PET-CT検査は、がん細胞の特性を利用して全身のがんを検出する画像診断法です。
CT検査やMRI検査が形の異常を見つけるのに対し、PET検査は細胞の活動性(代謝)を画像化できるのが特徴です。人間ドックのオプションとしても人気があり、がんの早期発見に役立っています。
本記事では、PET-CT検査のしくみ、発見できるがん、費用、保険適用、検査の限界について詳しく解説します。
目次
PET-CT検査とは
PET(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影)検査は、放射性物質を含む薬剤を体内に注入し、その分布を画像化する核医学検査です。PET-CT検査では、PET検査とCT検査を同時に行い、両方の情報を融合させた画像を得ることができます。
PET検査で得られる代謝情報と、CT検査で得られる形態情報を組み合わせることで、病変の位置を正確に特定でき、診断精度が向上します。
がんの検出だけでなく、がんの進行度(ステージング)の評価や、治療効果の判定にも広く使用されています。
FDG-PETのしくみ
がん検診で最も一般的に使用されるのがFDG-PETです。FDG(フルオロデオキシグルコース)は、ブドウ糖に似た構造を持つ放射性薬剤です。
がん細胞は正常細胞に比べてブドウ糖を多く取り込む性質があります。FDGを注入すると、がん細胞に多く集積し、そこから出る放射線を検出することで、がんの存在と位置がわかります。
このように、FDG-PETはがん細胞の「ブドウ糖をたくさん消費する」という代謝の特徴を利用した検査です。正常組織とがん組織の代謝の違いを画像化することで、形態的な変化が現れる前にがんを発見できる可能性があります。
PET-CT検査の流れ
PET-CT検査は、核医学検査室で行われます。検査全体で約2〜3時間かかります。
まず、検査4〜6時間前から絶食が必要です。血糖値が高いとFDGの集積に影響するため、糖尿病の方は事前に相談が必要です。
検査当日は、まず血糖値を測定します。問題がなければ、FDGを静脈注射します。注射後、約1時間は安静にしてFDGが全身に分布するのを待ちます。その後、PET-CT装置で約30分間の撮影を行います。検査後は、放射性薬剤が体外に排泄されるまで水分を多めに摂ることが推奨されます。
PET-CT検査で発見できるがん
PET-CT検査は、多くの種類のがんの検出に有効です。
肺がん、大腸がん、乳がん、食道がん、悪性リンパ腫、頭頸部がん、子宮がん、卵巣がん、膵臓がんなどで高い検出率を示します。
特に悪性リンパ腫では、診断から治療効果判定まで広くPET-CT検査が活用されています。また、転移巣の検索にも優れており、がんのステージングに重要な役割を果たしています。
PET-CT検査が得意ながん
FDG-PET検査は、ブドウ糖代謝が活発ながんの検出に優れています。
悪性リンパ腫、肺がん(特に非小細胞肺がん)、大腸がん、食道がん、頭頸部がん、悪性黒色腫などは、FDGの集積が高く、検出率が良好です。
これらのがんでは、原発巣だけでなく、リンパ節転移や遠隔転移の検索にもPET-CT検査が有用です。
PET-CT検査が苦手ながん
一方、すべてのがんがPET-CT検査で検出できるわけではありません。
早期の胃がん、前立腺がん、腎臓がん、肝細胞がん、尿路上皮がん(膀胱がんなど)は、FDGの集積が低いか、正常組織に紛れやすいため、検出が難しいことがあります。
胃がんは内視鏡検査、前立腺がんはPSA検査、肝臓がんはCT・MRI検査など、それぞれ適した検査方法があります。PET-CT検査だけに頼らず、他の検査と組み合わせることが重要です。
がん検診としてのPET-CT検査
人間ドックのオプションとして、がんスクリーニング目的でPET-CT検査を受けることができます。
全身を一度にスキャンできるため、予期しない部位のがんが発見されることがあります。実際に、人間ドックのPET検査でがんが発見される確率は約1〜2%程度とされています。
ただし、がん検診としてのPET-CT検査には限界もあります。早期がんの中にはFDGが集積しにくいものがあり、すべてのがんを発見できるわけではありません。また、炎症などでもFDGが集積するため、偽陽性(がんではないのに疑われる)が生じることもあります。
費用と保険適用
PET-CT検査の費用と保険適用について説明します。
がん検診(スクリーニング)目的の場合は保険適用外となり、全額自己負担です。費用は医療機関によって異なりますが、一般的に8〜15万円程度です。人間ドックのオプションとして設定されていることが多いです。
一方、すでにがんと診断されている方の病期診断、治療効果判定、再発検索などは保険適用となります。この場合、3割負担で約3万円程度となります。ただし、保険適用には条件があり、他の検査で病期診断や転移検索が困難な場合に限られます。
被曝と安全性
PET-CT検査では、FDGによる内部被曝とCT撮影による外部被曝があります。
PET検査による被曝量は約2〜5mSv、CT検査による被曝量は撮影範囲によりますが約5〜10mSv程度です。合計で約10〜15mSv程度の被曝となります。
この程度の被曝量では、健康への影響は極めて低いとされています。ただし、妊娠中の方や妊娠の可能性がある方は検査を受けられません。授乳中の方は、検査後24時間程度は授乳を控える必要があります。
検査を受ける際の注意点
PET-CT検査を受ける際は、いくつかの注意点があります。
検査前4〜6時間は絶食が必要です。水やお茶は飲んでも構いませんが、糖分を含む飲み物は避けてください。
糖尿病の方は、血糖値が高いとFDGの集積が悪くなり、正確な検査ができないことがあります。インスリンを使用している方は、事前に医師と相談してください。
検査前日からの激しい運動も避けてください。筋肉にFDGが集積し、判読が難しくなることがあります。
PET-CT検査の限界と他検査との組み合わせ
PET-CT検査は優れた検査ですが、万能ではありません。
小さながん(1cm以下)や、ゆっくり増殖するタイプのがんは検出が難しいことがあります。また、炎症性疾患や感染症でもFDGが集積するため、がんと紛らわしい所見が出ることがあります。
効果的ながん検診のためには、PET-CT検査だけでなく、内視鏡検査、超音波検査、腫瘍マーカー検査など、他の検査と組み合わせることが重要です。特に胃がんや大腸がんは内視鏡検査、乳がんはマンモグラフィや乳腺エコーが推奨されています。
まとめ
PET-CT検査は、がん細胞の代謝活性を利用して全身のがんを検出する画像診断法です。
FDG-PETは多くの種類のがんの検出に有効ですが、胃がんや前立腺がんなど、検出が難しいがんもあります。がん検診として受ける場合は保険適用外となり、費用は8〜15万円程度です。
PET-CT検査は優れた検査ですが、すべてのがんを発見できるわけではありません。他の検査と組み合わせることで、より効果的ながん検診が可能になります。人間ドックのオプションとしてPET-CT検査を検討している方は、メリットと限界を理解したうえで受けることをおすすめします。










