ハンフリー視野検査で何がわかる?緑内障の早期発見と受診目安

「健康診断の眼底検査で『視神経乳頭陥凹拡大(ししんけいにゅうとうかんおうかくだい)』と書かれ、要精密検査になった」「視力検査は両目とも1.2でスッキリ見えているのに、本当に緑内障なの?」「眼科で『ハンフリー視野検査』を受けるように言われたけれど、どんな検査なの?」と戸惑っていませんか。

日本人の40歳以上の「20人に1人(約5%)」、70歳以上では「10人に1人」が罹患し、日本の中途失明原因の圧倒的第1位(約4人に1人)を独走している眼の病気が「緑内障(りょくないしょう)」です。

緑内障は、目から脳へと映像を届ける約100万本以上の視神経が徐々に傷つき、見える範囲(視野)が欠けていく病気です。

この病気の最大の恐ろしさは、『片方の目の視野が欠けても、もう片方の目が無意識にカバーし合い、さらに脳が欠けた映像を勝手に補正して埋め合わせてしまうため、視野の半分以上が失われる末期まで本人は全く気づかない』という点にあります。

視力検査では絶対に捉えられない初期の視野欠損を、世界標準の高精度コンピューター解析によってミリ単位で暴き出す唯一の検査が「ハンフリー自動静的視野検査」です。

この記事では、ハンフリー視野検査の仕組み、結果表に書かれた重要数値「MD値」の読み解き方、日本人に急増している正常眼圧緑内障の真実、そして眼科を受診すべき判断基準について専門医が詳しく解説します。

ハンフリー視野検査とは?中心30度の見え方をコンピューターで測定する技術

視野検査には、光を動かして全体の広がりを測る「ゴールドマン動的視野検査」と、一点を見つめた状態で光の強さを変えて感度を測る「ハンフリー静的視野検査」の2種類があります。

緑内障の早期発見と進行度チェックにおいて、世界中の眼科ガイドラインで絶対的スタンダードとして採用されているのが「ハンフリー視野計」です。

お椀のような半球体のドームの中に顔を乗せ、中央にある黄色の光の一点(固視点)をじっと見つめます。

ドームの内側の様々な場所に、強弱の異なる小さな白い光がピカッ、ピカッとランダムに点滅します。

光が見えた瞬間に手元のボタンをカチッと押すことで、読書や運転など日常生活で最も重要となる「中心30度(または24度)」の範囲に存在する数十箇所のポイントについて、光を感じる感度(デシベル:dB)を網羅的に測定します。

【病期判定表】日本緑内障学会ガイドラインによるMD値と重症度分類

ハンフリー視野検査の結果表の中で、眼科専門医が最も重視する総合指標が「MD値(Mean Deviation:平均偏差)」です。

同年代の健康な人の視野感度と比較して、自分の視野全体がどれくらい低下しているかを「マイナス(−)の数値」で表します。

緑内障の病期(ステージ) ハンフリー視野計のMD値 自覚症状と視野の欠け方 推奨される眼圧下降治療
初期緑内障
(早期発見のゴールデンタイム)
0 dB 〜 −6.0 dB 自覚症状は完全ゼロ。視力も良好。
鼻側や中心付近にごく小さな暗点(点状の欠損)が出現。
点眼薬1剤(プロスタグランジン関連薬等)で眼圧を20〜30%下げて進行を完全停止。
中期緑内障 −6.0 dB 〜 −12.0 dB 暗点が弓状につながり(Bjerrum暗点)、大きく広がる。
注意深く片目で見ると「見えない部分」に気づく。
点眼薬を2〜3種類に増量、配合剤へ変更。SLTレーザー治療の検討。
末期緑内障 −12.0 dB 未満
(−20dB以下は重度)
中心部だけがストローから覗いたように筒状に残る。
足元の段差を踏み外す、人や車によくぶつかる。失明危機。
視野温存のため緊急手術(線維柱帯切開術・切除術)の適応。

日本人の緑内障の約7割は「正常眼圧緑内障(NTM)」という衝撃

「眼圧が正常範囲(10〜21mmHg)だから緑内障ではない」という思い込みは、命取りの誤解です。

大規模な疫学調査(多治見スタディ)によって、日本の緑内障患者さんの実に「約7割以上」が、眼圧が正常値であるにもかかわらず視神経が痛んでいく「正常眼圧緑内障」であることが判明しています。

生まれつき視神経が構造的に圧力に弱いため、正常な眼圧であっても耐えきれずに視神経線維が間引かれていきます。

眼圧検査だけでは絶対に発見できず、眼底写真で「視神経乳頭のへこみ(陥凹)」を指摘され、ハンフリー視野検査やOCT(光干渉断層計)検査を受けて初めて診断がつくのです。

検査を正確に受けるための3大コツ

ハンフリー検査は患者さんの集中力が必要な検査です。正確なデータを得るために以下のコツを守りましょう。

1. 光を探してキョロキョロ目を動かさない:中心の目印だけをじっと見つめ続け、視界の隅で光を感じた時にボタンを押します。

2. 見えたか見えないか迷うような「淡い光」でもボタンを押す:機械はあえて見えにくい限界の光を出しています。

3. 瞬きは我慢しない:自然に瞬きをして構いません。疲れたらボタンを長押しすると検査が一時停止します。

40歳を過ぎたら一度は眼科で視野検査を受けよう

緑内障によって一度失われて死滅してしまった視神経は、現代の医学をもってしても二度と元に戻すことはできません。

しかし、初期の段階で発見し、毎日欠かさず目薬を差して眼圧を下げ続ければ、一生涯にわたって失明することなく、十分な視野と視力を保ち続けることができます。

健診で眼底の異常を指摘された方や、血縁に緑内障の方がいる方は、放置せず速やかに眼科を受診してハンフリー視野検査を受けましょう。