頭部MRA検査とは?脳血管撮影で見つかる脳動脈瘤・脳血管狭窄を解説

頭部MRA検査は、MRI装置を使って脳の血管を撮影する検査です。

造影剤を使わずに脳動脈の状態を詳細に観察でき、脳動脈瘤や脳血管狭窄の発見に優れています。脳ドックでは頭部MRIと組み合わせて実施されることが一般的です。

本記事では、頭部MRA検査の特徴、発見できる病気、検査の重要性について詳しく解説します。

頭部MRA検査とは

MRA(Magnetic Resonance Angiography:磁気共鳴血管撮影)検査は、MRI装置を使って血管を描出する検査です。頭部MRAでは、脳を栄養する動脈(内頸動脈、椎骨動脈、脳底動脈、中大脳動脈など)を詳細に観察できます。

最大の特徴は、造影剤を使用せずに血管を撮影できることです。血流の信号を利用して画像を作成するため、侵襲性が低く安全に検査を受けられます。

頭部MRAは、脳ドックの必須項目として、頭部MRIと組み合わせて実施されます。MRIが脳の実質を、MRAが脳の血管を評価するという役割分担があります。

MRA検査のしくみ

MRA検査では、流れている血液の信号を利用して血管を描出します。

最も一般的な方法はTOF法(Time of Flight法)で、流入する血液の信号が高くなる性質を利用して血管像を作成します。周囲の静止した組織は信号が抑制されるため、血管だけが浮かび上がります。

撮影した画像をコンピュータで処理し、三次元的な血管像(3D-MRA)として表示することができます。これにより、血管の走行や動脈瘤の形状を立体的に把握できます。

頭部MRA検査の流れ

頭部MRA検査は、通常、頭部MRI検査と同時に行われます。検査時間は、MRIと合わせて30〜40分程度です。

検査の準備や流れはMRI検査と同じです。金属類をすべて外し、検査着に着替えてMRI装置の寝台に横になります。頭部を固定し、装置の中に入って撮影を行います。

造影剤は使用しないため、アレルギーの心配がなく、腎機能に問題がある方でも安心して受けられます。検査中は「カンカン」という音がしますが、ヘッドホンで音を軽減します。

頭部MRA検査で発見できる病気

頭部MRA検査では、脳血管のさまざまな異常を発見することができます。

未破裂脳動脈瘤、脳血管狭窄、脳動脈解離、もやもや病、脳動静脈奇形などが主な対象疾患です。

脳ドックでは、特に未破裂脳動脈瘤と脳血管狭窄の発見が重要な目的となっています。

未破裂脳動脈瘤

脳動脈瘤は、脳の動脈にできるコブ状のふくらみです。破裂するとくも膜下出血を引き起こし、命に関わる重篤な状態となります。

未破裂動脈瘤は症状がないため、脳ドックで偶然発見されることがほとんどです。日本人の約2〜6%に未破裂動脈瘤があるとされ、脳ドック受診者の2〜3%で発見されます。

MRA検査では、3mm程度の小さな動脈瘤も検出可能です。動脈瘤の好発部位は、内頸動脈、前交通動脈、中大脳動脈、脳底動脈などです。

未破裂動脈瘤が見つかったら

未破裂動脈瘤が発見された場合、すべての動脈瘤が治療を必要とするわけではありません。破裂リスクを評価し、経過観察か治療かを判断します。

破裂リスクに影響する因子として、動脈瘤の大きさ(5mm以上は要注意)、形状(不整形は破裂リスクが高い)、部位、増大傾向の有無などがあります。また、くも膜下出血の家族歴がある方や、喫煙者はリスクが高いとされています。

治療が必要な場合は、開頭クリッピング術やコイル塞栓術などが行われます。小さな動脈瘤は定期的なMRA検査で経過観察となることが多いです。

脳血管狭窄

脳血管狭窄は、脳を栄養する動脈が動脈硬化などで狭くなった状態です。進行すると脳梗塞の原因となります。

MRA検査では、血管の狭窄部位や程度を評価できます。狭窄が高度な場合は、血流が低下している可能性があり、脳梗塞のリスクが高まります。

内頸動脈や中大脳動脈、椎骨脳底動脈の狭窄が臨床的に重要です。高度狭窄が見つかった場合は、抗血小板薬による治療や、血管形成術などが検討されます。

もやもや病

もやもや病は、内頸動脈の終末部が進行性に狭窄・閉塞し、代償的に細い血管(もやもや血管)が発達する病気です。

日本人に多い疾患で、若年者に発症することが多いですが、成人でも発見されます。MRAでは、主幹動脈の狭窄・閉塞と、もやもや血管の描出が特徴的です。

脳梗塞や脳出血のリスクがあるため、発見された場合は専門医での精密検査と管理が必要です。

脳動脈解離

脳動脈解離は、動脈の壁が裂けて血液が壁の中に入り込む病気です。若い方でも起こることがあり、激しい頭痛や首の痛みで発症することがあります。

MRA検査では、血管の不整な狭窄や拡張として描出されます。脳梗塞やくも膜下出血の原因となることがあるため、発見された場合は入院して経過観察や治療が行われます。

くも膜下出血の予防

くも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂によって起こることが最も多い疾患です。発症すると約3分の1が死亡し、後遺症が残ることも多い重篤な病気です。

頭部MRA検査で未破裂動脈瘤を発見し、適切に管理することで、くも膜下出血を予防できる可能性があります。

特に、家族にくも膜下出血を発症した方がいる場合は、脳ドックでのMRA検査が強く推奨されます。遺伝的な要因で動脈瘤ができやすい体質があるためです。

頭部MRA検査を受けるべき人

頭部MRA検査は、以下のような方に特に推奨されます。

40歳以上で脳卒中の危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙)がある方、家族にくも膜下出血や脳動脈瘤の既往がある方、頭痛が続く方などです。

また、多発性嚢胞腎など、脳動脈瘤を合併しやすい疾患がある方も、定期的なMRA検査が推奨されています。

40〜50歳を過ぎたら、一度は脳ドック(頭部MRI+MRA)を受けて、脳と脳血管の状態をチェックすることをおすすめします。

MRA検査の限界と補足検査

MRA検査は非侵襲的で優れた検査ですが、いくつかの限界があります。

血流が遅い部位や細い血管は描出されにくく、狭窄の程度を過大評価することがあります。より詳細な評価が必要な場合は、造影MRAやCT血管撮影(CTA)、カテーテル血管造影が追加されることがあります。

未破裂動脈瘤の経過観察では、半年〜1年ごとにMRA検査を行い、大きさや形状の変化を確認します。

まとめ

頭部MRA検査は、造影剤を使わずに脳血管を詳細に観察できる検査です。

未破裂脳動脈瘤や脳血管狭窄の発見に優れており、脳ドックの重要な検査項目となっています。特に未破裂動脈瘤を発見することで、くも膜下出血を予防できる可能性があります。

脳卒中の危険因子がある方、家族にくも膜下出血の既往がある方は、定期的な脳ドック(頭部MRI+MRA)を受けることをおすすめします。脳の健康を守るために、早期発見と予防に取り組みましょう。