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痛風とは?基本的な知識をわかりやすく解説
痛風は、血液中の尿酸値が高い状態が続くことで、尿酸の結晶が関節に沈着し、激しい炎症を引き起こす疾患です。「風が吹いただけでも痛い」と言われるほど強い痛みが特徴で、その名前の由来にもなっています。
日本では患者数が増加傾向にあり、現在約120万人が痛風に悩まされていると推定されています。痛風予備群である高尿酸血症の方を含めると、約1000万人に達すると言われています。
痛風は男性に圧倒的に多く、患者の約95%を占めています。これは女性ホルモンに尿酸の排泄を促進する作用があるためです。発症年齢のピークは30~50歳代で、近年では若年化の傾向も見られます。
痛風は単に関節の痛みだけでなく、放置すると腎臓病や心血管疾患などの合併症を引き起こすリスクがあります。早期の診断と適切な治療が重要です。
痛風の症状:痛風発作と前兆サイン
痛風の最も特徴的な症状は「痛風発作」と呼ばれる急性関節炎です。多くの場合、足の親指の付け根が赤く腫れ上がり、激痛を伴います。痛みは夜間から早朝にかけて突然始まることが多く、数時間で痛みのピークに達します。
患部は赤く腫れ、熱を持ち、触れることもできないほどの激痛が特徴です。歩行が困難になり、日常生活に大きな支障をきたします。
痛風発作が起こりやすい部位
痛風発作の約70%は足の親指の付け根(第一中足趾関節)に発症します。その他、足首、足の甲、膝、手首、肘などにも起こることがあります。
体温が低い部位ほど尿酸が結晶化しやすいため、心臓から遠く、体温が低くなりやすい足の関節に発症しやすいのが特徴です。
痛風発作の経過と前兆
痛風発作は通常、治療をしなくても1~2週間で自然に治まります。しかし、これは治癒したわけではなく、高尿酸血症が続いていれば再び発作を繰り返します。
発作を繰り返すうちに、発作の間隔が短くなり、複数の関節に広がることがあります。また、発作の前兆として、関節に違和感やムズムズ感、ピリピリ感を感じることがあります。
慢性痛風と痛風結節
高尿酸血症を放置し、痛風発作を繰り返すと、やがて慢性痛風に移行します。関節の変形や機能障害が進み、日常生活に支障をきたすようになります。
また、尿酸の結晶が皮下に沈着して「痛風結節」と呼ばれるコブ状の腫れができることがあります。これは耳たぶ、肘、膝、足の指などにできやすく、痛風の慢性化を示すサインです。
尿酸値とは?高尿酸血症の基準と原因
尿酸は、細胞の核を構成するプリン体という物質が代謝されてできる老廃物です。通常、尿酸は体内で一定量が生成され、同量が尿や便として排泄されることでバランスが保たれています。
血清尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されます。この値は、尿酸が血液中に溶けていられる限界(飽和濃度)であり、これを超えると結晶化しやすくなります。
高尿酸血症の3つのタイプ
高尿酸血症は、原因によって3つのタイプに分類されます。尿酸産生過剰型は、体内で尿酸が過剰に作られるタイプで、全体の約10~20%を占めます。プリン体の多い食事や、細胞の新陳代謝が活発な場合などに見られます。
尿酸排泄低下型は、腎臓からの尿酸排泄が低下するタイプで、最も多く約60~70%を占めます。遺伝的要因や腎機能の低下、一部の薬剤などが原因となります。
混合型は、産生過剰と排泄低下の両方が関与するタイプで、約10~20%を占めます。多くの痛風患者では、遺伝的素因に生活習慣要因が加わって発症すると考えられています。
どのタイプであるかを判定することで、より適切な治療方針を立てることができます。
プリン体と痛風:食事との関係を理解する
プリン体は、細胞の核に含まれる核酸を構成する物質で、すべての生物の細胞に存在します。体内に取り込まれたプリン体は肝臓で代謝され、最終的に尿酸となります。
食事由来の尿酸は全体の約20%で、残りの80%は体内で作られます。そのため、食事制限だけでは尿酸値を大幅に下げることは難しいですが、食事の改善は痛風予防の重要な柱の一つです。
プリン体の多い食品と控えるべき食材
プリン体が特に多い食品(100gあたり200mg以上)には、レバー類、白子、一部の魚の干物(マイワシ、カツオ)、エビ、ビール酵母などがあります。これらの食品は摂取を控えることが推奨されます。
中程度のプリン体を含む食品(100gあたり100~200mg)には、肉類(豚肉、牛肉)、魚類(カツオ、マグロ)、大豆製品などがあります。適量を守って摂取することが大切です。
ビールと痛風の関係
ビールはプリン体を含むだけでなく、アルコール自体が尿酸の産生を促進し、排泄を抑制する作用があります。そのため、ビールは痛風患者にとって最も避けるべき飲料とされています。
プリン体オフのビールでも、アルコールの影響は変わらないため、飲酒量自体を制限することが重要です。日本酒や焼酎、ウイスキーなども過剰摂取は避けるべきです。
痛風を予防するための食事療法と生活習慣
痛風の予防と治療には、総合的な食事療法と生活習慣の改善が不可欠です。単にプリン体を制限するだけでなく、バランスの取れた食生活を心がけることが重要です。
水分摂取:1日2リットル以上を目標に
十分な水分摂取は、尿酸の排泄を促進する最も効果的な方法の一つです。1日2リットル以上の水分を摂取し、尿量を増やすことで尿酸の排泄が促進されます。
水やお茶を中心に、こまめに水分補給を行いましょう。糖分の多い清涼飲料水は肥満の原因となり、尿酸値を上げる可能性があるため避けるべきです。
アルカリ性食品の積極的摂取
尿をアルカリ性に保つことで、尿酸が溶けやすくなり、排泄が促進されます。野菜(ほうれん草、キャベツ、にんじん)、海藻類、果物(バナナ、メロン)などのアルカリ性食品を積極的に摂取しましょう。
一方、肉類や魚類は酸性食品であり、過剰摂取は尿を酸性に傾けます。バランスの良い食事が大切です。
肥満の解消と適正体重の維持
肥満は尿酸値を上げる重要な要因です。特に内臓脂肪の蓄積は、インスリン抵抗性を引き起こし、腎臓からの尿酸排泄を低下させます。
BMI25未満を目標に、適正体重を維持することが推奨されます。ただし、急激な減量は逆に尿酸値を上げることがあるため、月に1~2kg程度の緩やかな減量が理想的です。
適度な運動:有酸素運動を中心に
適度な有酸素運動は、肥満解消や代謝改善に効果的です。ウォーキング、水泳、サイクリングなどを週に3~5回、1回30分程度行いましょう。
ただし、激しい運動は筋肉の分解によりプリン体が増加し、尿酸値を上げる可能性があります。また、発汗による脱水も尿酸値を上昇させるため、運動中の水分補給が重要です。
ストレス管理と十分な睡眠
ストレスは尿酸値を上昇させる要因の一つです。リラックスできる時間を作り、趣味や休養を大切にしましょう。
また、十分な睡眠は体の代謝を正常に保つために重要です。睡眠不足は肥満やストレスの原因となり、尿酸値にも悪影響を及ぼします。
痛風の治療:薬物療法と痛風発作への対処
痛風の治療は、痛風発作の治療と、尿酸値を下げる治療の2つに分けられます。痛風発作が起きた際は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やコルヒチン、ステロイド薬などで炎症と痛みを抑えます。
発作時は患部を冷やし、安静にすることが重要です。マッサージや温めることは逆効果となるため避けましょう。
尿酸値を下げる薬物療法には、尿酸生成抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタットなど)と尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロン、プロベネシドなど)があります。
尿酸値を6.0mg/dL以下に維持することで、痛風発作の再発を予防し、痛風結節を縮小させることができます。薬物療法は長期的に継続する必要があり、自己判断での中断は避けるべきです。
まとめ
痛風は尿酸値が7.0mg/dLを超える高尿酸血症が原因で発症する疾患であり、激しい関節の痛みが特徴です。足の親指の付け根に突然起こる激痛は、痛風の典型的な症状です。
プリン体の多い食品やアルコールの過剰摂取を控え、水分を十分に摂取し、適正体重を維持することが予防の基本となります。
痛風発作が起きた場合は速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。尿酸降下薬による治療を継続することで、発作の再発を予防し、合併症のリスクを低減できます。
正しい知識を持ち、食事療法と生活習慣の改善を実践することで、痛風と上手に付き合い、健康的な生活を送ることができます。