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バリウム検査とは?基本的な知識をわかりやすく解説
バリウム検査は、正式には「上部消化管X線検査」または「胃透視検査」と呼ばれ、バリウム(造影剤)を飲んでX線撮影を行うことで、食道・胃・十二指腸の状態を観察する検査です。胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ポリープなどの病変を発見することを目的としています。
日本では年間約1000万人以上がバリウム検査を受けており、企業の健康診断や人間ドックで最も一般的に実施される胃がん検診の方法です。
バリウムは硫酸バリウムという白い粉末を水に溶かしたもので、X線を通しにくい性質を持っています。これを飲むことで、通常は透けて見えない胃の内壁がX線画像に白く映し出され、凹凸や形状の異常を確認できます。
検査台の上で体の向きを変えながら、さまざまな角度から撮影することで、胃の全体像を立体的に把握できるのがバリウム検査の特徴です。検査時間は通常10~15分程度で完了します。
バリウム検査の前日と当日の前処置
バリウム検査を正確に行うためには、胃の中を空にしておく必要があります。適切な前処置を行うことで、検査の精度が向上し、より正確な診断が可能になります。
前日の過ごし方と食事制限
検査前日の夕食は、21時までに済ませることが推奨されます。消化の良い食事を心がけ、脂っこい料理や繊維質の多い野菜、海藻類は避けましょう。アルコールの摂取も控えることが望ましいです。
就寝前に大量の水分を摂取すると、胃に内容物が残る可能性があるため、水やお茶も適量にとどめます。ただし、脱水を防ぐため、通常の水分補給は問題ありません。
当日朝の注意事項
検査当日の朝は絶食が基本です。水やお茶、コーヒーなども一切飲んではいけません。少量の水でも胃に残っていると、検査画像に影響を与え、病変の見落としにつながる可能性があります。
歯磨きは問題ありませんが、うがいの水を飲み込まないよう注意が必要です。喫煙も胃液の分泌を促進するため避けましょう。常用薬を服用している場合は、事前に医師に相談し、服用の可否を確認します。
バリウム検査の流れと正しい飲み方
バリウム検査は、発泡剤の服用から始まり、バリウムの服用、X線撮影という流れで進行します。各ステップでの注意点を理解しておくことで、スムーズに検査を受けることができます。
発泡剤の服用と目的
最初に服用するのは発泡剤(顆粒状または錠剤)です。これは胃の中で炭酸ガスを発生させ、胃を膨らませて胃壁を広げることで、より詳細な観察を可能にします。少量の水とともに素早く飲み込み、その後はゲップを我慢することが重要です。
ゲップをしてしまうと胃が十分に膨らまず、胃壁のヒダに隠れた小さな病変を見落とす可能性があります。発泡剤を飲んだ後は、すぐにバリウムを飲むよう指示されます。
バリウムの飲み方とコツ
バリウムは150~200ml程度の白い液体で、独特のドロッとした食感とわずかな甘みがあります。一気に飲み干すのではなく、検査技師の指示に従って数回に分けて飲むのが一般的です。
飲みにくさを感じる方も多いですが、鼻から息を吸って口から吐く呼吸を意識すると、比較的飲みやすくなります。最近では、味や飲みやすさを改良したバリウムを使用する施設も増えています。
撮影中の体位変換
バリウムを飲んだ後は、検査台の上で仰向け、うつ伏せ、横向き、斜めなど、さまざまな体位をとりながら撮影が行われます。検査台が傾いたり回転したりするため、最初は戸惑うかもしれません。
検査技師の指示に従って体を動かすことで、胃の全体にバリウムを行き渡らせ、すべての部位を詳細に観察できます。検査中は検査技師とのコミュニケーションが重要で、体調不良を感じたらすぐに伝えましょう。
検査後の下剤服用と白い便について
バリウム検査の最も重要なアフターケアは、下剤の服用とバリウムの排出です。適切な対応を怠ると、便秘や腸閉塞などの合併症を引き起こす可能性があります。
下剤の服用方法とタイミング
検査終了後、必ず下剤が処方されます。多くの施設では、検査直後に1回分、帰宅後に追加で1~2回分服用するよう指示されます。下剤は必ず指示通りに服用し、自己判断で省略してはいけません。
バリウムは腸内で水分を吸収し、時間が経つと硬く固まってしまいます。下剤を服用することで腸の動きを活発にし、バリウムが固まる前に体外へ排出させることが目的です。
水分補給の重要性
検査後は積極的に水分を摂取しましょう。1日に1.5~2リットル程度の水やお茶を飲むことで、バリウムの排出が促進されます。アルコールやカフェインの多い飲料は利尿作用があり、かえって脱水を招く可能性があるため避けます。
食事は検査後1時間程度経過してから摂取可能です。最初は消化の良いものから始め、食物繊維を含む食品を積極的に摂ることで、腸の動きを助けます。
白い便が出るまでの期間と対処法
バリウムを排出する際、便は白色または灰白色になります。通常、検査当日から翌日にかけて白い便が数回出れば、バリウムはほぼ排出されたと考えられます。便の色が徐々に通常の色に戻っていくのが正常な経過です。
2~3日経っても白い便が出ない、または排便自体がない場合は注意が必要です。腹痛、腹部膨満感、吐き気などの症状が現れた場合は、速やかに医療機関に連絡しましょう。
バリウム検査の副作用と注意点
バリウム検査は比較的安全な検査ですが、いくつかの副作用や合併症のリスクがあります。事前に理解しておくことで、適切な対応が可能になります。
便秘と腸閉塞のリスク
最も一般的な副作用は便秘です。下剤を服用しても排便がない、または腹痛や腹部膨満感が強い場合は、バリウムが腸内で固まっている可能性があります。
稀に、バリウムが腸に詰まって腸閉塞(イレウス)を起こすことがあります。特に高齢者や便秘傾向のある方、腸の手術歴がある方はリスクが高まります。激しい腹痛、嘔吐、排便・排ガスの停止などの症状が現れたら、直ちに医療機関を受診してください。
アレルギー反応と誤嚥のリスク
バリウムや発泡剤に対するアレルギー反応は稀ですが、発疹、かゆみ、呼吸困難などの症状が現れることがあります。過去にアレルギー歴がある方は、必ず事前に申告しましょう。
高齢者や嚥下機能が低下している方では、バリウムの誤嚥(気管に入ってしまうこと)のリスクがあります。誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があるため、嚥下に不安がある場合は医師に相談し、胃カメラ検査への変更を検討します。
検査を受けられない方
妊娠中または妊娠の可能性がある方は、放射線被曝のリスクがあるため検査を受けられません。また、腸閉塞の既往がある方、重度の便秘症の方、腸の手術歴がある方は慎重な判断が必要です。
心臓病や高血圧で体位変換が困難な方、検査台での保持が難しい方も、事前に医師に相談する必要があります。これらの場合、胃カメラ検査や他の代替検査が推奨されることがあります。
バリウム検査と胃カメラ検査の違いと選び方
胃がん検診には、バリウム検査と胃カメラ検査の2つの方法があります。それぞれにメリットとデメリットがあり、自分の状況に応じて選択することが重要です。
バリウム検査のメリットとデメリット
バリウム検査のメリットは、比較的短時間で終了し、身体的負担が少ないことです。また、胃全体の形状を把握しやすく、胃の出口付近(幽門部)の観察に優れています。費用も胃カメラより安価な場合が多いです。
一方、デメリットとしては、小さな病変の発見精度が胃カメラに劣る点、組織検査(生検)ができない点、バリウムの排出に伴う負担がある点が挙げられます。
胃カメラ検査のメリットとデメリット
胃カメラは、直接胃の内部を観察できるため、小さな病変やわずかな色調変化も発見しやすいのが最大のメリットです。また、異常が見つかった場合、その場で組織を採取して病理検査を行えます。
デメリットは、喉の違和感や嘔吐反射による苦痛、検査時間が長い(15~30分程度)、費用がやや高いことです。ただし、鎮静剤を使用すれば、ほとんど苦痛を感じずに検査を受けることができます。
どちらを選ぶべきか
40歳以上で初めて胃がん検診を受ける方、胃の症状がない方は、まずバリウム検査から始めるのが一般的です。異常が指摘された場合は、精密検査として胃カメラを受けます。
一方、胃の症状がある方、ピロリ菌感染歴がある方、胃がんの家族歴がある方、より精密な検査を希望する方は、最初から胃カメラを選択することが推奨されます。
まとめ
バリウム検査は、バリウムを飲んでX線撮影を行うことで、胃の状態を観察する検査です。前日21時までに夕食を済ませ、当日は絶食・絶飲で臨みます。検査では発泡剤とバリウムを飲み、さまざまな体位で撮影を行います。
検査後は必ず下剤を服用し、1.5~2リットルの水分を摂取してバリウムの排出を促します。
白い便が出ない場合や腹痛がある場合は、速やかに医療機関に連絡しましょう。便秘や腸閉塞などの副作用のリスクがあるため、適切なアフターケアが重要です。
胃カメラと比較すると、検査時間が短く身体的負担が少ない反面、小さな病変の発見精度はやや劣ります。自分の状況や希望に応じて、適切な検査方法を選択し、定期的な胃がん検診を受けることが大切です。










