脳波検査で何がわかる?てんかんや意識消失の診断と受診目安

「会話中に突然ボーッとして数秒間返事をしなくなった」「突然意識を失って倒れ、けいれんを起こしたと言われた」「病院で『脳波検査(EEG)』を受けるように勧められたけれど、どんな検査なの?」「頭に電気を流されるのではないかと怖くて不安」と悩んでいませんか。

頭痛やめまい、意識消失で病院を受診した際、頭部CTやMRI検査を受けて「脳の血管や構造には異常ありません」と言われるケースは非常に多くあります。

しかし、CTやMRIが「脳の形(骨や血管の見た目)」を写す写真であるのに対し、脳の神経細胞が『今まさに正常なリズムで電気信号を発信しているか(脳の電気的活動)』をリアルタイムに直接捉えることができる唯一の決定打が「脳波検査(Electroencephalography:EEG)」です。

脳波検査は、頭皮に小さな電極を貼り付けて脳の微弱な電流を拾い上げるだけの完全無痛・無害な検査であり、『てんかん発作の確定診断』『原因不明の一時的な意識消失や失神の鑑別』『認知症や肝性脳症による意識混濁の評価』に絶対不可欠な医療技術です。

頭に電気を流されることは一切なく、ただ横になってリラックスしているだけで脳の健康状態が克明に記録されます。

この記事では、脳波検査の仕組み、正常なアルファ波などの基礎律動、てんかんを証明する棘波(スパイク)の見方、そして脳神経内科を受診すべき判断基準について専門医が詳しく解説します。

脳波検査(EEG)とは?脳の神経細胞の「電気のおしゃべり」を記録する技術

私たちの脳の中には、約千数百億個もの神経細胞(ニューロン)が密集してネットワークを形成しています。

思考したり、体を動かしたり、感情を抱くたびに、神経細胞の間で微弱な電気信号(数マイクロボルトから数十マイクロボルト)が絶え間なく飛び交っています。

脳波検査では、国際基準である「国際10-20法」に基づき、頭皮の決められた位置に約20個の小さな皿電極をペーストで装着します。

電極が頭皮を通じて脳表面の電気的電位差を感知し、高度なアンプで何十万倍にも増幅してコンピューター画面に波形としてリアルタイム描出します。

外から脳へ電気や磁気を当てることは一切なく、脳から漏れ出ている自然な電気信号をマイクで拾うだけの完全無痛の安全な検査です。

【波形分類表】日本臨床神経生理学会基準による脳波の基礎リズム一覧

健康な成人が目を閉じて安静にしている時の脳波は、周波数(1秒間の波の数:Hz)によって以下の4つの帯域に分類されます。

脳波の種類 周波数(Hz) 出現する状態と生理的意味 異常判定のポイント
アルファ(α)波
(正常安静時の主役)
8 〜 13 Hz 目をつぶってリラックスした覚醒時に「後頭部優位」に出現。
目を開けると一瞬でサッと消える(開眼抑制)。
左右で波の高さが著しく異なる場合や、開眼しても消えない場合は局所病変を疑う。
ベータ(β)波
(速波)
14 〜 30 Hz 目を開けて活発に活動している時、緊張や思考時、前頭部優位。 睡眠薬や抗不安薬の内服で広範囲に増加することがある。
シータ(θ)波
(徐波:遅い波)
4 〜 7 Hz うとうとと浅い眠りに入った入眠期、小児の脳波。 成人がしっかり目覚めている時に出現したら「異常徐波」。脳機能低下。
デルタ(δ)波
(最徐波)
0.5 〜 3 Hz ぐっすり深い眠り(ノンレム睡眠)の時、乳幼児の脳波。 覚醒成人の一箇所に持続して出現する場合、脳腫瘍や脳梗塞の局所巣を疑う。

てんかんを暴き出す「発作性異常波(てんかん波)」とは?

脳波検査が最も威力を発揮するのが「てんかん」の診断です。

てんかんとは、脳の一部の神経細胞が突然ショートして無秩序に一斉に過剰放電を起こす病気です。

脳波を記録すると、滑らかな基礎律動の中に突然、以下の鋭いトゲのような波が割り込んできます。

1. 棘波(きょくは:Spike):持続時間が20〜70ミリ秒の極めて鋭利な針状のトゲの波。

2. 鋭波(えいは:Sharp wave):持続時間が70〜200ミリ秒の尖った波。

3. 棘徐波複合(きょくじょはふくごう):トゲの波と大きな丸い遅い波がペアになってリズミカルに連発する波。

発作を起こしていない普段の安静時であっても、これらの「てんかん波(発作間欠期異常放電)」が高確率で記録されるため、問診だけでは分からないてんかんの確実な証拠を掴むことができます。

潜在的な異常をあぶり出す「3大賦活(ふかつ)試験」

安静にしているだけでは異常波が出ない場合、あえて脳に軽い刺激を与えて異常波を誘発するテストを行います。

・過呼吸賦活:メトロノームに合わせて「ハァ、ハァ」と大きく深呼吸を3分間繰り返します。血液中の二酸化炭素が減って脳血管が収縮し、欠神てんかん特有の「3Hz棘徐波」が誘発されます。

・光刺激賦活:目の前でストロボライトを様々なスピードでピカピカと点滅させます(光過敏性てんかんの検出)。

・睡眠賦活:自然に眠りに落ちる入眠期は、てんかん波が最も出現しやすいゴールデンタイムです。

どのような時に脳波検査を受けるべきか?

以下に心当たりがある方は、速やかに「脳神経内科」や「てんかん専門外来」を受診してください。

・数秒間、呼びかけに反応せず記憶が途切れるエピソードを家族から指摘された

・意識を失って倒れた(心臓の失神かてんかん発作かの厳密な鑑別が必要)

・睡眠中に手足をビクンと激しく痙攣させたり、突然起き上がって無意識に行動する

・急激に物忘れが進み、意識がぼんやりと曇る時間帯がある

痛みのない脳波検査で脳の電気リズムを可視化し、適切な抗てんかん薬による治療で再発のない安心な毎日を取り戻しましょう。