症であることが判断しやすくなります。この時期は高熱と全身の発しんにより体への負担が大きく、安静が必要です。
回復期(発しん期の後)
発しんが全身に広がってから数日後、皮疹は茶褐色に変色しながら消退し、発熱も徐々に下がって回復に向かいます。ただし、この時期も免疫機能が低下した状態が続くため、細菌による二次感染(肺炎・中耳炎など)が起こりやすく注意が必要です。
はしかの主な合併症
はしかを「子どものうちにかかる軽い病気」と捉えるのは危険です。先進国であっても、感染者1,000人に1人程度が死亡するとされており、合併症の重篤さが際立っています。
肺炎
最も頻度の高い合併症です。特に乳幼児や免疫機能が低下している人では重症化しやすく、入院が必要になるケースもあります。はしかによる死亡原因の大きな割合を肺炎が占めています。
脳炎・脳症
頻度は約0.1〜0.2%ですが、発症した場合の致死率は約15%と非常に高く、回復した後も精神発達の遅れや痙攣、麻痺などの後遺症が残る場合があります。乳幼児・成人ともに発症する可能性があるため、軽視できない合併症です。
はしかが疑われたときの受診先と注意点
はしかが疑われる場合、受診前に必ず電話で医療機関に「はしかの疑いがある」と伝えてから向かうことが最も重要です。感染力が非常に強いため、待合室での感染拡大を防ぐために、医療機関側が事前に個室対応などの準備を行います。
子どもの場合
かかりつけの小児科またはかかりつけ医を受診してください。電話連絡の際に症状(発熱・発しんなど)を詳しく伝えると、スムーズに対応してもらいやすくなります。
大人の場合
かかりつけ内科または総合内科を受診してください。妊娠中・妊活中の方は、産婦人科にも併せて相談することを強くお勧めします。妊婦がはしかに感染すると、肺炎の合併頻度が高く、流産・早産のリスクが高まることが報告されています。
学校・保育園の出席停止期間の基準
はしかは学校保健安全法に基づく第一種感染症に指定されており、法律上の出席停止期間が定められています。解熱後3日が経過するまでは出席停止となります。
なお、出席停止は「欠席」ではなく法令に基づく措置であるため、出席日数にはカウントされません。職場においても、感染拡大防止の観点から医師の指示に従い出勤を控えることが推奨されます。
まとめ
はしか(麻しん)はインフルエンザの約10倍もの感染力を持つウイルス性感染症です。感染経路は空気感染・飛沫感染・接触感染の3種類で、潜伏期間は10〜12日間です。自覚症状が出る前から感染力を持つため、感染の連鎖が起きやすいのが特徴です。
症状はカタル期・発しん期・回復期の3段階で進行し、カタル期が感染力のピークです。合併症として肺炎や脳炎が起こることがあり、1,000人に1人程度が死亡するとされる侮れない感染症です。
受診前は必ず電話連絡を行い、子どもは解熱後3日間の出席停止が義務づけられています。2026年の流行拡大を受け、正しい知識と早めの対応で自分と周囲を守りましょう。ワクチン接種による予防については、別記事でくわしく解説しています。










