前立腺がんは日本人男性のがん罹患数で第1位(2023年)となっており、今や男性にとって最も身近ながんのひとつです。一方で、早期に発見・治療すれば5年生存率がほぼ100%に近い「治りやすいがん」でもあります。本記事では、前立腺がんの初期症状・PSA検査の重要性・治療法の選択まで詳しく解説します。
目次
前立腺がんとはどんながんか
前立腺は精液の一部(前立腺液)を産生する、膀胱の下に位置するクルミ大の臓器です。前立腺がんは前立腺の外腺(辺縁帯)から発生することが多く、進行が比較的ゆっくりしているタイプが多いのが特徴です。
罹患リスクは加齢とともに上昇し、50代から増加し始め、70〜80代でピークを迎えます。欧米型の食事(動物性脂肪の多い食事)やがんの家族歴も危険因子とされています。
前立腺がんの初期症状
前立腺がんの厄介な点は、早期にはほぼ無症状であることです。前立腺がんは前立腺の外側から発生することが多いため、初期段階では尿道を圧迫せず、自覚症状が出にくいのです。
尿の出が悪い・頻尿・残尿感といった排尿症状は、むしろ良性の前立腺肥大症に特徴的な症状であり、前立腺がんの初期症状とは言えないことも多いです。血尿・骨の痛み(転移による)などが現れた場合は、すでにある程度進行している可能性があるため、PSA検査による定期スクリーニングが重要です。
PSA検査とは
PSA(前立腺特異抗原)は前立腺細胞が産生するタンパク質で、血液検査で測定できます。前立腺がんがあるとPSA値が上昇しやすく、スクリーニング検査として広く用いられています。
一般的なPSAの基準値は4.0ng/mL以下ですが、年齢によっても正常範囲が異なります。PSAが高い場合はMRI検査・前立腺針生検(組織を採取してがんかどうかを確認する検査)が必要になります。なお、PSAは前立腺肥大症・前立腺炎・射精後などでも上昇することがあり、PSAが高い=がんとは限りません。
日本泌尿器科学会は50歳以上の男性に年1回のPSA検診を推奨しており、前立腺がんの家族歴がある場合は45歳から検討することが望ましいとされています。
前立腺がんのステージ
前立腺がんのステージはT1〜T4(局所進行度)・N(リンパ節転移)・M(遠隔転移)で評価されます。ステージ1〜2(限局性前立腺がん)は前立腺の中にとどまっており、根治を目指した治療が可能です。ステージ3〜4は精嚢・膀胱・骨盤リンパ節・骨への浸潤・転移が見られ、ホルモン療法・放射線治療・化学療法を組み合わせた治療が行われます。
前立腺がんの主な治療法
手術(根治的前立腺全摘除術)
前立腺をリンパ節とともに摘出する手術です。現在はダヴィンチ手術(ロボット支援腹腔鏡下手術)が主流で、従来の開腹手術に比べ出血量が少なく、回復が早く、性機能・排尿機能への影響が小さいことが利点です。術後の主な合併症として尿失禁(多くは数か月で改善)とEDがあります。
放射線治療
外部照射(IMRT・SBRT)と前立腺内に放射性種子を埋め込む小線源治療(ブラキセラピー)があります。手術と同等の根治効果が得られ、体への負担が少ないため高齢者や手術リスクの高い患者に適しています。直腸・膀胱への放射線障害が起こる可能性があるため、治療後の経過観察が重要です。
ホルモン療法(内分泌療法)
前立腺がんはテストステロン(男性ホルモン)によって増殖するため、テストステロンを抑制する治療が有効です。LH-RHアゴニスト注射薬(リュープロレリン・ゴセレリン)や抗男性ホルモン薬が使われます。進行がんや転移がんの標準治療ですが、骨密度低下・筋力低下・ED・ほてり・体重増加などの副作用があります。
監視療法(active surveillance)
PSA値が低く・グリソンスコア(がんの悪性度)が低い限局性がんに対し、治療を行わずに定期的なPSA測定・生検で経過を観察する方法です。過剰治療を避けながら、がんが進行した時点で治療を開始します。生命予後に影響しない「おとなしいがん」に対しては積極的な治療をしないという考え方が広まっています。
前立腺がんの生存率
前立腺がんは生存率が高いがんです。局所がん(ステージ1〜2)では5年生存率がほぼ100%、リンパ節転移のあるステージ3で約90%、遠隔転移のあるステージ4でも約50〜60%とされています。ただし骨転移を伴う場合は痛みの管理が重要な課題となります。
まとめ
前立腺がんは早期発見すれば非常に治りやすいがんです。50歳を過ぎたら年に1回のPSA検査を習慣化し、早期発見・早期治療につなげることが何より大切です。PSA値が高いと言われた場合もすぐにがんとは限らないため、泌尿器科で精密検査を受けて正確な診断を得ることが重要です。治療法は複数あり、それぞれメリット・デメリットが異なるため、医師とよく相談して自分に合った方法を選択しましょう。










