眼底検査・眼圧検査の目的と異常値の見方|緑内障・糖尿病網膜症・動脈硬化の早期発見ガイド

「健康診断の眼底検査で『視神経乳頭陥凹拡大』や『動脈硬化性変化』と書かれていた」「眼圧検査で風を目に当てられて数値が高めだと言われた」「自覚症状は全くないのに眼科の精密検査を受けるよう指示されて不安」と感じていませんか。

眼底検査と眼圧検査は、人間ドックや生活習慣病健診において必ずと言っていいほど実施される極めて重要な目の検査です。

眼底は、人間の体の中で唯一「血管と神経を直接肉眼で観察できる特殊な場所」であり、目自体の疾患だけでなく、全身の動脈硬化や糖尿病、高血圧の進行度を映し出す鏡としての役割を持っています。

特に日本人の失明原因第1位である「緑内障」や、第2位の「糖尿病網膜症」は、初期の段階では視力低下などの自覚症状がほぼゼロであり、眼底検査や眼圧検査で偶然発見されるケースが大半を占めます。

この記事では、眼底検査と眼圧検査で何がわかるのか、眼圧の正常基準値、健康診断でよく見られる異常所見の意味、日本人に多い「正常眼圧緑内障」の真実、そして眼科での精密検査の流れまで徹底解説します。

眼底検査・眼圧検査とは|眼と全身の血管・神経を診る検査

目の構造はカメラに例えられます。レンズにあたるのが「角膜」や「水晶体」、フィルムにあたるのが奥深くにある「網膜(もうまく)」です。

眼底検査は、瞳孔を通して目の奥の網膜、血管(網膜動静脈)、視神経の出口である「視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)」を特殊な眼底カメラや顕微鏡で撮影・観察する検査です。

一方、眼圧検査は、眼球の硬さ(目の中の圧力)を測定する検査で、眼球の形状を保つ房水(ぼうすい)の循環動態を評価します。

これら2つの検査を組み合わせることで、目自体の失明リスクと全身の血管リスクを同時に高精度でスクリーニングできます。

検査名 測定・観察対象 正常基準値・正常所見 発見される主な疾患・異常
眼圧検査(ノンコンタクトトノメーター等) 眼球の内圧(硬さ)。角膜に空気を当てて測定 10〜21 mmHg(基準範囲) 高眼圧症、緑内障、低眼圧症、ブドウ膜炎
眼底検査(視神経乳頭) 視神経が束ねられて脳へ向かう出口の形態・へこみ 陥凹比(C/D比)が0.5未満、リムが保たれている 緑内障(視神経乳頭陥凹拡大)、視神経炎、うっ血乳頭
眼底検査(網膜血管) 網膜の微小動脈・静脈の太さ、走行、交差部 動脈と静脈の比率が約2:3、血管壁が透明で反射正常 高血圧性変化(Scheie分類H)、動脈硬化性変化(Scheie分類S)
眼底検査(網膜実質・黄斑部) 網膜全体の出血、白斑、むくみ、中心視力を司る黄斑部 出血なし、白斑なし、黄斑部が均一で鮮明 糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症、網膜剥離

眼圧検査の基準値と「正常眼圧緑内障」の落とし穴

眼圧検査の数値の見方には、日本人に特有の非常に重要な注意点が存在します。

眼圧の正常値(10〜21mmHg)と高眼圧症

一般的な眼圧の基準値は「10〜21mmHg」と定められています。

眼圧が21mmHgを超えて高くなると、眼球が硬くなって奥の視神経を物理的に圧迫しやすくなり、緑内障を発症するリスクが高まります。

ただし、眼圧が高くても視神経や視野に全く異常がない状態を「高眼圧症」と呼び、定期的な経過観察が行われます。

日本人の緑内障の約7割を占める「正常眼圧緑内障」

「眼圧が正常値(例えば15mmHg)だから緑内障の心配はない」と思い込むのは非常に危険です。

大規模疫学調査(多治見スタディ)により、日本の緑内障患者の約70%以上が眼圧が正常範囲内にある「正常眼圧緑内障」であることが判明しています。

視神経がもともと圧力に対して非常に脆弱であるため、正常範囲内の眼圧であっても視神経が徐々に傷つき視野が欠けていきます。

したがって、緑内障を早期発見するためには、眼圧検査だけでなく「眼底検査」を併せて受けることが絶対に不可欠です。

健診の眼底検査でよく指摘される代表的な異常所見

健康診断の結果票に記載される専門用語の意味を正しく理解しておきましょう。

視神経乳頭陥凹拡大(ししんけいにゅうとうかんおうかくだい)

視神経乳頭の中央にあるくぼみ(陥凹)が、正常よりも大きく広がっている状態です。

視神経線維が圧迫されて死滅し、神経が薄くなってすり減っていることを示しており、緑内障を最も強く疑う所見です。

この判定が出た場合は、自覚症状が全くなくても必ず眼科で視野検査とOCT検査(光干渉断層計)を受けてください。

高血圧性変化・動脈硬化性変化(Scheie分類)

長年の高血圧や脂質異常症により、網膜の細い動脈が硬化して細くなったり(狭細化)、光を反射して銅線や銀線のように見えたり、動脈が静脈を上から押しつぶす(交叉現象)所見です。

眼底血管の動脈硬化の進行度は、そのまま「脳血管や心臓冠動脈の動脈硬化の進行度」と完全に一致するため、脳卒中や心筋梗塞のリスク警告サインとなります。

網膜出血・白斑(はくはん)

網膜の毛細血管が破れて出血している(点状・斑状出血)、または血流障害によって神経組織が虚血に陥り老廃物が沈着している(軟性白斑・硬性白斑)状態です。

糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症、重症高血圧が強く疑われます。

眼科での精密検査の流れ|失明を防ぐ最新テクノロジー

健康診断で要精密検査(判定CやD)となった場合、眼科専門医では以下の高度な検査が行われます。

OCT検査(光干渉断層計)による網膜三次元解析

赤外線レーザーを用いて、網膜や視神経乳頭の断層画像をミクロン単位の高解像度で三次元スキャンする最新検査です。

肉眼の眼底検査では発見できないような「超極早期の視神経線維層の菲薄化(薄れ)」を捉えることができ、視野欠損が始まる数年前の段階で緑内障を確定診断できます。

静的量的視野検査(ハンフリー視野計)

ドーム状の装置の中に顔を固定し、中心の光を見つめた状態で周囲に現れる小さな光が見えたらボタンを押す検査です。

視野のどの部分がどの程度欠けているか(感度低下)をコンピューターで精密に測定し、病気の進行度を判定します。

まとめ

眼底検査と眼圧検査は、自覚症状のないまま進行する緑内障や糖尿病網膜症、全身の動脈硬化を早期発見するための不可欠な検査です。

「見えているから大丈夫」と過信せず、健診で異常を指摘されたら必ず眼科を受診して精密検査を受けましょう。

早期に発見して適切な点眼治療や生活習慣改善を行えば、生涯にわたって良好な視力を維持し、失明を確実に防ぐことができます。