心電図検査は、心臓の電気的な活動を記録し、不整脈や心筋梗塞、狭心症などの心疾患を発見する重要な検査です。
健康診断や人間ドックで必ず実施される基本的な検査ですが、その結果の見方や異常所見の意味を正しく理解している人は少ないかもしれません。本記事では、心電図検査の種類、検査で分かること、異常波形の意味、そして検査結果への対応方法まで詳しく解説します。
目次
心電図検査とは?心臓の電気活動を記録する検査
心電図検査は、心臓が収縮・拡張する際に発生する微弱な電気信号を体表面から記録する検査です。
心臓は電気信号によって規則正しく動いており、この電気の流れをグラフ化することで、心臓の状態を詳しく調べることができます。
検査は痛みを伴わず、短時間で終了します。胸部、手首、足首に電極を装着し、安静にしているだけで心臓の状態を確認できます。
心電図は、P波、QRS波、T波という特徴的な波形で構成され、それぞれが心房の収縮、心室の収縮、心室の回復を表しています。
心電図検査で分かること
心電図検査では、さまざまな心疾患や異常を発見できます。不整脈(心房細動、期外収縮、房室ブロックなど)、心筋梗塞、狭心症、心筋症、心肥大などの診断に役立ちます。
また、電解質異常や薬剤の影響による心臓への影響も確認できます。
心電図は、心臓の異常を早期に発見するだけでなく、治療効果の判定や経過観察にも使用されます。
特に、胸痛や動悸、息切れなどの症状がある場合は、心電図検査が重要な診断の手がかりとなります。
心電図検査の種類と特徴
安静時心電図検査
安静時心電図は、ベッドや診察台に横になった安静状態で記録する最も基本的な心電図検査です。
健康診断や人間ドックで実施されるのは、通常この安静時心電図です。検査時間は5分程度と短く、痛みもありません。
胸部に6個、両手首と両足首に各1個、合計10個の電極を装着して記録します。
安静時の心臓のリズム、心拍数、波形の形状などを詳しく確認でき、多くの心疾患の診断に有効です。ただし、運動時や日常生活中にのみ現れる異常は検出できない場合があります。
負荷心電図検査(運動負荷試験)
負荷心電図検査は、運動によって心臓に負荷をかけた状態で心電図を記録する検査です。
トレッドミル(ベルトコンベア式のランニングマシン)やエルゴメーター(自転車こぎ)を使用して、段階的に運動強度を上げながら心電図の変化を観察します。
この検査は、安静時には現れない狭心症や不整脈を発見するのに特に有効です。
運動中や運動直後の心電図の変化、血圧の変動、症状の出現などを総合的に評価します。虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)の診断や運動能力の評価に使用されます。
ホルター心電図検査(24時間心電図)
ホルター心電図は、小型の心電図記録装置を身につけて、24時間(場合によっては48時間以上)連続して日常生活中の心電図を記録する検査です。
胸部に電極を貼り付け、携帯型の記録装置を腰やポケットに装着します。
この検査により、時々しか現れない不整脈や、特定の時間帯や動作に伴って出現する異常を発見できます。
動悸の原因究明、失神の原因検索、抗不整脈薬の効果判定などに使用されます。検査中は入浴ができませんが、通常の日常生活を送ることができます。
心電図の異常波形とその意味
ST変化とは
ST変化は、心電図のST部分(QRS波とT波の間)が基線から上昇または下降する異常で、心筋虚血(心臓への血流不足)を示す重要なサインです。
ST上昇は急性心筋梗塞、ST低下は狭心症や心筋虚血を示唆することがあります。
ただし、ST変化がすべて病的なものとは限りません。
早期再分極という正常なバリエーションや、過呼吸、電解質異常、薬剤の影響などでもST変化が見られることがあります。医師が他の検査結果や症状と合わせて総合的に判断します。
不整脈の種類
不整脈には多くの種類があり、その重症度もさまざまです。期外収縮は、正常な心拍のリズムより早いタイミングで心臓が収縮する状態で、多くの人に見られる比較的軽度の不整脈です。
心房細動は、心房が不規則に細かく震える状態で、脳梗塞のリスクを高めるため治療が必要です。
房室ブロックは、心房から心室への電気信号の伝達が遅れたり途切れたりする状態です。
軽度のものは経過観察で済みますが、完全房室ブロックなど重度の場合はペースメーカーの植え込みが必要になることもあります。心室頻拍や心室細動は、生命に危険が及ぶ重篤な不整脈です。
その他の異常波形
心肥大の所見として、QRS波の振幅が増大することがあります。左室肥大は高血圧や大動脈弁狭窄症、右室肥大は肺高血圧症や肺疾患で見られます。
異常Q波は、過去の心筋梗塞を示唆する所見です。
T波の変化も重要な所見です。T波の平低化や陰性化は、心筋虚血、電解質異常、心筋症などで見られます。
また、QT延長症候群は、致死的不整脈のリスクがある状態で、先天性のものと薬剤性のものがあります。
心電図検査の受け方と注意点
検査前の準備
安静時心電図検査には特別な準備は必要ありません。食事制限もなく、通常通りの生活ができます。
ただし、検査当日は上半身の着脱がしやすい服装を選ぶと便利です。ワンピースよりも上下分かれた服装が推奨されます。
電極を装着しやすくするため、胸や手首、足首に保湿クリームやオイルを塗るのは避けてください。
また、服用中の薬がある場合は、医師に事前に伝えることが重要です。特に心臓の薬や向精神薬は心電図に影響を与えることがあります。
検査中の注意事項
安静時心電図検査中は、体の力を抜いてリラックスし、動かないようにすることが重要です。
体を動かしたり、筋肉に力が入ったりすると、筋電図(筋肉の電気活動)が混入して正確な記録ができなくなります。
呼吸は普段通りに続けてください。息を止める必要はありません。
寒さで体が震える場合は遠慮せず申し出てください。緊張していると筋肉が硬くなるため、深呼吸をしてリラックスするよう心がけましょう。
検査結果の見方と異常があった場合の対応
検査結果の判定区分
心電図検査の結果は、通常「異常なし」「軽度異常(経過観察)」「要精密検査」などに分類されます。
「異常なし」は特に問題がない状態です。「軽度異常」や「所見あり」は、軽度の不整脈や波形の変化が見られるものの、現時点では治療の必要がない状態を指します。
「要精密検査」や「要医療」と判定された場合は、速やかに循環器内科を受診する必要があります。
これは、重大な心疾患の可能性があるか、さらに詳しい検査が必要な状態を意味します。放置すると危険な場合もあるため、必ず医療機関を受診してください。
異常があった場合の精密検査
心電図検査で異常が指摘された場合、追加の検査が行われることがあります。
心臓超音波検査(心エコー)では、心臓の構造や動き、弁の機能を詳しく調べます。負荷心電図やホルター心電図で、より詳細な心臓の状態を確認することもあります。
冠動脈CT検査や心臓カテーテル検査は、冠動脈の狭窄や閉塞を調べる検査です。
血液検査では、心筋マーカー(トロポニンやCKなど)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を測定し、心筋障害や心不全の有無を確認します。
まとめ:心電図検査で心臓の健康を守る
心電図検査は、心臓の電気的活動を記録することで、さまざまな心疾患を早期に発見できる重要な検査です。
安静時心電図、負荷心電図、ホルター心電図など、目的に応じて適切な検査方法が選択されます。
検査は痛みもなく短時間で終わり、特別な準備も必要ありません。
異常所見には、ST変化、不整脈、心肥大などがあり、その重症度はさまざまです。検査結果で異常が指摘された場合は、放置せず速やかに循環器内科を受診することが大切です。
定期的な心電図検査を受けることで、心疾患の早期発見・早期治療が可能になります。
特に、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がある方、喫煙者、家族に心疾患の方がいる場合は、定期的な検査がより重要です。健康な心臓を維持するために、年に一度の心電図検査をお勧めします。










