ペプシノゲン検査(ABC検診)の数値と判定の見方|PGI・PGII比と萎縮性胃炎・胃がんリスクの早期発見ガイド

「会社の健診オプションでペプシノゲン検査(ABC検診)を受けたけれど、結果の見方がよくわからない」「『ペプシノゲン陽性』『C群判定』と書かれていて胃がんではないかと不安」「胃カメラやバリウムを飲まなくても血液検査だけで本当に胃がんの危険度がわかるのか」とお悩みではありませんか。

採血1本で胃の粘膜の健康状態を評価できる「血清ペプシノゲン検査」、およびピロリ菌抗体検査と組み合わせた「ABC検診(胃がんリスク層別化検査)」は、全国の自治体検診や人間ドックで急速に導入が進んでいる画期的な検査法です。

ペプシノゲン検査は「今現在胃がんがあるかどうか」を直接見つける検査ではなく、「胃の粘膜がどれくらい薄く痩せ細って老化しているか(萎縮性胃炎の進行度)」を数値化し、将来胃がんが発生しやすい土壌ができあがっていないかを科学的に測定するスクリーニング検査です。

胃がんは何もない正常な胃粘膜から突然発生するのではなく、「ピロリ菌感染 → 慢性胃炎 → 萎縮性胃炎 → 腸上皮化生 → 胃がん」という数十年のステップを踏んで発症するため、萎縮の度合いを事前に知ることは最大の予防策となります。

この記事では、ペプシノゲンI・IIの医学的メカニズム、陽性・陰性の判定基準、ピロリ菌抗体と組み合わせた「A・B・C・D群」の詳しい意味、そして判定に応じた正しい胃カメラ受診頻度まで徹底解説します。

ペプシノゲン検査の仕組み|胃粘膜の萎縮を映す血液マーカー

ペプシノゲンとは、胃液に含まれる強力なタンパク質消化酵素「ペプシン」の不活性な前駆体物質です。

主に胃底腺(胃の体部)から分泌される「ペプシノゲンI(PG I)」と、幽門腺や十二指腸からも分泌される「ペプシノゲンII(PG II)」の2種類が存在し、その約1%が血液中に漏れ出て全身を循環しています。

胃の粘膜が正常で元気な時は、PG Iが大量に作られます。

しかし、ピロリ菌感染などによって胃の粘膜が長年炎症を起こし、胃底腺が萎縮して破壊されていくと、「血中のPG I濃度が急激に低下し、さらにPG IとPG IIの比率(PG I/II比)が著しく小さくなる」という明確な相関関係が存在します。

ペプシノゲン判定の基準値と「陽性」の意味

日本胃がん予知・評価・検診研究会の基準では、以下の2つの条件を「両方同時に満たした場合」にペプシノゲン陽性と判定されます。

測定項目 基準値の境界線 ペプシノゲン「陽性」の判定基準 身体の胃粘膜で起きている病態
血清ペプシノゲンI(PG I) 70.0 ng/mL 超(正常) 「PG I が 70.0 ng/mL 以下」 かつ 「PG I / PG II 比 が 3.0 以下」 胃底腺の広範な萎縮(中等度〜高度の萎縮性胃炎)。胃がん発生の高リスク土壌
PG I / PG II 比(比率) 3.0 超(正常)

ABC検診(胃がんリスク層別化検査)の「4段階判定」

ペプシノゲン検査(胃粘膜の萎縮度)と、ピロリ菌抗体検査(ピロリ菌感染の有無)を掛け合わせることで、将来の胃がん発症リスクを「A群・B群・C群・D群」の4群に分類します。

分類群 ピロリ菌抗体 ペプシノゲン 胃粘膜の状態と胃がんリスク 推奨される精密検査と受診頻度
A群(健康群) 陰性(−) 陰性(−) ピロリ菌未感染。健康な胃粘膜。胃がんリスクは極めて低い(年間1万人中1人以下) 定期的な健診を継続(5年に1回程度の胃カメラで十分)
B群(感染群) 陽性(+) 陰性(−) ピロリ菌に現在感染しているが、胃粘膜の萎縮はまだ初期段階 直ちに胃カメラを受診。早期のピロリ菌除菌治療が強く推奨(2〜3年に1回胃カメラ)
C群(高リスク群) 陽性(+) 陽性(+) ピロリ菌感染が長年続き、胃粘膜全体に重度の萎縮性胃炎が広がっている 胃がん発生の超高危険群。直ちに胃カメラを受診し、毎年(年1回)の定期内視鏡が必須
D群(最高危険群) 陰性(−) 陽性(+) 胃の萎縮が末期まで進行し、ピロリ菌すら生息できなくなって自然死滅した状態 胃がん発症リスクが最も高い。直ちに胃カメラを精密受診し、年1回以上の厳重管理

ペプシノゲン検査を受ける際の超重要注意事項

正確な判定結果を得るために、以下の点に注意が必要です。

注意点1:胃薬(プロトンポンプ阻害薬:オメプラゾール・タケキャブ等)を服用中の方は、胃酸抑制薬の影響でペプシノゲン値が偽高値を示すため、正しい判定ができません。

注意点2:腎機能が著しく低下している方(クレアチニン高値・透析患者)は、ペプシノゲンが体外へ排泄されにくく数値が高く出ます。

注意点3:胃切除の手術を受けたことがある方は対象外となります。

まとめ

ペプシノゲン検査(ABC検診)は、痛みを伴う胃カメラを受ける前に、ご自身の胃粘膜がどれくらいがんになりやすい状態かを客観的に知ることができる素晴らしい検査です。

B群・C群・D群と判定された方は、「胃がんの宣告」ではなく「胃がんを未然に防ぐチャンスを掴んだ」と前向きに捉え、必ず消化器内科で胃カメラ検査を受けましょう。

適切なピロリ菌除菌と定期的な内視鏡スクリーニングを行うことで、胃がんによる死亡リスクをほぼゼロに抑え込むことができます。