花粉症は植物の花粉をアレルゲン(アレルギーの原因物質)として引き起こされるアレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎です。日本では推定4,000万人以上(約4割の国民)が花粉症を持つとされており、まさに国民病といえます。毎年春のスギ・ヒノキ花粉シーズンに症状がひどくなる方が最も多いですが、ハンノキ・シラカバ・イネ科・ブタクサなど季節を問わず複数の花粉に反応する方も増えています。本記事では、花粉症の症状・飛散時期・薬の選び方・舌下免疫療法・妊娠中の対処法を詳しく解説します。
目次
花粉症の症状
花粉症の主な症状は「鼻の三徴」と「目の症状」に大別されます。
鼻の症状
くしゃみ・水様性の鼻水(サラサラした透明な鼻水)・鼻詰まりが三大症状です。くしゃみは連続して出ることが多く、仕事・学業への集中を大きく妨げます。鼻詰まりは夜間に悪化しやすく、口呼吸・いびき・睡眠の質低下につながります。
目の症状(アレルギー性結膜炎)
目のかゆみ・充血・涙目・まぶたの腫れが典型的な症状です。目をこすることで症状が悪化し、角膜への傷つきを引き起こすこともあります。
その他の症状
のどのかゆみ・耳のかゆみ・皮膚のかゆみ・頭重感・倦怠感・集中力低下なども花粉症に伴って起こることがあります。重症になるとQOL(生活の質)スコアが著しく低下し、仕事・学業・日常生活に大きな支障をきたします。
花粉の飛散時期とピーク
日本で最も患者数が多いスギ花粉は、関東地方では2月上旬〜4月中旬に飛散し、3月上旬前後にピークを迎えます。スギに続いてヒノキ花粉が4月にピークを迎え、合計すると約2〜3ヵ月間が「スギ・ヒノキシーズン」となります。
その後、5〜7月にはイネ科(カモガヤ・オオアワガエリ)が飛散し、8〜10月にはブタクサ・ヨモギが秋の花粉症の原因となります。複数の花粉にアレルギーを持つ方は、ほぼ年間を通じて症状が続くことがあります。
花粉症の診断方法
花粉症の診断には問診・鼻鏡検査に加えて、血液検査(特異的IgE抗体検査)が用いられます。ViewアレルギーやMAST法といった多項目アレルゲン検索で、スギ・ヒノキ・ダニ・カビなど複数のアレルゲンを一度に調べることができます。受診科は耳鼻咽喉科・内科・眼科(目の症状がメインの場合)が対象です。
花粉症の薬物療法
花粉症の治療薬は大きく4種類に分けられます。
抗ヒスタミン薬(内服)
最も広く使われる薬で、くしゃみ・鼻水・目のかゆみに効果があります。第1世代(クロルフェニラミン)は眠気が強く、第2世代(セチリジン・フェキソフェナジン・ビラスチンなど)は眠気が少ない改良型です。市販薬としてはアレジオン・クラリチンEX・アレグラFXなどが代表的で、眠くなりにくいフェキソフェナジン系(アレグラ)やビラスチン系は運転への影響が少ないとされています。
点鼻ステロイド薬
鼻詰まり・鼻水に対して最も効果の高い薬です。全身吸収が少なく、長期使用でも全身性の副作用が少ない安全性の高い薬です。市販薬ではナザール「ポンプ」Sb、病院処方ではナゾネックス・アラミスト等が用いられます。シーズン前から使い始める「初期療法」がより高い効果をもたらします。
抗ロイコトリエン薬
鼻詰まりに特に効果が高い薬で、モンテルカスト(キプレス・シングレア)が代表です。眠気が少なく、喘息を合併している場合にも有用です。
点眼薬(アレルギー用目薬)
目の症状には市販の抗ヒスタミン点眼薬(アレジオン点眼・パタノール等)が有効です。コンタクトレンズを使用している場合は、レンズを外してから点眼してください。
舌下免疫療法(根本的な治療)
舌下免疫療法(SLIT)は、スギ花粉・ダニのアレルゲンを少量から徐々に舌の下に投与することで、免疫の過剰反応を抑える「減感作療法」です。2014年から保険適用となっています。
毎日自宅で服用を続けることが必要で、効果が出るまで3〜6ヵ月・継続期間は3〜5年が必要ですが、根本的な体質改善によって症状を長期的に軽減する可能性があります。副作用として口腔内のかゆみ・腫れ・消化器症状が起こることがありますが、多くは軽度で時間とともに軽快します。花粉シーズン以外の時期に耳鼻咽喉科で開始することが推奨されます。
妊婦・授乳中の花粉症対策
妊娠中・授乳中は薬の選択に注意が必要です。比較的安全とされる薬には点鼻ステロイド(ナザール)・第2世代抗ヒスタミン薬の一部(セチリジン・ロラタジンなど)がありますが、必ず産婦人科・内科・耳鼻科の医師に相談のうえ使用してください。非薬物療法として、マスク・空気清浄機・洗眼・鼻うがい(生理食塩水)も有効な補助対策です。
花粉症を悪化させる食事・生活習慣
アルコール・タバコ・睡眠不足・ストレスはヒスタミン遊離を促進し、花粉症症状を悪化させることがあります。また特定の果物・野菜(リンゴ・桃・メロン・セロリ・ニンジンなど)を食べると口腔内がかゆくなる「口腔アレルギー症候群(OAS)」は、スギ・シラカバ花粉との交差反応で生じます。該当する食物に心当たりがある方はアレルギー専門医への相談を推奨します。
まとめ
花粉症はQOLに直結するアレルギー疾患ですが、適切な薬の選択・花粉回避・舌下免疫療法によって大きく症状をコントロールできます。「毎年薬を飲むだけで我慢している」という方は、根本治療である舌下免疫療法を耳鼻咽喉科で相談してみることをおすすめします。また妊婦の方は自己判断で薬を選ばず、医師に相談のうえ安全な選択肢を選んでください。










