「最近疲れやすい」「立ち上がるとクラッとする」「集中力が続かない」——こうした不定愁訴が続いている方は、実は貧血(鉄欠乏性貧血)が原因かもしれません。日本人女性の約23%が鉄欠乏または貧血の状態にあり、特に20〜40代では約48%が「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)」の可能性があるとも言われています。
この記事では、貧血の症状・種類・原因から、健康診断では見落とされがちな隠れ貧血とフェリチン値の重要性、鉄分豊富な食事・サプリの正しい選び方まで、医療現場の最新情報をもとにわかりやすく解説します。
目次
貧血とは?基本的な知識をわかりやすく解説
貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビン(血色素)の量が基準値を下回った状態を指します。WHOの基準では、成人女性でヘモグロビン値12g/dL未満、成人男性で13g/dL未満が貧血と定義されています。貧血になると全身への酸素供給量が低下するため、疲れやすさ・息切れ・動悸・めまいなどの症状が現れます。
貧血の中で最も多いのが鉄欠乏性貧血で、全貧血患者の約60〜70%を占めています。特に月経がある女性・妊婦・授乳中の女性・成長期の青少年に多く見られます。
貧血の主な種類
鉄欠乏性貧血の他にも、ビタミンB12や葉酸が不足することで赤血球が大きくなる巨赤芽球性貧血(悪性貧血)、慢性疾患(腎臓病・がんなど)に伴う二次性貧血、赤血球が早期に破壊される溶血性貧血などがあります。治療法は貧血の種類によって異なるため、まず原因を特定することが重要です。
貧血の主な症状:見逃しやすいサインとは?
貧血の典型症状として知られるのが、立ちくらみ・めまい・動悸・息切れ・疲れやすさ・頭痛・顔色の青白さなどです。重度になると安静時でも動悸・息切れが起きます。しかし軽度〜中等度の貧血では自覚症状がなかったり、「疲れているだけ」と見過ごされることが多いのが問題です。
特に注目すべき症状の一つが氷食症(ひょうしょくしょう)です。理由もなく氷をガリガリと食べたくなる衝動は、鉄欠乏性貧血の特徴的なサインとされており、こうした症状がある場合は鉄欠乏を疑って血液検査を受けることを強くおすすめします。その他、爪が薄く割れやすくなる・スプーン状になる(匙状爪)・口角炎・舌が炎症を起こして赤くなるなども鉄欠乏のサインです。
「隠れ貧血」とフェリチン値の重要性
通常の健康診断では、ヘモグロビン値のみで貧血を判定します。しかし隠れ貧血(潜在性鉄欠乏症)とは、ヘモグロビン値は正常範囲内でも、体内の鉄の貯蔵量を示すフェリチン値が低下している状態です。
体内の鉄は「貯蔵鉄(フェリチン)→血清鉄→ヘモグロビン」の順に消費されます。つまり、ヘモグロビンが正常でもフェリチンが低ければ、すでに鉄の貯蓄が底をついていることを意味します。フェリチン値の正常範囲は12〜150ng/mL(施設により異なる)ですが、20〜40ng/mL以下では症状が出始める方も多く、12ng/mL以下は明らかな鉄欠乏です。貧血の疑いがある場合はフェリチン値の検査を主治医に依頼することをおすすめします。
貧血の原因:生理・食事・消化管出血
鉄欠乏性貧血の最大の原因は月経による慢性的な失血です。月経量が多い方(月経過多)や月経周期が短い方では特にリスクが高くなります。また、食事からの鉄分摂取不足・急激なダイエット・菜食主義・消化管からの慢性的な出血(胃潰瘍・痔・大腸がんなど)も原因となります。
成長期の中高校生・妊婦・授乳中の女性は鉄の需要が急増するため、特に意識的な鉄摂取が必要です。男性に貧血が見つかった場合は、消化管出血(特に大腸がんからの出血)の可能性があるため、必ず消化器内科でその原因を調べることが重要です。
貧血の改善:食事・サプリメントの正しい知識
鉄欠乏性貧血の食事改善では、鉄分をより多く含む食品を意識的に摂ることが重要です。特に吸収率の高いヘム鉄を多く含む食品(レバー・赤身肉・カツオ・マグロ)を優先し、非ヘム鉄(ほうれん草・豆腐・豆類)はビタミンCと組み合わせて吸収率を上げましょう。
鉄の吸収を助けるもの・妨げるもの
鉄の吸収を高めるのはビタミンC(イチゴ・ブロッコリー・柑橘類など)で、食事中や食後に一緒に摂ることで非ヘム鉄の吸収率を2〜3倍高めることができます。逆に、食事中のお茶・コーヒー・ワインに含まれるタンニンは鉄の吸収を妨げるため、食事中は控えることをおすすめします。また、加工食品に多く含まれるリン酸も鉄の吸収を阻害します。
鉄サプリメントの選び方
食事だけで十分な鉄を摂れない場合(特に月経過多の方・妊婦)は、サプリメントや医薬品の鉄剤が有効です。一般的な鉄剤(フェロケル等のキレート鉄)は胃への負担が比較的少なく、市販品として入手可能です。ただし、過剰摂取は活性酸素の増加を招くリスクもあるため、医師に相談のうえで適切な量を摂ることが重要です。フェリチン値が極端に低い場合は医師から処方される「フェロ・グラデュメット」などの処方鉄剤が効果的です。
まとめ
貧血は「ちょっとした疲れ」に隠れがちな疾患ですが、放置すると心臓や全身への負担が蓄積します。特に女性は隠れ貧血(フェリチン低値)に気づかないまま過ごしているケースが多く、定期的にフェリチン値を含む血液検査を受けることをおすすめします。
ヘム鉄を多く含む食品の積極的な摂取・ビタミンCとの組み合わせ・食事中のお茶やコーヒーを避けるといった食事の工夫から始め、改善が見られない場合や重度の貧血が疑われる場合は、内科・婦人科・消化器内科への受診で原因を特定することが大切です。










