視力検査は、健康診断や人間ドックで必ず実施される基本的な検査であり、目の健康状態を評価する重要な指標です。
視力低下は、近視、遠視、乱視などの屈折異常だけでなく、白内障や緑内障などの重大な目の病気のサインである可能性もあります。本記事では、視力検査の方法、矯正視力と裸眼視力の違い、視力の正常値、視力低下の原因、そして眼科受診の目安について詳しく解説します。
目次
視力検査とは?目の見る力を測る検査
視力検査は、物体の形や細部を識別する目の能力を測定する検査です。
一般的には、ランドルト環(Cの字のような形の記号)を使用した視力表で検査が行われます。検査者は、検査用の椅子に座り、片目ずつ異なる大きさのランドルト環の切れ目の方向を答えます。
視力は、目の屈折状態、水晶体の調節機能、網膜の感度、視神経の機能などが総合的に反映されます。
そのため、視力検査は単に「見える・見えない」を確認するだけでなく、目の健康状態全体を評価する入り口となる重要な検査です。
視力の表し方
視力は、通常「1.0」や「0.5」といった数値で表されます。視力1.0は、5メートル離れた位置から直径7.5mm、幅1.5mmの切れ目を識別できる能力を意味します。
視力0.5は、その2倍の大きさ(直径15mm)の切れ目を識別できる能力です。数値が大きいほど、より細かいものを識別できる優れた視力を持っていることになります。
視力は小数視力で表記されるのが一般的ですが、国によっては分数視力(20/20など)で表記される場合もあります。
日本の視力1.0は、アメリカの20/20にほぼ相当します。また、視力検査では通常、0.1から2.0までの範囲で測定されますが、それ以上の視力を持つ人もいます。
裸眼視力と矯正視力の違い
裸眼視力とは
裸眼視力は、眼鏡やコンタクトレンズなどの矯正器具を使用せずに測定した視力です。
生まれつきの目の状態や、経年変化による屈折異常(近視、遠視、乱視)がそのまま反映されます。裸眼視力の低下は、日常生活に支障をきたす可能性があるため、適切な矯正が必要です。
裸眼視力は、近視、遠視、乱視の進行状況を把握するための重要な指標です。
また、自動車運転免許の取得・更新時には、裸眼視力または矯正視力が一定の基準を満たす必要があります。普通自動車免許では、両眼で0.7以上、かつ片眼でそれぞれ0.3以上が必要です。
矯正視力とは
矯正視力は、眼鏡やコンタクトレンズを装用して測定した視力です。
矯正視力が十分に出ない場合、単なる屈折異常ではなく、目の病気が隠れている可能性があります。たとえば、白内障、緑内障、黄斑変性症、網膜剥離などの疾患が考えられます。
健康診断や人間ドックでは、普段使用している眼鏡やコンタクトレンズを装着した状態での矯正視力も測定されます。
矯正視力が0.7未満の場合は、眼鏡やコンタクトレンズの度数が合っていないか、目の病気がある可能性があるため、眼科受診が推奨されます。
視力の正常値と判定基準
年齢別の視力の目安
視力は年齢とともに変化します。
新生児の視力は0.01~0.02程度ですが、成長とともに発達し、3歳で0.6~1.0、6歳頃には1.0以上に達するのが一般的です。成人では、視力1.0以上が正常とされています。
40歳を過ぎると、水晶体の調節力が低下する老視(老眼)が始まり、近くのものが見えにくくなります。
老視は誰にでも起こる自然な加齢現象です。また、加齢とともに白内障や緑内障のリスクも高まるため、中高年以降は定期的な眼科検診が重要です。
健康診断での判定基準
健康診断では、視力の測定結果に基づいて判定が行われます。
一般的には、矯正視力が両眼で1.0以上、または片眼でそれぞれ0.7以上であれば「異常なし」と判定されます。矯正視力が0.7未満の場合は「要精密検査」または「要治療」と判定され、眼科受診が推奨されます。
裸眼視力が低い場合でも、矯正視力が十分に出ていれば、健康上の大きな問題はありません。
ただし、適切な眼鏡やコンタクトレンズを使用することで、日常生活の質を大きく向上させることができます。定期的に眼科で視力検査を受け、必要に応じて矯正器具の度数を調整することが大切です。
視力低下の原因
屈折異常(近視・遠視・乱視)
視力低下の最も一般的な原因は、屈折異常です。
近視は、遠くのものがぼやけて見える状態で、眼軸が長すぎるか、角膜や水晶体の屈折力が強すぎることが原因です。日本人には非常に多く、特に学童期から思春期にかけて進行しやすい傾向があります。
遠視は、近くのものがぼやけて見える状態で、眼軸が短すぎるか、屈折力が弱すぎることが原因です。
乱視は、角膜や水晶体の形状が歪んでいるため、ピントが一点に合わず、物がぼやけたり二重に見えたりする状態です。これらの屈折異常は、眼鏡やコンタクトレンズで矯正できます。
目の病気による視力低下
矯正視力が十分に出ない場合、目の病気が原因である可能性があります。
白内障は、水晶体が濁って視力が低下する病気で、加齢が主な原因です。初期には眼鏡で矯正できますが、進行すると手術が必要になります。
緑内障は、視神経が障害されて視野が欠けていく病気で、進行すると失明に至る可能性があるため早期発見が重要です。
黄斑変性症は、網膜の中心部である黄斑が障害され、中心部の視力が低下する病気です。網膜剥離、糖尿病網膜症、ぶどう膜炎なども視力低下の原因となります。
生活習慣と視力低下
現代社会では、スマートフォンやパソコンの長時間使用が視力低下の一因となっています。
近くを見続けることで目の調節機能が緊張し、一時的な近視状態(調節緊張)が起こります。これが続くと、本当の近視に進行する可能性があります。
また、ブルーライトの影響、睡眠不足、栄養不足、ストレスなども目の健康に悪影響を与えます。
適度な休憩を取る、遠くを見る時間を作る、十分な睡眠を取るなど、目を労わる生活習慣を心がけることが大切です。
視力を守るための対策
日常生活での注意点
視力を守るためには、日常生活での工夫が重要です。
パソコンやスマートフォンを使用する際は、1時間ごとに10~15分の休憩を取り、遠くを見て目を休めることが推奨されます。画面との距離は40cm以上保ち、適切な明るさに調整します。
読書や細かい作業をする際は、十分な明るさを確保し、適切な姿勢を保ちます。
暗い場所での読書は目に負担をかけるため避けましょう。また、屋外での活動時間を増やすことが、特に子どもの近視予防に効果的とされています。
栄養と目の健康
目の健康を維持するためには、適切な栄養摂取も重要です。
ビタミンA(にんじん、ほうれん草など)は、網膜の機能維持に必要です。ルテインやゼアキサンチン(ほうれん草、ケールなど)は、黄斑部の健康を守ります。
ビタミンC(柑橘類、イチゴなど)やビタミンE(ナッツ類、植物油など)は、抗酸化作用により目の老化を防ぎます。
DHAやEPA(青魚)は、網膜の健康維持に役立ちます。バランスの良い食事を心がけ、これらの栄養素を十分に摂取しましょう。
眼科受診の目安
すぐに眼科を受診すべき症状
以下の症状がある場合は、すぐに眼科を受診する必要があります。
急激な視力低下、視野の一部が欠ける、飛蚊症(黒い点や糸くずのようなものが見える)の急増、光が当たっていないのに光が見える(光視症)などは、網膜剥離などの緊急性の高い病気の可能性があります。
また、目の痛み、充血、目やにの増加、眼圧の急上昇による頭痛なども、早急な受診が必要です。
これらの症状を放置すると、視力回復が困難になったり、失明に至ったりする可能性があります。少しでも異常を感じたら、すぐに眼科を受診してください。
定期的な眼科検診の重要性
症状がなくても、定期的な眼科検診を受けることが重要です。
40歳を過ぎたら年に1回、緑内障や糖尿病などのリスクがある場合はより頻繁に検診を受けることが推奨されます。健康診断で視力低下や異常が指摘された場合は、必ず眼科を受診してください。
眼科検診では、視力検査だけでなく、眼圧検査、眼底検査、視野検査なども行われ、緑内障や網膜疾患などの早期発見が可能です。
早期発見・早期治療により、視力を守ることができます。定期的な検診を習慣にし、目の健康を維持しましょう。
まとめ:視力検査で目の健康を守る
視力検査は、目の見る力を評価し、屈折異常や目の病気を早期に発見するための重要な検査です。
裸眼視力と矯正視力の両方を測定することで、目の状態を総合的に把握できます。矯正視力が十分に出ない場合は、目の病気が隠れている可能性があるため、眼科受診が必要です。
視力低下の原因には、近視・遠視・乱視などの屈折異常、白内障・緑内障などの目の病気、生活習慣の影響などがあります。
日常生活での目の労わり、適切な栄養摂取、定期的な眼科検診により、視力を守ることができます。
健康診断で視力低下や異常が指摘された場合は、放置せず速やかに眼科を受診しましょう。
また、急激な視力低下や視野欠損などの症状がある場合は、緊急性が高い可能性があるため、すぐに眼科を受診してください。目は一度失った機能を回復することが難しいため、予防と早期発見が何よりも重要です。










