前立腺エコー検査とは?経直腸エコー・経腹エコーの方法と発見できる病気

前立腺エコー検査は、超音波を使って前立腺の状態を観察する検査です。

加齢とともに増加する前立腺肥大症や、男性に多いがんである前立腺がんの診断に重要な役割を果たします。

本記事では、前立腺エコー検査の種類や方法、発見できる病気、PSA検査との関係について詳しく解説します。

前立腺とは

前立腺は、男性にのみ存在する臓器で、膀胱の真下、尿道を取り囲むように位置しています。大きさは栗の実程度(約20g)で、精液の一部となる前立腺液を分泌しています。

前立腺は加齢とともに肥大する傾向があり、50歳以上の男性の約半数に前立腺肥大が見られるとされています。前立腺が大きくなると尿道を圧迫し、排尿障害を引き起こすことがあります。

また、前立腺はがんが発生しやすい臓器でもあり、日本人男性のがん罹患数では第1位となっています。

前立腺エコー検査の種類

前立腺エコー検査には、経直腸エコー(経直腸超音波検査)と経腹エコー(経腹超音波検査)の2種類があります。

経直腸エコーは、細い棒状のプローブを肛門から直腸内に挿入して検査します。前立腺に近い位置から観察できるため、より詳細な画像が得られます。

経腹エコーは、下腹部にプローブを当てて検査します。膀胱を通して前立腺を観察するため、膀胱に尿が溜まっている状態で行います。侵襲性が低く、スクリーニング検査として広く用いられています。

経直腸エコー検査の方法

経直腸エコー検査は、泌尿器科で行われる精密検査です。より詳細に前立腺を観察する必要がある場合に実施されます。

検査は側臥位(横向き)で行います。プローブにはカバーとジェルが付けられ、肛門からゆっくりと挿入されます。挿入時に軽い違和感や圧迫感を感じることがありますが、強い痛みはほとんどありません。

検査時間は10〜15分程度です。前立腺の大きさ、形状、内部構造を詳細に観察し、異常な領域がないかを確認します。前立腺生検(組織採取)を行う際のガイドとしても使用されます。

経腹エコー検査の方法

経腹エコー検査は、下腹部にプローブを当てて前立腺を観察する検査です。検査前に膀胱を尿で満たしておく必要があるため、検査1〜2時間前から排尿を我慢します。

仰向けの状態で、下腹部にジェルを塗り、プローブを当てて検査します。痛みはなく、検査時間は10分程度です。

膀胱越しに前立腺を観察するため、経直腸エコーに比べると画像の鮮明さは劣りますが、前立腺の大きさの測定や残尿測定には十分な精度があります。人間ドックやスクリーニング検査では、この経腹エコーが多く用いられています。

前立腺エコー検査でわかること

前立腺エコー検査では、前立腺の大きさ(容積)、形状、内部の構造、周囲の臓器との関係などを観察します。

前立腺肥大の程度、前立腺がんを疑う所見の有無、残尿量の測定などが主な評価項目です。

前立腺の正常な容積は約20mL程度ですが、肥大症では30〜50mL以上になることもあります。内部に不均一な領域や低エコー領域が見られる場合は、前立腺がんの可能性を考慮して精密検査を検討します。

前立腺肥大症

前立腺肥大症は、前立腺が大きくなり尿道を圧迫することで排尿障害を引き起こす疾患です。50歳以上の男性に多く、加齢とともに頻度が増加します。

エコー検査では、前立腺の容積を測定し、肥大の程度を評価します。また、残尿測定を行うことで、排尿障害の程度を客観的に把握できます。

症状としては、頻尿、夜間頻尿、尿の勢いの低下、残尿感などがあります。治療は薬物療法が中心ですが、症状が重い場合は手術が検討されます。

前立腺がん

前立腺がんは、前立腺に発生する悪性腫瘍です。日本人男性のがん罹患数第1位であり、50歳以降に急増します。

経直腸エコーでは、前立腺がんは低エコー領域(周囲より暗く見える領域)として描出されることが多いですが、正常と区別がつきにくいこともあります。エコー検査だけで確定診断することは難しく、PSA検査や前立腺生検と組み合わせて診断します。

前立腺がんは早期に発見されれば治療成績が良好であり、定期的なPSA検査と必要に応じたエコー検査が重要です。

残尿測定

残尿測定は、排尿後に膀胱内に残った尿の量を測定する検査です。経腹エコーで簡便に測定することができます。

正常では残尿はほとんどありませんが、前立腺肥大症による排尿障害があると残尿が増加します。残尿量が50mL以上ある場合は、排尿障害が疑われます。

残尿が多い状態が続くと、膀胱炎や腎機能障害のリスクが高まるため、適切な治療が必要です。

PSA検査との関係

PSA(前立腺特異抗原)検査は、血液検査で前立腺がんのスクリーニングを行う検査です。PSA値が高い場合に、エコー検査や前立腺生検が追加されます。

PSAの基準値は一般的に4.0ng/mL以下とされていますが、年齢によって基準値は異なります。PSA値が高くても、前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇するため、必ずしもがんとは限りません。

PSA検査とエコー検査を組み合わせることで、前立腺がんの早期発見率を高めることができます。

検査を受ける際の注意点

前立腺エコー検査を受ける際は、いくつかの注意点があります。

経腹エコーの場合は、検査前に膀胱を尿で満たしておく必要があります。検査1〜2時間前から排尿を我慢してください。

経直腸エコーの場合は、検査前に排便を済ませておくと検査がスムーズです。検査当日は消化の良い食事を心がけてください。

前立腺に炎症がある場合や、前立腺生検後などはPSA値が一時的に上昇することがあるため、検査の時期について医師と相談することをおすすめします。

まとめ

前立腺エコー検査は、経直腸エコーと経腹エコーの2種類があり、前立腺の状態を詳しく観察できる検査です。

前立腺肥大症の程度の評価、前立腺がんの精密検査、残尿測定など、さまざまな目的で実施されます。PSA検査と組み合わせることで、前立腺がんの早期発見に役立ちます。

50歳以上の男性は前立腺の病気にかかりやすくなるため、定期的なPSA検査を受け、必要に応じてエコー検査を受けることをおすすめします。排尿に関する症状がある方は、早めに泌尿器科を受診してください。

ABOUTこの記事をかいた人

20代のとき父親が糖尿病の診断を受け、日々の生活習慣からこんなにも深刻な状態になってしまうのかという経験を経て、人間ドックや健康診断を猛勉強。 数々の書籍などからわかりやすく、手軽に病気の予防に活用してほしいとの思いで「からだマガジン」を運営しています。