重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは?原因・症状・感染経路をわかりやすく解説

「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」は、マダニによって媒介される新興感染症であり、日本国内でも死亡例が報告されている重大な疾患です。

発症すると重篤な症状を引き起こし、特に高齢者では致死率が高いことが特徴です。SFTSは2011年に中国で初めて確認され、その後、日本・韓国でも患者が報告されるようになりました。

本記事では、「SFTSとは何か?」をはじめとして、原因ウイルス、感染経路、代表的な症状、注意すべきポイントや予防方法について、わかりやすく丁寧に解説します。

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?

SFTSとは、「SFTSウイルス(SFTSV)」によって引き起こされるウイルス感染症です。2011年に新たに発見された比較的新しい感染症で、日本では2013年から報告が始まり、年間60〜100人前後の発症が確認されています。

主にマダニに咬まれることで感染するため、野外活動や農作業の多い地域でのリスクが高くなります。

また、国内では西日本(九州・中国・四国地方)での報告が多い一方、関東や中部地方でも稀に症例が報告されており、全国的に注意が必要です。

SFTSの原因:SFTSウイルスと感染経路

原因となるウイルス

SFTSはブニヤウイルス科 フレボウイルス属に属する「SFTSウイルス(SFTSV)」によって発症します。このウイルスは自然界において、マダニが保有宿主(ウイルスを持ったまま生活する動物)として存在しており、ヒトは偶発的に感染する「終末宿主」となります。

主な感染経路

  • マダニによる咬傷:最も一般的な感染経路です。山林や草むらで活動している際に、ウイルスを持つマダニに咬まれることで感染します。
  • 感染動物との接触:特に感染した猫や犬の唾液・血液との接触でも感染する可能性があります。
  • 人から人への感染:まれですが、患者の体液や血液に直接触れることで医療現場などで感染する事例も報告されています。

近年では、ペットを介した二次感染の例も増えており、動物と密接に暮らす方にもリスクがあると考えられます。

SFTSの主な症状と重症化の兆候

感染から6日〜2週間程度の潜伏期間を経て、以下のような症状が現れます。

初期症状

  • 発熱(38℃以上)
  • 嘔気・嘔吐
  • 全身倦怠感
  • 筋肉痛
  • 食欲不振
  • 下痢や腹痛
  • 頭痛

これらは風邪やインフルエンザに似ているため、初期には見逃されがちです。

重症化の兆候と経過

  • 白血球と血小板の減少
  • 肝機能障害(AST・ALTの上昇)
  • 意識障害(昏睡、せん妄など)
  • 出血傾向(鼻血、歯茎出血、血便)
  • 多臓器不全

特に高齢者や基礎疾患を持つ人は重症化しやすく、致死率は10〜30%と非常に高いのが特徴です。死亡は多くが発症から1〜2週間以内に起こるため、早期発見と対応が極めて重要です。

注意すべき点

  • 解熱剤を使用しても症状が改善しない
  • 血小板の減少により内出血が見られる
  • 意識がもうろうとする、反応が遅くなる

これらが現れた場合には、速やかに感染症対応可能な医療機関に連絡しましょう。

SFTSの検査と診断

SFTSが疑われる場合、以下のような検査が行われます。

血液検査

  • 白血球・血小板の著しい減少
  • 肝酵素(AST・ALT)の上昇
  • LDH、CKなどの上昇

PCR検査

ウイルス遺伝子の検出を目的としたRT-PCR検査により確定診断されます。これによりSFTSVの感染が確認されます。

加えて、SFTS患者との接触歴や、マダニに咬まれた記録が診断上重要な手がかりになります。

有効な治療法はあるか?

現在、SFTSに対する特効薬やワクチンは存在しません。そのため、症状に応じた対症療法が中心となります。

  • 輸液管理
  • 血小板・血漿製剤の投与
  • 感染症や出血への対応
  • 呼吸・循環管理
  • 必要に応じてICUでの集中治療

一部の抗ウイルス薬(ファビピラビルなど)について研究は進められていますが、現時点では標準治療として確立されていません。

SFTSを予防するには:身近な対策

SFTSは感染源がマダニであることから、予防が非常に重要です。

野外活動時の注意点

  • 長袖・長ズボン・帽子を着用
  • 首や手首など露出部分をできるだけ減らす
  • 防虫スプレー(ディート・イカリジン成分)を活用する
  • 草むらや藪に不用意に入らない
  • 帰宅後すぐにシャワーを浴び、全身をチェック
  • 衣類は高温で洗濯・乾燥する

ペットからの感染予防

  • ペットのダニ対策を徹底
  • 感染動物の体液に触れない
  • 感染が疑われる場合はすぐに獣医師の診察を受ける

特に猫はSFTSVに感染しやすく、重症化して人に感染させる例もあるため注意が必要です。

SFTSは新しい感染症、正しい知識と予防が命を守る

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、致死率が高く重篤化しやすい感染症です。

しかし、感染経路と予防法を理解しておくことで発症リスクは大幅に低下します。特に山間部や農村地域など、マダニの多いエリアに住んでいる方や、アウトドアを楽しむ方は、十分な注意が必要です。

また、原因となるSFTSウイルスは人から人への感染も報告されているため、医療従事者や動物との接触が多い人も予防意識を高めましょう。

少しでも異変を感じたら、迷わず医療機関を受診することが重要です。

ABOUTこの記事をかいた人

20代のとき父親が糖尿病の診断を受け、日々の生活習慣からこんなにも深刻な状態になってしまうのかという経験を経て、人間ドックや健康診断を猛勉強。 数々の書籍などからわかりやすく、手軽に病気の予防に活用してほしいとの思いで「からだマガジン」を運営しています。