腹部エコー検査とは?見つかる病気と検査の流れを徹底解説

腹部エコー検査とは?基本的な知識をわかりやすく解説

腹部エコー検査は、正式には「腹部超音波検査」と呼ばれ、超音波を使って腹部の臓器を観察する画像検査です。肝臓、胆のう、膵臓、腎臓、脾臓などの臓器の形や大きさ、内部構造、血流の状態をリアルタイムで確認できます。

放射線を使用しないため被曝の心配がなく、痛みもないため、安全性の高い検査として人間ドックや健康診断で広く実施されています。

エコー検査は、妊婦健診でも使用される安全な検査方法です。検査技師や医師がプローブ(探触子)と呼ばれる装置を腹部に当て、超音波を送信します。

超音波は臓器にぶつかって反射し、その反射波をコンピューターが画像化します。検査中に画面を見ながらリアルタイムで臓器の動きや状態を観察できるのが大きな特徴です。検査時間は通常10~20分程度で完了します。

腹部エコー検査で観察できる臓器と見つかる病気

腹部エコー検査では、腹部に位置するさまざまな臓器を観察し、多くの疾患を早期に発見することができます。各臓器ごとに発見できる主な病気を見ていきましょう。

肝臓:脂肪肝、肝腫瘍、肝硬変

肝臓は腹部エコー検査で最も詳しく観察される臓器の一つです。脂肪肝は、肝臓に脂肪が蓄積した状態で、エコー検査で肝臓全体が白く明るく映るのが特徴です。放置すると肝硬変や肝がんに進行するリスクがあります。

肝腫瘍(良性の肝血管腫や肝のう胞、悪性の肝細胞がんなど)も、エコー検査で発見されることが多い疾患です。腫瘍の大きさや性状、血流の状態を評価し、必要に応じてCTやMRIなどの精密検査へつなげます。

肝硬変は、長期にわたる肝障害により肝臓が硬く変化した状態です。エコー検査では、肝臓の表面の凹凸、肝臓の縮小、脾臓の腫大などの所見から診断の手がかりを得ることができます。

また、肝臓内の血管(門脈)の太さや血流を評価することで、肝硬変の進行度を推測できます。

胆のうと胆管:胆石症、胆のうポリープ、胆のう炎

胆のうは、肝臓で作られた胆汁を一時的に貯蔵する袋状の臓器です。胆石はエコー検査で非常に発見しやすく、白い塊として明瞭に映ります。体位を変えることで胆石が動く様子も観察できます。

無症状の胆石も多いですが、腹痛や吐き気などの症状がある場合は治療が必要です。胆のうポリープは、胆のう内にできる突起物で、大きさが10mm以上の場合は悪性の可能性があるため、定期的な観察や手術が検討されます。

胆のう炎は、胆石や細菌感染により胆のう壁が炎症を起こした状態です。エコー検査で胆のう壁の肥厚や周囲の液体貯留を確認できます。

胆管拡張(胆管が広がっている状態)は、胆管結石や膵頭部がんなどによる胆汁の流れの障害を示唆する重要な所見です。

膵臓:膵炎、膵のう胞、膵臓がん

膵臓は胃の後ろにある細長い臓器で、消化酵素やインスリンを分泌します。腸内ガスの影響を受けやすく、エコー検査では観察が難しい場合もありますが、多くの異常を検出できます。

急性膵炎では膵臓が腫大し、慢性膵炎では萎縮や石灰化が見られます。膵のう胞(膵臓内にできる液体の溜まり)は、良性のものが多いですが、一部は悪性化するリスクがあるため経過観察が必要です。

膵臓がんは、早期発見が難しいがんの一つですが、エコー検査で膵臓の腫大や主膵管の拡張などの異常所見が見つかることがあります。異常が疑われた場合は、CTやMRIなどの精密検査が追加されます。

膵臓がんのリスク要因がある方(糖尿病の発症・悪化、高齢、喫煙、慢性膵炎など)は、定期的なエコー検査が推奨されます。

腎臓:腎結石、腎のう胞、水腎症

腎臓は左右に1つずつある豆のような形の臓器で、血液をろ過して尿を作ります。腎結石は、腎臓内にできるカルシウムなどの結晶で、エコー検査で白い影として映ります。

痛みを伴わない小さな結石も発見されることがあります。腎のう胞は、腎臓内にできる液体の入った袋で、加齢とともに増加します。ほとんどが良性で経過観察となりますが、複雑性のう胞は悪性の可能性があるため注意が必要です。

水腎症は、尿の流れが妨げられて腎臓に尿が溜まり、腎臓が拡張した状態です。結石や腫瘍、前立腺肥大などが原因となります。

早期に発見し原因を取り除かないと、腎機能が低下する可能性があります。腎臓の大きさの左右差や、皮質(外側の部分)の厚さの変化も、慢性腎臓病などの診断の手がかりとなります。

脾臓とその他の臓器

脾臓は左上腹部にある臓器で、古くなった赤血球を処理し、免疫機能を担っています。脾臓の腫大は、肝硬変、血液疾患、感染症などのサインとなることがあります。

また、腹部大動脈瘤(大動脈が膨らんだ状態)もエコー検査で発見できます。直径が50mm以上になると破裂のリスクが高まるため、定期的な観察が必要です。

腹部エコー検査の前日と当日の準備

腹部エコー検査を正確に行うためには、適切な前処置が必要です。特に絶食の指示を守ることが重要です。

絶食の必要性と理由

腹部エコー検査では、検査前8時間以上の絶食が必要です。食事をすると、胆のうが収縮して胆汁を放出するため、胆のう内の胆石やポリープが観察しにくくなります。

また、食後は腸内ガスが増加し、超音波の透過性が低下するため、膵臓や後腹膜の臓器が見えにくくなります。空腹状態で検査を受けることで、より正確な診断が可能になります。

前日と当日の過ごし方

前日の夕食は、通常通り摂取して問題ありません。ただし、脂っこい料理や大量の食事は避け、21時頃までに済ませることが望ましいです。前日の入浴や睡眠は通常通りで構いません。

検査当日の朝は、絶食が基本です。水やお茶も原則として摂取できません。ただし、医療機関によっては、検査の3時間前までは少量の水の摂取を許可する場合もあります。

服薬と服装の注意点

常用薬については、事前に医師に確認し、指示に従います。糖尿病の薬やインスリンは、絶食のため服用しないことが多いですが、必ず医師の指示を仰ぎましょう。

服装は、上下が分かれた服が望ましいです。腹部を出しやすい服装を選びましょう。締め付けの強い下着やベルトは外します。検査時には、ゼリーを腹部に塗るため、汚れても良い服装が安心です。

腹部エコー検査の流れと所要時間

腹部エコー検査の実際の流れを理解しておくことで、当日の不安を軽減できます。検査は短時間で、痛みもありません。

検査室での準備

検査室に入ったら、検査台に仰向けに横になります。上着をたくし上げるか脱いで、腹部を露出します。検査技師または医師が、超音波をよく通すためのゼリーを腹部に塗ります。

ゼリーは透明で無害ですが、冷たく感じることがあります。最近は温めたゼリーを使用する施設も増えています。

検査中の流れ

検査時間は通常10~20分程度です。検査技師がプローブを腹部に当て、さまざまな角度から臓器を観察します。プローブを強く押し当てることがありますが、これは臓器をより明瞭に映すための操作です。

痛みはほとんどありませんが、違和感がある場合は遠慮なく伝えましょう。検査中、「大きく息を吸って止めてください」「息を吐いてください」などの指示があります。呼吸により臓器の位置が変わるため、より良い画像を得るための指示です。

体位を変えることもあります。左側を下にしたり、座位になったりすることで、観察しにくい部位を見やすくします。

検査中は、モニター画面を見せてもらえることもあります。気になる所見があれば、その場で質問することができます。

検査後の注意事項

検査終了後は、腹部のゼリーを拭き取り、着衣を整えます。検査後の制限は特になく、すぐに食事を摂ることができます。検査結果は、当日または後日、医師から説明があります。

異常所見が見つかった場合は、追加の精密検査(CTやMRI、血液検査など)が必要になることがあります。医師の指示に従い、必要な検査を受けましょう。

腹部エコー検査のメリットとデメリット

腹部エコー検査には、多くのメリットがありますが、いくつかの限界もあります。それぞれを理解しておくことが重要です。

メリット

最大のメリットは、放射線被曝がなく、痛みもないため、繰り返し検査を受けられることです。妊婦や子どもでも安全に受けられます。検査時間が短く、体への負担が少ないのも利点です。

リアルタイムで観察できるため、臓器の動きや血流も評価できます。検査費用も比較的安価で、多くの医療機関で実施可能です。

デメリットと限界

腸内ガスがあると、超音波が通りにくくなり、観察が困難になることがあります。特に膵臓は、腸内ガスの影響を受けやすい臓器です。肥満の方も、皮下脂肪が厚いと超音波が減衰し、画像の質が低下します。

また、エコー検査で見つかる病変は、CTやMRIなどの精密検査で詳しく調べる必要があることが多いです。エコー検査はスクリーニング(ふるい分け)検査として優れていますが、確定診断には他の検査が必要な場合があります。

まとめ

腹部エコー検査は、超音波を使って肝臓、胆のう、膵臓、腎臓、脾臓などの腹部臓器を観察する安全な画像検査です。脂肪肝、胆石、膵のう胞、腎結石など、さまざまな疾患を早期に発見できます。

検査前8時間以上の絶食が必要で、当日朝は食事も水分も摂取できません。検査時間は10~20分程度で、痛みもなく、検査後すぐに食事が可能です。

放射線被曝がなく、繰り返し検査を受けられるため、定期的な健康チェックに最適です。腸内ガスや肥満の影響で観察が難しい場合もありますが、スクリーニング検査として非常に有用です。

人間ドックや健康診断で異常を指摘された場合は、必要に応じてCTやMRIなどの精密検査を受け、早期治療につなげましょう。定期的な腹部エコー検査により、腹部臓器の健康を守ることができます。

ABOUTこの記事をかいた人

20代のとき父親が糖尿病の診断を受け、日々の生活習慣からこんなにも深刻な状態になってしまうのかという経験を経て、人間ドックや健康診断を猛勉強。 数々の書籍などからわかりやすく、手軽に病気の予防に活用してほしいとの思いで「からだマガジン」を運営しています。