動悸の原因と対処法|不整脈・食後の動悸・更年期との関係・何科を受診すべきかを解説

「突然、心臓がドキドキ・バクバクして止まらない」「横になっているときに脈が飛ぶ感じがする」——こうした動悸の症状は、誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。動悸は必ずしも重大な心臓病のサインとは限りませんが、中には緊急性の高い不整脈が隠れているケースもあります。この記事では、動悸のメカニズム・よくある原因・気をつけるべき症状・受診のタイミングまで詳しく解説します。

動悸とはどんな状態か

動悸とは、自分の心臓の拍動を普段より強く・速く・不規則に感じる状態の総称です。通常、私たちは自分の心臓の拍動を意識しませんが、何らかの原因で心拍数・リズム・収縮力が変化したとき、または心臓への感受性が高まったときに動悸として感じます。

動悸の感じ方は人によってさまざまです。「ドキドキ・バクバク(頻脈)」「ドン・ドン(強い拍動)」「脈が飛ぶ・抜ける(期外収縮)」「ドクドクと不規則(心房細動など)」など、症状の性質が原因の見当をつける手がかりになります。

動悸の原因——心臓以外にも多い

動悸の原因は大きく「心臓性」と「非心臓性」に分けられます。実は動悸の多くは非心臓性、つまり心臓そのものに病気がない場合でも起こります。

非心臓性の原因(生理的・内分泌・精神的)

最も多いのが自律神経の乱れによるものです。ストレス・睡眠不足・過労・不規則な生活が自律神経バランスを崩し、心拍数が増加したり、脈のリズムが乱れたりします。特に夜間や安静時にドキドキする場合は自律神経が関与していることが多いです。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)は代表的な内分泌疾患で、甲状腺ホルモンの過剰産生により心拍数が持続的に増加します。慢性的な動悸・体重減少・手のふるえ・暑がりなどを伴う場合は甲状腺の検査が必要です。

貧血では赤血球(ヘモグロビン)が減少し、全身への酸素供給を補おうと心臓が速く拍動するため動悸が起こります。特に女性の鉄欠乏性貧血では疲れやすさ・動悸・息切れが三大症状です。

カフェインの過剰摂取、アルコール、市販の風邪薬・鼻炎薬(交感神経刺激成分を含むもの)なども動悸の原因になります。

更年期による動悸

更年期の動悸は女性に多く見られます。閉経前後(40〜55歳頃)にエストロゲンが急激に減少すると、自律神経バランスが乱れ、ホットフラッシュ(のぼせ・発汗)とともに動悸が起こります。安静時や就寝中に突然ドキドキすることが多く、数分で自然に治まるのが特徴です。

更年期の動悸は、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬(加味逍遙散・桂枝茯苓丸など)で改善することがあります。ただし、更年期症状に見えても心臓疾患が隠れている可能性があるため、心電図・ホルター心電図での除外診断は重要です。

食後に起こる動悸——原因と対策

食事後、特に大食・早食いのあとに動悸を感じる方は少なくありません。これには複数のメカニズムがあります。

食後動悸のメカニズム

食後は消化吸収のために血流が消化器系に集まります。このとき心拍出量を増やして血液循環を補うため、心拍数が若干増加します。大量に食べたり、特に食後の血糖値スパイク(急激な血糖上昇)が起こると、インスリンが大量分泌され低血糖気味になることで動悸・手のふるえが生じることがあります。

アルコールも食後の心拍数増加・不整脈(休日心臓症候群)の原因となります。適量とされるアルコールでも敏感な人では動悸が起こります。

食後動悸の対策としては、食事は腹八分目に抑える、よく噛んでゆっくり食べる、食後すぐに激しい運動をしない、が基本です。

心臓性の動悸——不整脈との関係

動悸の原因として重要なのが不整脈です。不整脈とは心臓の電気的信号の異常で、心拍数・リズムが不規則になる状態を指します。

期外収縮(脈が飛ぶ)

「脈が一瞬飛ぶ」「ドンと強い拍動がある」と感じる場合は期外収縮が最も多い原因です。心房(上心室)または心室から正規のタイミング外に電気信号が発生するもので、健康な人でも1日数千〜数万回起こることがあります。多くの期外収縮は治療不要ですが、心臓病を背景に多発する場合は治療が必要です。

心房細動(最も注意が必要な不整脈)

心房細動は心房が毎分350〜600回の細動を起こし、不規則な心拍が生じる不整脈です。日本の患者数は約100万人以上とされ、65歳以上では約5〜10人に1人が罹患しています。

心房細動の最大のリスクは心原性脳塞栓症です。心房内に血栓が形成され、脳に飛んで脳梗塞を引き起こします。心房細動による脳梗塞は重症化しやすく、後遺症・死亡リスクが高いため、早期発見と抗凝固薬による血栓予防治療が不可欠です。

「脈が完全に不規則にバラバラ打つ」「脈をとると1分間に100回以上で不規則」という場合は心房細動の可能性が高く、早急な受診が必要です。

WPW症候群・発作性上室頻拍

若い人の急激な動悸(突然始まり突然止まる)では、WPW症候群や発作性上室頻拍(SVT)が原因のことがあります。心拍数が150〜250回/分と非常に速くなりますが、多くの場合は自然に止まります。迷走神経刺激法(息を止めてお腹に力を入れる・冷水を飲む)で停止することがあり、反復する場合はカテーテルアブレーション(根治治療)が有効です。

緊急受診が必要な動悸のサイン

以下の症状を伴う動悸は、心臓の重大な病態を示している可能性があり、直ちに救急受診してください。

胸の強い痛み・締め付け感、失神または意識を失った、呼吸困難(呼吸がうまくできない)、冷や汗・顔面蒼白、手足の麻痺・しびれ・言語障害(脳梗塞の前兆)などがある場合は、119番に連絡することをためらわないでください。

動悸の検査——受診時に行われること

動悸の診断には、心電図が最も重要な検査です。通常の心電図は安静時の12誘導心電図で、心房細動・ブロック・虚血性変化を評価します。

ホルター心電図は24〜48時間、心電図を記録し続ける装置を装着して日常生活を送る検査で、発作性の不整脈の検出に特に有用です。動悸が毎日あるわけでなく「たまに起こる」場合に威力を発揮します。

そのほか、甲状腺機能・血糖・貧血の血液検査、心臓超音波検査(心エコー)も組み合わせて行われます。

動悸は何科を受診すればいい?

動悸の受診先は、まず循環器内科が最適です。不整脈の専門的検査(心電図・ホルター)と治療ができます。

更年期症状として動悸がある場合は、婦人科・更年期外来への受診も有効です。甲状腺疾患が疑われる場合は内分泌内科・甲状腺専門外科を受診します。まずかかりつけ医を受診し、必要に応じて専門科に紹介してもらうのがスムーズです。

まとめ

動悸はストレス・自律神経・更年期などの非心臓性原因から、不整脈・心臓病まで幅広い原因があります。胸の痛み・失神・強い息切れを伴う場合は直ちに救急受診が必要です。繰り返す動悸・安静時の動悸・脈の不規則さが続く場合は、循環器内科を受診してホルター心電図や心エコーで原因を調べましょう。「たまにだから大丈夫」と放置せず、早めの検査で脳梗塞リスクになりうる心房細動を見逃さないことが重要です。