「最近やる気が出ない」「疲れが取れない」「以前より怒りっぽくなった気がする」「性欲が急に減った」——こうした変化を「年のせい」「疲れのせい」と見過ごしていませんか?実は、これらは男性更年期障害(LOH症候群)のサインである可能性があります。
女性の更年期は広く知られていますが、男性にも同様にホルモン変化による更年期があることは、日本ではまだ十分に認知されていません。この記事では、男性更年期(LOH症候群)の症状・テストステロン低下との関係・うつ病との違い・受診科・治療法まで、最新の医療情報をもとにわかりやすく解説します。
目次
男性更年期(LOH症候群)とは?基本知識をわかりやすく解説
男性更年期障害の正式名称はLOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢性腺機能低下症)といいます。加齢に伴い男性ホルモン(テストステロン)が徐々に低下し、さまざまな身体的・精神的症状が現れる状態です。
女性の更年期は閉経を境に急激にエストロゲンが低下する一方、男性のテストステロンは20歳前後でピークを迎えた後、30代から年約1〜2%ずつ緩やかに低下します。40代の約2〜5%、70代では30〜70%でテストステロン値の低下が認められるとされています。女性の更年期と異なり終わりがなく、40代以降いつでも発症しうる点が特徴です。
LOH症候群の主な症状:身体・精神・性機能の変化
LOH症候群の症状は非常に多岐にわたり、大きく身体症状・精神症状・性機能症状の3グループに分類されます。
身体症状として、全身の倦怠感・疲れやすさ・筋力・筋肉量の低下・骨密度の低下・体脂肪の増加(特に腹部)・ほてり・発汗・頻尿などがあります。精神症状として、意欲・集中力の低下・記憶力の低下・イライラ・不安感・抑うつ状態・不眠などが挙げられます。性機能症状として、性欲低下・ED(勃起機能障害)・晨勃(朝の自然な勃起)の消失などが典型的なサインです。
これらの症状が緩やかに起きることが多いため、「年のせい」「仕事の疲れ」と判断されてしまいやすく、診断・治療が遅れがちです。
うつ病との違いと見分け方
LOH症候群の精神症状(意欲低下・抑うつ・不眠)はうつ病と非常に似ており、LOH症候群患者の約40%が精神科・心療内科でうつ病として治療されているが改善しなかったという実態があります。最大の違いはテストステロン補充によって症状が改善するかどうかです。うつ病は抗うつ薬が有効な一方、LOH症候群は抗うつ薬が効きにくく、テストステロン補充で劇的に改善するケースがあります。両疾患が合併することもあるため、40代以降の男性でうつ症状がある場合はテストステロン値の測定を検討することが推奨されます。
LOH症候群の診断:何科を受診すればいい?
LOH症候群を疑う場合は泌尿器科または男性更年期外来(メンズヘルス外来)を受診することをおすすめします。診断には血液検査でテストステロン値(総テストステロン・遊離型テストステロン)を測定します。
診断基準として、遊離型テストステロンが8.5 pg/mL未満の場合にLOH症候群と診断されることが多く(施設により若干異なる)、症状の問診票(AMS評価スコア)と組み合わせて評価します。ただし、テストステロン値は日中の時間帯(朝高く夕方低い)・ストレス状態・肥満度によっても変動するため、複数回測定することもあります。前立腺がんが疑われる場合はテストステロン補充の禁忌となるため、PSA検査(前立腺がんマーカー)も同時に確認します。
LOH症候群の治療法:テストステロン補充療法・漢方・生活習慣改善
LOH症候群の治療の基本は、テストステロン補充療法(TRT)です。現在日本で保険適用となっている方法はテストステロン製剤の筋肉内注射(2〜4週間ごと)で、多くの場合2〜3か月以内に倦怠感・性欲低下・うつ症状・筋力などの改善が実感されます。
テストステロン補充療法の主な副作用として赤血球増加(多血症)・浮腫・前立腺への影響があるため、定期的な血液検査・PSA値のモニタリングが必要です。前立腺がん・多血症・心不全・肝疾患の重症例では禁忌または慎重投与となります。
漢方薬とサプリメントの活用
テストステロン補充療法が使えない場合や、補完的に用いる場合は漢方薬が有効なことがあります。特に「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」は体内のテストステロン分泌を促進することが研究で示されており、倦怠感・意欲低下に用いられます。「八味地黄丸(はちみじおうがん)」は頻尿・性機能低下に、「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」は下肢の冷え・しびれに使用されることがあります。
生活習慣でテストステロンを維持する方法
薬物療法に加えて、生活習慣の改善がテストステロン維持に直接寄与することが多くの研究で示されています。特に有効な習慣として、筋力トレーニング(特に大筋群を使う複合動作・スクワット・デッドリフト等)が週2〜3回のレジスタンス運動でテストステロン分泌を促進します。また、睡眠の質(7〜8時間の十分な睡眠)はテストステロン産生に不可欠で、睡眠不足が続くと数日でテストステロン値が顕著に低下することが知られています。
過度の飲酒・喫煙・肥満(特に腹部肥満)はテストステロンを下げる主要因であるため、これらの改善も重要な治療の一環です。ストレス管理(コルチゾールがテストステロン産生を阻害する)も欠かせません。
まとめ
男性更年期(LOH症候群)は「年のせいだから仕方ない」と放置されがちですが、テストステロン低下による症状は適切な治療と生活習慣改善で大幅に改善できます。40〜50代以降の男性で、原因不明の倦怠感・意欲低下・うつ症状・性機能の変化を感じる方は、一度泌尿器科・メンズヘルス外来でテストステロン値を測定することをおすすめします。
早期発見・早期対応が、仕事・家庭・健康のすべての質を守ることにつながります。「女性だけの問題」ではない男性更年期について、正しい知識を持って自分の体と向き合いましょう。










